宇宙キャンプは美少女宇宙人と共に
SF第二弾にして癖(なのだ銀髪美少女)を抑えられなくなったのだ(*´꒳`*)
【――西暦二〇八三年。一昔前は『夢物語』と云われていた宇宙旅行は、今ではさほど珍しくもない時代】
中川食品株式会社『宇宙グルメ開発部』に身を置く柳沢史郎は、LEDが照らす宇宙船内から、丸い特殊ガラス窓の外――未確認彗星BBQ(※史郎命名)の地表を眺めていた。
故郷の鳥取を思い出させる白い砂丘。その向こうには、ガス惑星『おとめ座61番星d』の大赤斑と、幾万もの星々が広がっている。
史郎は愛読書『銀河鉄道の夜』を片手に、臀部に感じる椅子の硬さを堪能していた。
「やっぱ人間、地に足つかないとなぁ。プカプカ浮いてばっかだと疲れちまう。……と、そろそろ飯の支度しねーと」
肘掛けを掴み、「よっこいせ」と立ち上がる。ズンとのしかかる自分の体重に、危うくバランスを崩しかけた。
「うおっと。……前言撤回、重力なんてクソだ。人間を地べたに縛り付ける悪魔の鎖め」
恨み節を吐きながら壁際のレバーを目指す。彼女が帰ってくる前に重力装置を解除しておかねば、さらに追加で怒られてしまうだろう。
だが思ったように足が進まない。無重力に慣れた身体には、地球並の重力は荷が重かったらしい。
象のような足取りで歩く史郎。あと二メートルで憎き鎖から解き放たれようとしたその時――
「おーい、シロウ。今帰ったのだー! ……って、ぐわあああ⁉︎」
デッキの扉がプシュンと開いた。同時に、帰ってきた彼女がべシャンと、冷たい床に崩れ落ちた。
鋼糸のような銀の髪が、彼女――アルファの小柄な身体を隠す。モガモガと蛙のようにもがく姿は、宇宙人とは思えないほど滑稽だ。
「し、シロウ、早くこの忌まわしい力場を解除、しろ」
「……これが人間のご先祖様とか草……おっと、すまん。ほらよ」
レバーをガチャンと鳴らすと、史郎の身体が軽くなった。足が床から離れ、プカプカと宙に漂う。
「次やったら、もう食材分けてやらんからな……」
アルファは髪をふわりと浮かせて、ヨロヨロと起き上がった。
完璧なバランスで配置された顔のパーツ。愛らしさと美しさを共存させた少女が、真紅の瞳で史郎を睨みつけた。
白いシャツの袖から覗く小さな手には、青緑の石のような物を溢れそうなほど抱えている。
「だからすまん。けど食材くれねーと、俺も飯作れないぜ?」
「それは困る……ぐぬぬぬ」
「うし、交渉成立。んじゃ外行こうぜ」
「んむ。先にこれ、キャンプに運んどくのだ」
史郎が手を打ち、パンと乾いた音を響かせた。アルファは長い髪をタコの足のようにウネウネ動かし、それで得た推進力で出口に向かう。
(まじで宇宙人。ま、可愛いし別にいいけど)
彼女の背中を見送った史郎は、船内の奥にある宇宙服ロッカーに向かった――。
◇
彗星BBQの洞穴。透明な炭素繊維の膜を張ったキャンプ場兼宇宙シェルターに、焚き火の音がパチパチと響いていた。
史郎とアルファは白い岩に向かい合って腰掛け、メタンを含んだ半透明の氷柱が生み出す青炎を眺めている。
焚き火の周りには、串に刺した青緑の団子石が、香ばしい匂いを昇らせていた。
「もう焼けたか? なあなあ、もう食べていいか?」
アルファの口がダラシなく開き、唇の端からヨダレを垂らしている。
何万年もの時を重ねたアミノ酸と、非生物起源のタンパク質の塊は、地球では味わえない複雑な旨味を携えていた。
「まだ中まで火が通ってねえ。ジュゥゥウからパチパチッて乾いた音になるまで待て」
「わ、分かったのだ」
「おう。それまでこれで喉潤しとけよ」
「んむ。助かる」
