モンブランと別れ⑤
大変遅くなりました。あと1話か2話で終わる予定です多分。最後までお付き合い下さい。
「言ノ葉さん?」
もう一人現れた人物、それは言ノ葉さんだった。
「遅いと思ってきてみたらどういう状況?」
「いやこれは....」
詳細に状況を語りたいところだが僕の頭も追いついておらずどこ言葉から紡ぐべきか検討がつかない。
「奥の方まで声響いてたよ達右くん」
「ああ、ごめん」
「私に謝られても.....ね。まあとりあえず一旦両者落ち着こうよ」
言ノ葉さんは青木さんを掴んでいる手を一本一本指を剥がすようにして解いていく。そして振りほどかれた手を言ノ葉さんは僕の手を包むようにして握ってくる。
「少しは落ち着いた?」
「何とか」
冷静さを取り戻し感情の抑制を働かす。頭に登った血はスルスルと冷めていき、自分がしてしまっか後悔だけがそこには残った。
「良かった。とりあえずここは人目に付いてるし三人とも近くのカフェにでも行かない?」
周りを見渡すとたくさんの視線がこちらに向けられていることに気づく。その眼差しは僕らを軽蔑したものに近く視線の檻にでも入れられたかのごとく僕らを囲いこんでいる。
「そう.....だね」
ここまで感情をむき出しにしたのはいつぶりだろう。怒り、悲しみ、嫉妬。今の感情は名前をつけられないくらいに漠然としている。
「それでいい?青木ちゃんともう一人の.....」
「幸村勇心」
「幸村くんもそれでいい?」
「ああ」
勇心という男は仕方ないなと言わんばかりの表情であったが納得したらしく頷いている。
一方青木さんは先程と同じく下を向いて黙ったまま一向にこちらを見ようとしない。
「それじゃ行こっか」
そんなことはお構い無しに言ノ葉さんが歩き出す。
それに引かれ僕と勇心そして勇心に引っ張られる形で青木さんも歩きだした。
カフェに着くまでの間誰一人として会話をすることはなかった。
カフェに着くと僕を含めた四人はテーブル席へと腰をかけた。僕と言ノ葉さんが右に、幸村くんと青木さんが左に座る。
「それで何があったの?」
「青木さんに別の彼氏がいたんだ」
「そうなんだ。でも青木ちゃんって達右くんと付き合ってるんでしょ?」
「そうだけど」
「ん?」
僕と幸村くんの言葉が重なる。
「それってどういうことだよ?稲美は俺と付き合ってんだから彼氏なんているわけねーだろ。嘘もいい加減にしろ」
僕は青木さんから言葉を貰い受け取った。それが嘘なわけがない。事実しっかりとあの時の体温と感触が残っているのだから。
「嘘じゃないよそんなに疑うならそこにいる青木さんに聞いてみたら。僕は確かに青木さんに告白されて付き合ったんだから」
「どうなんだよ稲美?」
僕を含めた青三人の視線が青木さんへと集中する。そしてこれまで俯いていた青木さんが顔を上げた。
「本当だよ」
幸村くんの方を見るわけでも言ノ葉さんの方を見る訳でもない。目線は僕へと向けられていた。
「お前自分の言ってることわかってるのか?」
幸村くんの顔は次第に余裕を無くしていく。それは目の前の言葉や光景を信じられない人の表情であり、まるで先程の自分を見ているようだ。
「わかってるよ。だから私たち終わりにしよ」
「はっ?ちょっと待てよ。意味わかんねーよ」
机を叩き幸村くんはその場に立ち上がった。
「意味がわからないの?付き合う関係を終わらせようって言ってるの」
幸村くんも言葉の意味に関してはわかってはいるだろう。だが問題はそこじゃない、互いの妥協点や合意形成なしに一方的な別れを切り出すことに対しての怒りを抱えているのであってそれはごく当たり前のこと。
「いや.....おかしいだろ。俺たちずっと一緒にいてきたじゃねーかそれをなんで今になって」
「私にはもう幸村くんが必要じゃなくなった。ただそれだけだよ」
一方的な別れほど悲しく虚しいものはない。自分への後悔や反省を迎えることはないのだから。
「それは目の前のこいつを選ぶってことか?」
「そうだよ」
「そうかもういいわ勝手にしろ。こんな二股野郎なんかと付き合ってらんねーしこっちから願い下げだわ」
幸村くんは椅子にかけていた上着を気だし身支度を整えだす。
「幸村くんこれまでありがとう。そして楽しかったそれだけは事実だから」
僕に向けていた目線が幸村くんへの移りにこやかな表情を向けている。
その言葉は嘘偽りない本当の言葉だと表情を見れば一目瞭然であった。青木さんは本当に幸村くんのことが好きだった。だがその形が歪で普通とは違うただそれだけなんだ。
「何を今更.....、もう遅ーよ。お前人と付き合うの向いてねーから異性と関わり持つのやめた方がいいぞ。体だけの関係が愛じゃねーし付き合うってことじゃねーからな。それと達右って言ったか、お前も気をつけろよ。これから稲.....そいつと離すだろうけどろくな奴じゃねーからな」
「ああ、うん」
そう言い残すと幸村くんはカフェを後にしたのだった。
「あっさり引くんだね」
「そういう人だから幸村くんって」
ここまではあくまで幸村くんと青木さん二人の話。そしてここからは僕と青城さんが今後どうしていくのこ話し合わなければならない。
「青木ちゃんと幸村くんの話は終わったことだし、ここからは達右くんと青木ちゃんの話を始めないとね」
これまで会話に参戦してこなかった言ノ葉さんがようやく口を開ける。




