第一話「幽霊の再来」
こんにちは、豆腐です。
前書きでは、少し世界観の説明をします。
この小説の世界は、平たく言えばエースコンバットみたいな世界です。
特定の名称はないですが、とりあえず『蒼天の狼世界』と呼んでください。
早速ですが、この場を借りて少しこの世界の国家と軍の簡単な説明を。
アストラ連邦
政治体制は連邦共和制。
複数の自治州によって構成される国家だ。
首都はアストラ・プライム。
・特徴
世界最高クラスの航空技術や、強力な空母機動艦隊。
AI戦闘支援システムの先進国でもある。
軍と研究機関の結びつきが非常に強いのも特徴だ。
・軍事
アストラ連邦軍の構成
連邦空軍
連邦海軍
連邦陸軍
・空軍
第六世代戦闘機が主力。
だがあえて第四世代や第五世代を運用している飛行隊もある。
基本は量より質。
エースを中心にした戦術が得意。
・海軍
空母機動艦隊が主力。
艦載機戦力が強い。
世界最大規模の航空母艦を保有している。
(空母フェンリルなど)
・陸軍
空軍や海軍の支援に回ることが多い。
空軍や海軍と比べるとあまり強くないが、対空攻撃が強い。
レギウス帝国
政治体制は絶対君主制。
元首は皇帝
首都はソル・レギウス。
・皇帝
アウレリウス・ソル・レギウスⅨ世
・特徴
強力な軍事国家。
皇帝への絶対的忠誠を国民が誓う。
陸軍・機甲戦力が非常に強い。
古い帝国文化と最先端兵器が混在している。
・軍隊
レギウス帝国軍の構成
帝国空軍
帝国海軍
帝国陸軍
・空軍
大量の航空機で敵を押しつぶす戦術。
質より量。
・海軍
大艦巨砲主義。
戦艦中心の強大な艦隊で敵を粉砕する。
空母はあまり使わない。
・陸軍
レギウス帝国軍で一番強い。
重戦車や歩行戦車などを扱う。
『戦車の神』の存在や、巨大移動要塞が作られているという噂がある。
両国の関係は最悪。
この物語の15年前の戦争で一気に悪くなった。
こんな感じです。
これで理解できたなら幸いですが…
それからもう一つ。
この小説の15年前に起きた戦争についてです。
アストラ=レギウス戦争
当時は両国とも第五世代戦闘機が主力でした。
レギウス帝国が資源地帯「ホライゾン海」を占領したことで戦争が勃発しました。
この戦争の結果は引き分け。
戦死者は約720万人。
戦争は激化し、両国は甚大な損害を受けました。
やがて消耗しきった末に、レギウス帝国が停戦を申し出ました。
この戦争でのエースは、アストラ連邦、当時のゴースト隊隊長。
コールサイン「GHOST」。
彼は、第四世代戦闘機で一度も撃墜されずに敵機を80機撃墜し、アストラ連邦に貢献しました。
しかし、停戦前の最後の作戦。
彼は空戦中に行方不明になります。
それ以来、彼を見たものはいませんでした。
しかし、15年後、彼は再び姿を表します。
回収された彼の予備の機体と共に──
一人のパイロットがいた。
撃墜数80。
被撃墜数0。
15年前の戦争での記録だ。
かつて、ゴースト隊の仲間とともに戦争を終わらせ、
そして空へと消えた伝説の黒い幽霊。
彼の名は──
GHOST。
格納庫の奥に残された、ボロボロの黒い第四世代戦闘機。
マークと機体番号はかすれて消えかけている。
しかし、微かに『GHOST』の文字が見えた。
「…変だなぁ……。」
その機体を見た一人の整備兵、スローン・オルブライトが呟いた。
機体の整備記録がない。
どこにもなかった。
まるで誰かが、意図的に消したように。
「…やっちゃうか。」
スローンは、機体の整備を始めた。
また伝説を飛ばすために。
アストラ連邦とレギウス帝国の最初の戦争から15年。
両国間の緊張は高まっていた。
アストラ連邦空軍第12航空団基地。
太陽に照らされる滑走路。
戦いの気配は、今のところない。
基地に残っている実戦部隊は、4機編成の飛行隊「ゴースト隊」のみ。
骨董品と呼ばれる第四世代戦闘機のみで構成された部隊だ。
