節分
「鬼はー、外ー。福はー、内ー」
高校2年の井野嶽桜が、家の庭で豆まきをしている。
「本当は四方にするのがいいんだけど、そうも言ってられないからな」
桜が豆をまいている姿を、家の中から眺めているのは双子の弟の幌の同級生である宮司だ。
神社の出身ということもあってか、こういうのには少し詳しい。
その宮司の近くでは、幌が鰯を塩焼きにしていた。
「柊なんてないから、代わりにミントにしてみたんだ。爽やかな感じになってると思うよ」
豆まきを終えた桜が家の中に戻り、焼き立ての魚の匂いを胸一杯に吸い込んでいる。
「確か、年の数だけ豆を食べるんだよね」
桜が宮司に確認をする。
「そ。数え年が本当らしいけど、満年齢でも大丈夫」
誕生日も過ぎているから、17粒食べるという計算だ。
桜は、それを一粒ずつ数えていた。