体育とカルパス⑥
遅くなりました。
数日後、僕は担任を通してあったこと告白した。
先生は戸惑っていたが一応上にはあげてくれたらしく、次の日に僕と言ノ葉さんが呼ばれあった出来事を詳細に話すことになった。
これで警察なり各種報道機関が動き森宮先生のこれまでの悪事が表に、そうあの時の僕は思っていた。
「くそ、なんでこんなことになるんだ」
「だから言ったでしょ。それだけの事が起きるって」
放課後、学校近くの公園。苛立つ僕の声が静かな住宅街に響き渡る。
結果的に森宮先生はここの学校ではないところで教師を続けることになった。北東高校の決断としては姉妹校に森宮先生を移動させるという決断を下したのだ。
勿論、僕はその決断に納得するはずもなくその後も何度も学校側に訴えかけた。だが学校側は決断した結果を覆すことはなかった。
「先生も先生で話聞いてくれたのになんで何も言ってくれなかったんだろ。もう少しなんかあっても良かったのに」
担任の藤巻先生は話は通してくれたのだが、それ以降何も語ることはなかったのだ。
「先生も生活かかってるから仕方ないよ」
「まあそうだけど、でも生徒を助けるのが教師じゃないの」
面倒事を避けたい気持ち、自分の地位や名誉守りたい欲、人間はどこまで行っても我が身が可愛く、保身や責任回避それしか頭にないのだ。
「いつだった大人は助けてくれそうで助けてくれないもんだよ。だからそう思うだけ無駄なの」
「それは今回のことで身に染みた。大人はクソだ。でも言ノ葉さんはいいのこれで?」
あれだけのことをしておいて裁きを免れるというのは到底受け入れられることではない。ましてや被害を受けた言ノ葉さんが証言しているのにも関わらず全てがなかったことにされることそれを受け入れることなんて僕はできない。
「嫌だよ。でも現実がこれなんだから受け入れるしかないんだよ。達右くんも言ったでしょ割り切るのが大人って」
確かにそう言った。割り切るのが大人の嗜みであり必要とされることだから。でもこんな間違っていること
、それを割り切ってしまったら.....それはもう。
「僕は.....割り切れないよ」
割り切ることなんで出来やしない。大人になることが正しさを捨て、それを見て見ぬふりをすることを言うのなら僕は一生子供のままでいい。
「学校側も大事にしたくないんだよ。だってこれが世間に広まれば学校の評価が落ちるでしょ。だから全力で守りに来たんだよきっと」
「それはそうだけど.....でもこんなことが許されていいの」
「許されるも何もそれが大人で私たちが敵わないことなんだって」
それが前言っていた僕たち子供は大人を見上げることしかできないということなのか。わかってはいたつもりだが、いざ大人の力を目の前にすると子供とはこれほどまでに無力なのか。
「言ノ葉さんはそういうけどなにか、別の解決策みたいなのはあるんじゃない?例えばネット使うとか。今だったらバズればそれこそ色んなところに伝えれるわけだから」
「じゃあ仮に達右くんがネットに今回のことをあげるとするでしょ。そしてバズってそれが世間に認知されるとする。するとどうなると思う?」
どうなる。そんなの答えは簡単だ。
「悪いやつが社会の制裁を受ける」
バレていなかった事が表に出ること、それが現状の社会とってどれだけのインパクトがあるかそんなのは目をするより明らかだ。
「そうなるかもしれないね。それでも学校が潰れることになったり、あるいは私みたいな子がメディアに付け回されることになるかもしれない。そんな時達右くんはその責任を全部終えると本気で思ってる?」
「それは.....」
ネットでバズればどうにかなるというのは甘い考えだったようだ。よくよく考えてみるとメディアがこれを取り上げるという保証などなく、ましてや今回のことも外部に一切出ていないことから森宮先生のことを知る関係者が関与していた可能性すらある。
故に僕が出しゃばって今回のことをリークしたとて空回りする恐れがあると言ノ葉さんは言いたいのだ。
「じゃあ裁判で訴えるとかは?」
「そんなお金と時間達右くんは用意できるの?相手の潤沢な資金と時間、明らかに結果は目に見えてるんじゃない?」
「.....」
「最後まで諦めないでくれてありがとうね。私達右くんのこと少し見直しちゃった」
そんな言葉この状況で聞きたい言葉じゃないんだ。もっと何かを成し遂げた時、果たした時にかけて欲しい認めて欲しかった。
「こういうことを恐れて色んな人と交流持ってたのかな」
「それはわからない。持っと私たちが知らないことがあるのかもしれない。でも今は何回も言うけどこの現実を受け入れるしかないんだよ。幸いにも私たちはこの学校にまだ通えることだし、楽しくやっていかなくちゃ。ね達右くん」
「何も出来なくてごめん」
「いいよ」
彼女の肯定とも否定とも違う言葉は僕の胸に深く突き刺さった。言ノ葉さんは今回のことをどこまで見越していたのだろうか。僕の浅はかな思考では到底想像することすらできないのかもしれない。
「私も達右くんも今回の一件で疲れたでしょ?だからリフレッシュを兼ねて今度遊びに行こっか」
「今そんな気分じゃなくない?」
「え、嫌だった?」
「そうじゃないけど。こんなことあったのによく行けるなって」
今回の一件、とくに森宮先生にあんなことをされたのなら普通はトラウマものなのだが、言ノ葉さんは何故か平気だ。いや平気ではなく僕の前では見せないようにしているのかもしれない。だからこそ彼女の誘いを断ることなんてできないし、逆に僕が彼女を支えないと。
「やっぱいくよ」
「おお、いきなり乗り気だね。じゃあ決まりだね。場所は追追決めよ」
「わかった」
こうして言ノ葉さんと出かけることが決まった。
楽しみという気持ちよりもこのことを早く忘れたいと思う気持ちが強い。それを見越しての考えだとすると本当に言ノ葉さんには敵わないなと思ってしまった。