1番機、隊長のレオンは、格納庫の壁に寄りかかっていた。
「……」
ゴースト隊の隊長、レオン。
戦争が嫌いだ。
だが、その戦争を終わらせるために戦っている。
スローンの親友でもある。
彼らは最強の部隊ではない。
だが──
いつも生き残る部隊だった。
「………」
その頃、戦闘機を整備していた女性の整備兵、
スローン・オルブライト。
白い長髪と、蒼空のような青い目を持つ女性だ。
「…スローン、また整備してるのか。」
レオンがスローンに話しかける。
「え、うん。」
「相変わらずだなお前は。」
「変な改造するなよ。」
レオンは微笑みながら言った。
「……そういえば、スローン。」
レオンが何かを思い出した。
「何?」
「空を飛びたいんだろ?」
スローンは少し考え、
「…うん。」
「だったら生き残れ。」
「お前ならできる。」
レオンは笑顔でそう話した。
「…わかった。」
スローンも笑顔になった。
───しかし、平和は長くは続かない。
警報。
「敵機接近!レギウス帝国機です!」
管制塔がスピーカー越しに叫ぶ。
「ゴースト隊、スクランブル!」
「発進を許可する!」
「…どうやら敵らしい。」
レオンが空を見上げる。
「…頑張って!」
「ああ。」
ゴースト隊の機体が滑走路から飛び立つ。
「……」
スローンは空を見上げた。
まさかこんな辺境の基地を攻めてくるなんて。
予想外だ。
「………」
スローンは、無言で先ほど格納庫の奥で整備していた戦闘機を見た。
スローンは戦闘機に触れた。
黒い機体。
機体番号は掠れて消えている。
部隊マークも同じだ。
しかし、もうボロボロではない。
スローンの手で、また空を飛べるようになった。
スローンは急いでいたが、最低限の確認だけはした。
ミサイルは数発。
フレアも数回分しかない。
スローンは戦闘機のキャノピーを開けた。
そして予備の対Gスーツを着て戦闘機に飛び乗った。
スローンは昔パイロットを目指していた。
士官学校での成績はトップ。
しかし家庭の事情でパイロットにはなれなかった。
だが、まだ空を諦めた訳じゃない。
スローンの機体は滑走路へ向かう。
地上クルーはいない。
スローンは自分でエンジンを始動させた。
「…なんだ?」
「そこの機体!タキシングは許可していないぞ!」
管制塔がスローンの乗る機体に気づいた。
しかしスローンは言う。
「大丈夫です!」
「昔、パイロット目指してたんで!」
「そういう問題じゃない!」
管制塔の制止を無視して、スローンの機体は飛び立つ。
「…あいつ死んだな。」
管制塔の誰かが呟いた。
高度計の数字がどんどん上がる。
昔目指していた空。
かつては自由に飛べなかった青い空。
今、私はその空を飛んでいる。
スローンは呟いた。
「──最高じゃん。」
高度8000メートル。
レーダーに映るのは10機ほどの敵の編隊。
攻撃機や爆撃機もいる。
「うわ、多っ……」
スローンは苦笑いした。
ゴースト隊は見知らぬ戦闘機が飛び立つのを見ていた。
特にレオンはよく見ていた。
スローンが整備していた機体。
なぜ飛んでいるのか。
レオンの通信。
「…お前、名前は?」
「スローンです。」
「スローン!?」
「なぜここに!」
レオンは怒った。
彼女は戦場を舐めている。
そう感じたからだ。
「あっ…」
「そ、その話はまた後で!」
スローンは通信を切った。
その時、
敵機がスローンに気づいた。
編隊から離脱。
スローンに向かって上昇する。
「…来た。」
BEEP BEEP BEEP
スローンの機体のミサイルアラート。
すると、
「よっと!」
スローンの機体は有り得ない角度で旋回。
コックピットでG警報が鳴り響く中、ミサイルは機体の横を掠めた。
スローンの機体は敵戦闘機の背後に回り込む。
ロックオン。
「今っ!」
ミサイル発射。
ミサイルは白い尾を引いて飛ぶ。
敵機は散開。
回避行動を取るが──
ドカァァァン!
