モンブランと別れ④
遅くなりました。
あと2話で多分完結します。
とりあえずその場に居ては他の人の邪魔になると思い一旦離れることにした。
「青木さん今日のバッチリ決まってるね。すごく可愛いよ」
青木さんは黒のロングスカートにグリーンのキルティングジャケットというシンプルだが持ち前のスタイルの良さを感じさせるコーデに目を惹かれてしまう。
「ありがとう。達右くんもいつも見ない私服来てるから普段クラスで見るよりかっこよく見える」
「確かに私服で会うの初めてだもんね」
そうこれまで僕たちは下校や放課後遊んだことはあるのだが、それ以外で遊んだことはなく私服で互いにあったのは今回が初めてなのである。
「まさか達右くんが来てるとは思わなかったな。達右くんってこういう所来ないイメージだから」
絶対に行かないと言うわけではないが自ら好き好んで行くということはまずない。そもそも人混みに行くことが僕自身好きではないので選択肢からは真っ先にこういったところは除外される。
「まあそうだね、僕一人だったら来ないかな」
「そうだよね!今日は家族と一緒?」
「いや友達と来てて。青木さんの方は?」
「私も.....達右くんと同じかな」
一瞬回答を躊躇ったような間があったと思うのだが気のせいだろうか。
「それで達右くんのお友達って同じクラスの子?」
「別のクラスの人だよ」
「へぇー、達右くんって別のクラスにお友達いたんだね。普段クラスでの印象が強いから何か以外に思っちゃった」
確かに僕自身クラス内で積極的にコミュケーションを取るほうではないのでそう思っても仕方は無い。
「以外って。いることはいるよ片手で数えられるくらいだけど」
「そっか、じゃあさ私にそのお友達紹介してよ」
「えっなんで?」
自分の友達を自分の彼女に紹介するのはよくあることなのか。僕の恋愛経験が少ないためにそれが普通の判断がつかない。仮に来ているのが男友達だったとしても彼女に自分の友達を紹介するというのはいずさを感じてしまう。
「彼女として彼氏の交友関係を知っておくのは普通じゃない?」
「そういうものなの?」
「そういうものなの」
どうやら断るという選択肢は選べないらしいようだ、どうしたものか。言ノ葉さんも来ていることを素直に伝えるのも手だが正直に言うのも気が引けるので言わないでやり過ごせるのならそうしたい。
「うーん、でも友達の手前もあるし」
「達右くん今日はやけに渋るね。もしかして一緒に来てる子女の子だったりしない?」
ドクン。僕の心臓が急激に跳ねた。次第に脈拍も上がり手に汗が滲んでくる。額の汗が滴り落ち、厚着してきたことを後悔するくらいに体の熱を閉じ込めた。
「仮にそうだったらどうするの?」
「どうする?そりゃ勿論怒るけど彼女として」
やはりそこに男女の関係がなくとも、一緒にいる事実さえあれば関係を証明するのには十分ということであり、世間一般的な感覚ではそれが普通。僕が持っている価値観の方が歪なのだと思い知らさせる。
「でも一緒にいるってだけで男女の仲じゃないかもしれないじゃん。それでもダメなの?」
「じゃあ達右くんはさ、私が別の男の子と一緒にいたら嫌でしょ。だから理屈とかそういう問題じゃなくて気持ちの問題なんだよ」
「気持ち.....ね」
僕は青木さんが誰といようとあまりそこには関心がない。浮気や他の異性と関係を持つことは道徳的に良くないとは思うが自分の感情としてはそこに対する憤りなどは湧いてこない。
僕が欲しているのはただ僕を必要とする心だけ、それさえ彼女が持っていてくれるのならそれ以外に興味はない。
「女の子」
「えっ?」
「一緒に来てるの女の子なんだ」
言ノ葉さんの言葉が頭をよぎった。隠す必要も取り繕う必要もない。
「そっ.....か」
もう少し感情的な返しや僕を責める言葉を覚悟していたが彼女の反応は意外にも淡白なものだった。
「青木さん怒らないの?」
「逆に達右くんはここで終わりにしたいの?」
「いやそういう訳では」
ここで怒こればどうなるのか彼女はそれを理解してる。僕としてもここで彼女との関係を終わらせるつもりなどないが故に.....。
「じゃあこの話は今度でいいんじゃない。それは嫌だ?」
「青木さんがそれでいいなら」
期待とはその人にこう言って欲しい、こうあって欲しいという人間のエゴが反映されたもの。結局僕の彼女に対する少なからずの期待を抱いてしまっていて自分の中の彼女の象を勝手に押し付けてしまっていた。
「私はそれでいいよ。もう行っていい?」
人を待たせていると言うこともあってか彼女は待ち人がいる方へと指を指す。
「最後にひとつだけいい?」
「なに?」
「さっき怒るって言ったけどなんで怒らなかったの?」
「さっきも言ったでしょ気持ちって。つまりはそういうこと」
「それは僕が隠さなかったから怒らなかったって意味?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「それって結構どっちなの?」
「稲美おせーよ」
青木さんの下の名前を呼ぶ知らない男がこちらへ近づいてくる。
「勇心くん?!」
「おおなんだよ、少し遅いと思ってきてみたらそいつに絡まれでもしたのか?」
「いや.....」
下を向き呆然と立ち尽くす青木さん。
「俺が追い払ってやろうか?」
「なんでもないから。ただクラス同じだった子と話してただけ。もう行こう」
青木さんはその男の手を引きその場から離れようとする。
「青木さん待って」
背を向ける彼女を引き止めるように言葉をかけるが振り返る素振りはない。
慌てて彼女のもう片方の腕を僕は掴んだ。
「この人誰なの青木さん」
下の名前で呼んでいる違和感はあった。そうであって欲しくない気持ちもあった。それを確認するまで引けない。
「ああしつけーな。人の彼女に手出しんじゃねーよはなれろ」
僕が掴んでいる手を強引に引き剥がす男。
「えっ、彼女?」
「そうだよ、稲美は俺の彼女だよ聞いてねーのか?」
勇心という男の口から放たれた一言は僕の頭をフリーズさせる。
「それって本当なの青木さん?」
離された手には彼女の温度が微かに残っている。
「.....」
下を向いたまま彼女は目線をこちらに合わせようとしなかった。
「達右くん?」
そしてそこにもう一人、待たせていた人物がその場に現れた。