史郎が金属の水筒を彼女に渡す。尿を蒸留させ、フィルターを通して摂り出したソレは、宇宙で最もポピュラーな飲料水の一つだ。
嬉しそうに喉を潤す彼女を、史郎は改めて観察した。
(地球の生命の起源が、まさかこの銀河団から飛来した彗星だったなんて……こいつを見たら信じるしかねえけど)
地球から六〇〇〇万光年――ワームホールを三度潜ったこの銀河で出会った、アルファこそが証明。今も広がり続ける宇宙で、これほど人間と酷似した彼女の姿は、同じ有機化学の系譜だと雄弁に語っていた。
団子石が、パチパチと水分が抜けた音へ。ベーコンのような香ばしい匂いが漂い、アルファのヨダレがさらに溢れる。青い炎に揺れるアルファの影が、跳ねるように立ち上がった。
「やっふー! いただきますなのだー!」
「おう、ちゃんと噛んで食えよ」
はふはふと串に齧り付く彼女に、史郎の頬が緩む。一口齧ると、ガリっと金平糖のような食感の奥に、照り焼きベーコンに似た旨味が舌の上にネットリと広がった。
「やば、我ながら最高に美味い」
「んむ! 美味すぎて星間飛行しそうなのだ!」
「宇宙……いや、宇宙人ユーモアってやつか?」
アルファの耳がピクリと動く。まだ教えていなかった言葉に興味を引かれたらしい。
「ユーモア? どれどれ、ちょっと見せろなのだ」
「あ、やべ、ミスった」
彼女の髪がザワリと動く。一房の毛が圧縮され、針金のように光沢を帯びた。
「お邪魔しまーすなのだ」
「うぐっ……」
史郎が身構えるより早く、アルファの鋭利な髪が伸びた。史郎の頭にプスリと刺さり、痛みとも痒みともいえない感覚が史郎を襲う。
さらに、抗えないほどの睡魔も――。
「史郎の知識のデザート、いただきますなのだっ」
◇◆◇
よほど疲れていたのか、史郎は中々目を覚まさない。
アルファはもったいないからと、残りの団子石をペロリと平らげ、岩肌に身体を預けて眠る彼を見つめていた。
「おーいシロウ、そろそろ起きないと酸素がなくなるのだぞ?」
返事はない。コクコクと眠り続ける彼に、アルファはわずかに不安を覚えた。
「もしかして、刺すとこミスったのだ? 脳みそは傷つけてないのだけど」
静寂、沈黙、募る焦燥。
もし史郎が目を覚まさなければ、もう美味しいご飯が食べられない。
彼とは二週間前に出会ったばかりだが、アルファにとっては既に大きな存在になっている。
焚き火がパチリと爆ぜた。火の粉が舞い、史郎の額にポツリと消えた。
「この、匂い……」
アルファの鼻と髪が、ピクンと反応する。目が据わり、空腹を告げる音が鳴る。
「……中まで、火を通さないと……なのだ……」
◇
その彗星は食材に溢れていた。
香ばしい匂いを白い尾に乗せ宇宙に振り撒き、その噂を聞きつけた漂流者が度々訪れ、誰も戻らない謎の天体。
その彗星は『BBQ』と名付けられ、宇宙旅行者の憧れとなった。
――彼女は今日も一人、お腹を空かせる。新たにやって来る人間に、ヨダレを垂らして。
「史郎……お腹空いたのだぁ」
彼の頭蓋骨に語り続ける――。
美味しい後味の作品にできた……のだ?
宇宙人は可愛い、銀髪美少女も可愛い、世界の真理なのだね(迫真)
「なんやこの結末」って思った人も、そうでない人も、というかここまで読んでくれた全人類、応援や感想してくれると嬉しいのだ。むしろしてなのだ٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
それと空想科学で日間、週間、一位を獲得した作品も↓に置いとくのだ。よろしかったら覗いてみーてねっ(*´꒳`*)
https://ncode.syosetu.com/n8440my/