ミサイル直撃。
「よしっ!」
敵機を1機撃墜。
スローンは初めて敵を撃墜した。
最初は嬉しかった。
だが、すぐに胸が重くなる。
人を殺した。
彼の家族は?
彼の未来は?
罪悪感が胸に広がった。
しかし、一つ気になった。
「この機体…」
「何でこんな操縦ができるの……?」
異常な旋回。
自分でやったのが未だに信じられない。
明らかに、自分の技量以上の動きだった。
管制塔は驚愕した。
「あいつ…」
「ただの整備兵だろ……?」
「誰なんだあいつは……」
ゴースト隊はスローンの動きを見ていた。
異常な動き。
あんなパイロットがまだいたとは。
「うぅ……」
スローンは罪悪感を何とか振り払う。
そして下降し、攻撃機の背後を取る。
そして、機関砲。
「うわああああ!」
ドドドドドド!
ドカァァァン!
もう1機、攻撃機を撃墜した。
すると、スローンの背後に敵戦闘機が現れる。
BEEP BEEP BEEP
敵機のミサイルが迫る。
スローンは回避しようとするが、前方には敵。
「こっちにも!?」
スローンは上昇しようとする。
「うわっ!」
しかし、敵が行く手を阻む。
スローンは旋回。
完全に囲まれている。
しかし、逃げ回っているうちにミサイルが迫る。
「まずいっ…!」
ドドドドドド!
雲の中で何かが動いた。
ドカァァン!
近くの雲の中から機関砲。
ミサイルが爆散した。
「……何?」
スローンは雲に目を移す。
「大丈夫か?」
「レオン!」
撃ったのはレオンだった。
「俺に任せろ。」
レオンの機体は、スローンとすれ違い、スローンを囲んでいた敵編隊に突撃。
ドドドドドド!
敵機の翼がもがれた。
1機、もう1機。
2つの機体が空で消えた。
残りの敵機は撤退したが、レオンは追わなかった。
「すごい…」
レオンの活躍が見えた。
スローンは目を見開いた。
すごい、さすが隊長だ。
しかし次の瞬間。
異常な速度のミサイルが、ゴースト隊の背後の雲から放たれる。
その速度は──およそマッハ5.5。
おそらく赤外線誘導だ。
レオンが叫ぶ。
「4番機、ブレイクしろ!」
ゴースト隊は散開した。
しかし、ミサイルの速度が速すぎる。
間に合わない。
「ぐわあああああ!!」
ミサイル直撃。
ゴースト隊4番機がレーダーから消えた。
「……第四世代か。」
「骨董品だな。」
雲の中から現れたのは、黒と赤の機体。
異常な速度。
聞こえないエンジン音。
レーダーは沈黙。
いや、あの機体の周囲だけレーダーが消える。
しかし、空には確実に何かがいた。
それだけで、戦場に恐怖を与えるには十分だった。
「なんだ……あれ………」
ゴースト隊3番機は、恐怖で身震いした。
「こちらレギウス帝国空軍、第13皇帝直属飛行隊隊長。」
「コールサイン《ケルベロス》。」
「目標基地を破壊する。」
すると、ケルベロスに通信。
「これは極秘計画だ。」
「目的は新型機体のテスト実戦。」
「目撃者は全て消せ。」
ケルベロスが答える。
「……はい。」
