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おかしでおかしな二人の関係  作者: チャパニメ
22/23

体育とカルパス④

遅くなってしまいごめんなさい。

次回でこのお話は終わりになります。

言ノ葉さんと森宮先生の件を見てから三日がたった。

あの事を聞こうとは考えていたのだが一向に聞く機会が訪れず今日が訪れてしまった。いや仮に学校で彼女にあったとしても聞けたかはわからないないが。


「お待たせ、行こっか」


「うん」


時刻を見ると約束の時間の十六時を指していた。冬の夕焼けは短く辺りは着々と暗く鳴り出していた。


「言ノ葉さんっていつも時間通りに来るよね」


「まあね、私ピッタリじゃないと嫌だからさ」


真面目さとは少し違う彼女の変わった感覚。普通の感覚を持っていたらぴったりに来たりはせず五分前か十分前に来るだろうが、言ノ葉さんはいつも待ち合合わせ時間ぴったりに現れる。


それが互いの時間を奪うのが嫌だからなのか、あるいは譲れないこだわりがあるのかはわからない。だがこういった部分に言ノ葉さんらしさを感じてしまうのは何故だろうか。


「達右くん今お腹減ってる?」


「まあ少し小腹がすいてるけど」


お昼ご飯を食べてから四時間くらいが経過したか。丁度この時間ってお腹が減ってくる時間なので僕としては何かを貰えるのは非常にありがたい。


「良かった!カルパスいっぱいあるからさ、一緒に食べよ」


「なんでカルパス?」


「ゲームセンターで取ったんだけど量が多くて、お裾分けしてんるだ!だから達右くんにもあげる」


「なるほどね。確かに一箱だと多いかも」


カルパス自体は美味しいのだがいっぱい食べれるものかというとそうではないし一箱を一人で食べるとなると飽きがきてしまう。せいぜい美味しく食べれる本数は二、三本といったくらいだと僕は思う。


「ありがとう!久しぶりに食べたけどやっぱり美味しいね」


カルパスを食べたのは何年ぶりだろうか。このスモーキーさと塩っけ、小さい時はよく食べ待ていた記憶があるのだが成長するにつれてカルパス、いや駄菓子自体を食べなくなってしまい久しぶりの味になんだか懐かしくなってしまった。


「カルパスってさお菓子だけどお菓子食べてる感じしないでしょ。私この感覚が好きなんだよね」


「確かにそうかも。お菓子って甘いっていう先入観あるからそことのギャップはあるよね駄菓子は特に」


駄菓子は甘いものもあるがお湯を入れてカップ麺みたいに食べるものなどどちらかといえば食事として成り立つものも多数存在する。普通お菓子といえば洋菓子など甘いものを想像するものであるから塩っぱいもの、食事に近いものなどが含まれる駄菓子はかなり特殊な位置づけがあると僕自身も思う。


「そうなの、でも駄菓子ってそのあいまいで明確な決まりがない感じそれがいいだよね」


明確な決まりか。僕はどちらかと言うと決まりや規則それらを有していた方がいいと感じるので直感としては理解しにくい部分がある。


「この前もさスカートの丈が短すぎるって言われて怒られたんだ」


いきなりスカートの話?まあそれで怒られる生徒がいることはよく聞くが。


「その話はよくクラスでも愚痴ってる女子の話聞くけどそんなに厳しいの?」


「達右くんの考えてる五倍は厳しんだから」


言ノ葉さんのスカートに視線を移すしてみるが、僕は短いと感じなかった。膝よりは上なので短いと言われれば短いが言ノ葉さんよりもっと短くしている人を見たことがあるので目くじらを立てるほどてはないと思うのだが。


「達右くんどこみてるの」


「いや言ノ葉さんがそういうから」


僕は慌てて目線をそらす。そう言われたら目線を移してしまうは不可抗力だと思うのだが。


「うそうそ嘘だって。でもスカートの丈って人によって短いと思うかなんて違うわけでしょ。それをさ単一のしかも自分の尺度で決めるなんておかしくない?明確な決まりがあるならまだしもさ....この学校そういった校則ないのにだよ」


「その先生って森宮先生でしょ?」


「そうだよ、そもそも森宮先生しか決められないしねこんなこと」


この北東高校は他の高校に比べかなり校則が少ない。それは自由な校風であり生徒に自主性を持たせる教育方針を取っているためだ。だがここ数年でそれが大きく変わり一つの指標で生徒の自主性という概念を奪う事態が起きてしまったと聞く。


