始まりの物語
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
エルフの吟遊詩人たちが歌った、はじまりの話
エルフの吟遊詩人たちは、
輪になって座り、
歌いながら語りはじめた。
歌は上手ではなかった。
だが、声は遠くまで届いた。
それは、
彼女たちの世界の、
そしてこの宇宙の、
いちばん最初の話だった。
むかし、
まだ世界が暗くて、
名前も少なかったころ。
ひとりの勇者がいた。
名を、
イグネオスという。
イグネオスは、
魔王を探して、
とても深いダンジョンに潜っていた。
だがその日、
彼は戦っていなかった。
ただ、
石の床に座り、
息を整え、
休んでいた。
ダンジョンは暗く、
寒かった。
火が欲しかった。
イグネオスは地面を探し、
二つの木片を拾った。
どこにでもありそうな、
細くて、乾いた木だった。
近くには、
たくさんの石が転がっていた。
イグネオスは、
何も考えず、
木片を擦り合わせた。
カチ、
カチ、と。
彼は知らなかった。
それが、
ただの木ではなかったことを。
それは、
かつて神だったものの欠片だった。
名を、
忘れられし者
――The Forgotten One。
大いなる神々の戦争の中で、
失われ、
砕け、
誰にも思い出されなくなった神。
その身体の、
ほんの小さな破片。
それが、
イグネオスの手の中にあった。
カチ、
カチ。
その瞬間。
火ではなく、
太陽が生まれた。
小さく、
まぶしく、
しかし確かに。
太陽のまわりで、
床に転がっていた石たちが、
ふわりと浮かび上がった。
石は回り、
集まり、
丸くなり、
やがて、
星になった。
惑星になった。
音はなかった。
歓声もなかった。
ただ、
そうなった。
こうして、
この宇宙は生まれた。
エルフの吟遊詩人は、
そこで少し黙った。
そして、
微笑んだ。
「この世界も」
「女王キョニエットの世界も」
「私たちの世界も」
「ぜんぶ、
同じ太陽のまわりを回っている」
エルフたちは、
宇宙を旅する。
歌いながら。
彼女たちは、
飛ぶ仏像に乗る。
大きなブッダの像だ。
石でできていて、
とても重そうだが、
軽々と宇宙を滑っていく。
どうやって動いているのかは、
誰も知らない。
エルフたちは言う。
「たぶん、
気持ち」
それで十分だった。
だが今、
宇宙は少し、
困っている。
イグネオスは、
まだダンジョンにいる。
魔王と、
戦っている。
魔王の名は、
アンドリュジョンソン。
強いのか、
弱いのか、
それもよく分からない。
ただ、
戦いは長く続いている。
イグネオスは、
疲れている。
彼は、
宇宙を作った。
だが、
宇宙の助け方を、
知らなかった。
だから、
エルフたちは歌いに来た。
この宇宙の、
あちこちに。
助けを、
求めるために。
吟遊詩人たちは歌い終えた。
誰も、
すぐには拍手をしなかった。
理由は、
問われなかった。
それが、
この世界のやり方だった。
宇宙は、
静かに、
次の動きを待っていた。
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