「皇帝陛下。」
「クソっ!」
しかし彼らは諦めない。
散開した3番機は急減速。
敵機の背後を取った。
そして、ミサイル発射。
しかし軽々と旋回され、避けられる。
「何!?」
「第四世代機しかない部隊なんて話にならない。」
すると、今度は敵機が動く。
コブラ機動。
高速飛行中、機首を90度立て、失速したような状態になったあとに機体を水平に戻す機動だ。
ゴースト隊3番機は一瞬にして背後を取られた。
敵の機関砲。
「避けるんだ!」
ゴースト隊3番機は避けようとするが、
回避したはずの弾が迫ってくる。
AI誘導機関砲。
次世代兵器だ。
「なんだこの機関砲……!」
機関砲の弾がエンジンに当たる。
片方のエンジンが壊れた。
「おい、脱出だ!」
レオンが叫ぶ。
しかし、
「クソっ!間に合わ──」
3番機がレーダーから消えた。
「3番機撃墜!」
残るゴースト隊は2機。
しかしその瞬間。
敵機の進路上にいたゴースト隊2番機にミサイルが放たれた。
「まずい…!」
速度が速すぎる。
回避が間に合わない。
敵機とすれ違う瞬間。
ミサイルが直撃。
「大丈夫か!?」
「レオン隊長!逃げ───」
2番機撃墜。
「くっ!」
残るは1番機、レオンのみ。
敵機からはそれほど遠くない。
しかし、勝てないと悟ったのか、撤退しようとする。
しかし敵機はレオンへ向かわない。
遠く離れたスローンへ向かった。
「やばい……!」
敵機はミサイルを放つ。
ミサイルはスローンへ一直線に向かう。
──しかしそこへ。
「うおおおおおっ!」
レオンがミサイルに機体を向ける。
ドドドドドド!
ドカァァァン!
機関砲の正確な射撃でミサイルを撃墜。
「…ありがとうレオン!」
しかし、
「骨董品が生意気な!」
レオンの背後にミサイル。
「……!」
「避けて!」
レオンは急旋回。
しかし、ミサイルの速度が速すぎる。
レオンの機体にミサイルが直撃する。
レオンは通信機越しに叫ぶ。
「スローン!」
「空を飛びたかったんだろ!」
「だったら───」
ザーーーー
OFFLINE
レオンの声が途切れた。
そして、レーダーから反応が消える。
数十秒の間に、空は完全な地獄へと変わっていた。
そう。
──ゴースト隊が全滅したのだ。
「空軍が主力だと聞いたが、弱いな。」
「笑えるぜ。」
ケルベロスは呟いた。
「え……」
数秒の沈黙。
そして。
「嘘でしょ……」
レーダーを見るスローン。
彼女は驚き、恐怖した。
レオンが死んだ。
まだたくさん話したかったのに。
まだ空を教えて貰いたかったのに。
…しかし、ここで泣いたら自分も死ぬ。
スローンは、必死に涙を堪えていた。
スローンは現れた機体を見つめている。
連邦では見たことがない機体だ。
エンジン音も、形も異常だ。
レーダーにも映っていない。
すると、
スローンの機体にミサイルが飛ぶ。
「わあああ!」
「やばいやばいやばい!」
スローンは上昇する。
だがミサイルの方が速い。
──その時だった。
ドドドドドド!
背後から機関砲。
ミサイルが撃墜される。
「──まだまだ甘いな。」
通信機越しの声。
だが変調されている。
「…誰?」
「俺は……」
数秒の沈黙。
そして、一言。
「──GHOST。」
「────!?」
スローンの背筋に冷たいものが走った。
GHOST。
かつての伝説のコールサイン。
だが、記録では飛行中に行方不明になったはずだ。
おかしい。
名を騙っているのか。
「…でも──」
スローンが何かを言いかけた次の瞬間、雲の中で何かが動く。
GHOSTの機体が、雲の中から現れた。
今スローンが乗っている機体と、まるで同じ設計だった。
だが、マークは完全に消えている。
そして、明らかに異常な点が一つ。
速度だ。
この戦闘機はマッハ2.2まで出る。
だがGHOSTの機体はおよそマッハ3以上。
明らかに異常だった。
よく見ると、機体の外装がスローンのものとは微妙に違う。
おそらく何か改造を施されているのだろう。
「なんなの君!?」
「あとあいつは何!?」
スローンは突然のことで理解できていなかった。
「…奴の機体は怪物だ。」
「俺でも簡単には墜とせない。」
GHOSTはあの機体とパイロットを知っているかのように話す。
「何それ!?」
「お前は逃げろ。」
GHOSTは異常な速度で敵機に突っ込む。
「……いや、」
「…私も戦う!」
スローンの機体も、機体を急旋回。
GHOSTに並ぶ。
味方を何機も倒した敵だ。
撃墜しなければ。
「………」
GHOSTはため息をついた。
敵との距離は遠い。
「フォックス2。」
しかし敵機はミサイルを発射する。
それも異常な速度のミサイルだ。
「なんなの!?」
レーダーに機体はなかなか映らない。
しかし、目の前にはミサイル。
「やばっ!」
スローンは咄嗟に上に旋回し、フレアを撒く。
ミサイルは機体に触れる直前、フレアに反応して爆発した。
「はぁ…はぁ…」
息を切らすスローン。
こんな空戦は初めてだ。
怖い。
訓練とは全く違う。
すると、
「…落ち着け。」
GHOSTが声をかける。
「計器を見るな。」
「レーダーを見るな。」
「空を見ろ。」
「──空は嘘をつかない。」
「空を……」
スローンは、計器とレーダーから目を離す。
そして、空を見る。
広大な空。
目の前に見える敵機。
目視ではステルス性能は無意味。
そして、敵機の放つミサイル。
「来た!」
スローンの機体はフレアを撒いた。
ミサイルがフレアに反応して爆発する。
「そうだ。」
GHOSTはヘルメット越しに微笑んだ。
しかし、スローンへミサイルが放たれる。
「また!?」
高度10000メートル。
スローンはもう一度上昇、旋回し、フレアを撒こうとする。
しかし、
カチカチカチカチ
「──え?」
あと一回か二回分はあるはずのフレアが出ない。
…そうだ。
補充を忘れていた。
敵は笑った。
「ハッ、骨董品で飛ぶからだ。」
「やばいやばいどうしよう!」
スローンがあわててる間にもミサイルは高速で迫る。
今にも機体にミサイルが触れそうなその時、
GHOSTの機関砲がミサイルを貫いた。
ミサイルが空中で爆発する。
「助かった……」
「…フレアの確認を忘れるな、スローン。」
「お前の悪い癖だ。」
「──え?」
そうGHOSTが話すと、敵機がGHOSTの背後を取る。
「GHOSTさん!」
「………!」
GHOSTが動く。
一瞬で急上昇、
減速、
そして急降下。
コブラ機動に似ているが、また違う。
ゴースト隊の中で「GHOST機動」と呼ばれている機動だ。
GHOSTは一瞬で背後を取った。
「骨董品でこんな機動が!?」
そして、
ドドドドドド!
機関砲を撃ち続ける。
──しかし、敵機のエンジンへの損傷は軽微だった。
「やはりか。」
GHOSTはミサイルを発射。
敵は回避しない。
装甲を信じているのだ。
ドカァァァン!
ミサイル命中。
だが機体の異様な装甲が爆発を吸収する。
「…やっぱ骨董品だな。」
「なんで……?」
「なんで墜ちないの!?」
スローンは恐怖した。
ミサイルを当てても墜ちない機体。
化け物だ。
その時、スローンに通信が。
「そこの雑魚。」
「死にたくないなら飛ぶのを止めろ。」
スローンはその言葉を聞いた。
一瞬だけ考えた。
そして、一瞬だけ離脱しようと考えた。
私に空は無理だ。
憧れた私が馬鹿だった。
そう思っていた矢先。
GHOSTが怒った。
「スローンを馬鹿にするな。」
その口調は、何故かよく知っている気がした。
「……え?」
「なんで私の名前を……?」
「スローン。」
「空を諦めるな。」
「空は諦めなければ応えてくれる。」
スローンはその言葉を聞いた。
なんだか、久しぶりに聞いた気がする言葉だ。
そして思った。
空を諦めたくない。
「…わかった。」
そう呟いた瞬間、スローンが動いた。
GHOSTの隣に並んだのだ。
「行くよ、GHOSTさん!」
「……」
GHOSTは静かに頷いた。
スローンがミサイルを全弾発射する。
「ハッ!」
敵は軽々と避けた。
その動きには油断が見えた。
しかし、敵が回避した瞬間。
GHOSTがミサイルを全弾発射した。
「何っ!?」
「ぐわぁぁぁぁっ!!」
全弾命中。
機体は衝撃を吸収しきれていない。
敵機が火を噴く。
「骨董品に…俺が───」
ドカァァァン!!
敵機が墜ちる。
スローンとGHOSTが、空を並んで飛んでいる。
「──ありがとう。」
「………ああ。」
GHOSTは急加速。
空へと消えていった。
しかし、一瞬だけ見えたGHOSTの機体の翼。
そこに書かれた、微かな番号。
その番号を、スローンは忘れるはずがなかった。
初代ゴースト隊隊長の番号。
15年前、空に消えたはずの番号だった。
「…やっぱり。」
スローンは微笑んだ。
彼が死ぬわけがない。
そう思っていたからだ。
──そして、その様子をヘリから見ていた一人の男。
「…あの機体のパイロットは?」
操縦士が答える。
「スローン・オルブライト。」
「ただの整備兵……のはずです。」
男は興味深そうに言った。
「ほう。」
スローンは、ボロボロになった基地に着陸する。
どうやら撤退したはずの爆撃機に爆撃されたようだ。
油断した。
人はいない。
全員避難したか死んだか。
未だに、スローンは涙を堪えている。
仲間が死んだ悲しみ。
人を殺した罪悪感。
死ぬかもしれない恐怖。
そのすべてが重なった結果だった。
「これからどうしよう……」
スローンは周囲を見る。
格納庫は完全に破壊され、管制塔は跡形もなく消えている。
周囲には死体が。
目も当てられない惨状だ。
今までの日常が、一瞬で消えた。
戦争が始まった証拠。
──スローンは泣いた。
座り込み、涙を流した。
そのまま、しばらく泣いていた。
──突如、空からヘリが現れる。
ヘリは基地の滑走路に着陸した。
救助だろうか。
すると、ヘリの中から人が。
アストラ連邦の海軍服に身を包んだ男が現れた。
その男は言う。
「君に話がある。」
「私に?」
「そうだ。」
「詳しくはヘリで話す。」
スローンは考え、
「…わかった。」
「ここにいても仕方ないしね。」
スローンはヘリに乗った。
ヘリは飛び立つ。
もうこの基地に戻ることはないのだろうか。
もう仲間とも会えないのだろうか。
そう思うと、少し悲しくなる。
ヘリの中、男が口を開いた。
「…君の活躍を見た。」
「あなたは?」
「私はアルヴィス・ハルトマン。」
「空母フェンリルの艦長だ。」
空母フェンリル。
アストラ連邦が作った巨大航空母艦。
それの艦長を名乗る男が、そこに立っていた。
「…その艦長さんが私に何か?」
「…率直に言おう。」
「……君を、」
「アストラ連邦軍特殊航空部隊」
「ヴィトニル隊に任命する。」
「…え?」
スローンは困惑した。
なぜ整備兵の私が特殊部隊に?
そう思っていたからだ。
「理由は簡単だ。」
ハルトマンは続ける。
「君は、レギウス帝国の編隊と試験戦闘機を相手に戦った。」
「あんな動きは普通できない。」
「…なるほど。」
「要するにスカウトってわけね。」
スローンはそう解釈した。
「…まあ、そんな感じだ。」
ハルトマンは続ける。
「…ヴィトニル隊は通常ではやらない作戦を遂行するエース部隊だ。」
「例えば、敵の強固なレーダー網をかいくぐり、狭い地点を一瞬で爆撃するような仕事をする。」
「さらに陸海空すべての目標と戦う。」
「…どうする?」
スローンは腕を組んで考える。
そして、
「…入る。」
「私にできることがあるなら。」
スローンは思い起こす。
『空を飛びたいなら、生き延びろ。』
「私、生き残る。」
「──また、空を飛ぶために。」
ハルトマンは微笑んだ。
「…歓迎するよ。」
ハルトマンは狼の形のバッジを差し出した。
「ヴィトニル4。」
「スローン・オルブライト。」
「コールサイン、SKYWOLFSKYWOLF」
スローンはバッジを受け取り、服に着ける。
「…はい!」
「…そういえば。」
ハルトマンは何かを思い出したかのように言う。
「なんです?」
「…君が乗っていた機体。」
「空母フェンリルにいた時のゴースト隊が乗っていた艦載機だ。」
「どこで手に入れた。」
ハルトマンは真剣に問う。
「…格納庫の奥。」
スローンは答えた。
格納庫の奥の、ボロボロだったあの機体だ。
今は輸送機で運ばれている。
「…分かっているな?」
「…そのつもりです。」
「……その機体は元々──」
ハルトマンは一言。
「GHOSTのものだ。」
スローンは笑う。
「……知ってる。」
スローンはヘリから空を見る。
「あの黒い機体…」
「なんだか懐かしかったから。」
ハルトマンは少し黙り、
「…そうか。」
そう呟いた。
黒い幽霊、GHOST。
その存在が、新たな戦争の幕開けを告げていた。
読んでいただきありがとうございます。
豆腐です。
後書きでは、作中に登場する兵器の設定と、次回のお話を少し解説していこうと思います。
今回解説するのは、物語で登場した敵の試験機です。
やたら装甲が硬かったですよね。
その正体が、この機体です。
SX-01「ヘリオス」
基本情報
型式番号:SX-01
機体名:ヘリオス(Helios)
世代:第七世代試作戦闘機
運用:有人 / 無人両対応
開発:レギウス帝国極秘計画
用途:次世代制空・無人機指揮統合機
レギウス帝国が極秘裏に開発した第八世代戦闘機試作機。
性能
最高速度
マッハ4
レーダージャミング機構
機体周囲に特殊電磁フィールドを展開。
レーダーで探知不能になる。
極超音速ミサイル
マッハ5.5の多用途ミサイルを搭載可能。
操縦システム
脳波リンク操縦
パイロットの脳波と機体を直接同期させるシステム。
機体はパイロットの思考そのものに反応して動く。
しかし試作システムのため、パイロットへの負荷が高い。
唯一の例外がケルベロス。
通常のパイロットでは強い負担が発生するが、
ケルベロスはなぜか脳波リンクの負荷が大幅に軽減される。
理由は不明。
防御システム
試作装甲「ソル装甲」
ヘリオス最大の特徴の一つ。
ミサイルや機関砲による衝撃エネルギーを
吸収し、機体エネルギーへ変換する特殊装甲。
これにより長時間戦闘が可能に。
ただし、一度に吸収できるエネルギー量には限界があり、大型ミサイルには耐えられない。
無人機指揮システム
ヘリオスは最大10機の無人機を同時に指揮可能。
脳波リンクにより、
パイロットは自分の手足のように無人機を操作できる。
戦闘では
囮にしたり、敵を包囲したりできる。
次回は、
ヴィトニル隊の空母「フェンリル」にスローンが初めて行く話です。
そこで彼女は、ある兵器を見つけます。
エンハンスド・ファイター(EF)
レギウス帝国に対抗するため、
アストラ連邦が開発した新型兵器です。
それでは、また次回。