それが森宮先生の生徒指導部部長就任である。

「要は言ノ葉さんは怒られたことに対して納得してないんだ」


「うん、だって私以外にも短い子いるのに私だけ怒られたんだよ。指導するなら普通はみんなにするでしょ?」

明確な決まりやルールがあるのなら指導の対象は全員になるだろう。だがこの高校にはそれが当てはまらない。


森宮先生のいやらしいところはこの自分が決めた校則を名文化していない点にある。本来なら名文化してみなに守らせればいいのだが森宮先生はそれをしなかった。なぜなら名文化しないことで森宮先生の独断と偏見で物事を決められ、彼のさじ加減ひとつで事態をどんな方向にも動かすことができるからである。


「なんで私だけなんだろ」


言ノ葉さんだけというのは少し引っかかるが、たまたま目に付いたから怒っただけなのかもしれない。森宮先生ならそういったことで怒ることは日常茶飯事だから違和感はないのだが。


「普通はそうだけど僕たちが入学した時からそうだったからさ、そういうものって割り切らないとキツくない?」


僕たちが入学した時には既に森宮先生が生徒指導部部長を担任していた。それ故にこれがあたり前だと思ってはいたが、今改めて思うと名文化されておらずその人の主観や恣意的な考えに従うというのは少しおかしな話である。


「おかしいことにおかしいって言うのは間違いなのかな?」


「自分の意見を表明できるのは立派だと思うよ、でも大人の世界ってそれだけじゃ成り立たないからさ、今のうちに訓練だと思って受け入れていくしかないんじゃない」


「そっか.....。それが大人の世界なんだね」


「そうなんだと思う」


言ノ葉さんは正しい。だが正しさだけじゃ世界は成り立たない。それが世界であり、大人であり、世の中なのだ。受け入れていくしかない。


「僕もさルールや決まりがないことに不満はあるよ、それを決めてればこういったこと起きないから。でもそれを言ったところで何も変わらないのも事実だから割り切るしかないんだよきっと」


「別に私は決まりやルールを作って欲しい訳じゃないんだよね」


「どういうこと?」


「だってそういうの作っちゃったら自由がなくなっちゃうでしょ。それは私が望むものじゃないの。でもだからといって自由に漬け込んで好き勝手やる森宮先生のやり方も間違っていると思うし許されていいことじゃないから怒ってるの」


自由に漬け込む、まさに森宮先生にピッタリの言葉だ。自由というものは人々の良識と人間の性善説が前提にあるからこそ成り立つもの。それを信じない僕からしたら何故決まりやルールを先に作らなかったのかいささか疑問でしかなく理解に苦しむ。


「間違ってる.....か、難しい問題だね。僕はさ自由と縛りは両立できないと思うんだ。だってどっちかを優先するとどっちかが優先されなくなるから。だからもし言ノ葉さんが自由を望むなら、負の側面も受け入れなきゃいけないんだと思う。さっきも言ったけどそれが大人だから」


全てをいい塩梅に、そんな甘い言葉はこの世の中には存在しない。世の中はどちらかに傾き、どちらかが軽視される。中立もんなんてものは御伽噺の中だけの話でしかないのだ。


「それでも受け入れたくなかったらどうすればいいの?」


「それは.....考えたこともなかった」


受け入れられなかったらどうすればいいのか、そんなこと受け入れてきた側の僕なんかにわかるわけがない、僕は言ノ葉さんほど強くないのだから。


「僕も森宮先生のやり方には賛同できないけど彼なりの根拠や理由はあるんじゃない、それは僕たちが知らないだけで」


「そんなもの.....あるわけないじゃん」


「言ノ葉さん?」


彼女の物言いは強く先程の空気感とは違い周りに緊張感が漂う。言葉は強くそして冷たい。それは言葉にしなくとも視線でわかる向けられた敵意の正体を明確に表していた。


「ごめん強く言いすぎた。そうかもしれないね」


そうかもしれない、その言葉は後から付け足したかのような不自然さがあった。いつものように笑って茶化す、そんな僕の淡い期待を打ちくだく。


「最近、森宮先生と?」


生徒指導室での一件は僕として違和感はあった。だがそれを判断するのにはあまりにも材料が足りなく憶測の域がでなかった。だが仮にこの一連の話が言ノ葉さんからの救難信号だったとしたら。


「いいの?聞いて」


言ノ葉さんは僕の言葉よりも早かった。


「達右くんはさこれを聞いて、自分にはできることがあるって本気で思ってるの?」


「それは.....わからない。でも気づいたからには見て見ぬふりもできない」


浅はかな正義感なんてこと自分がよく知っている。これまでのことは偶然どうにかなってきただけで今回も以前と同様に上手くとは限らない。物的証拠がある訳でも見た訳でもない、ましてや相手が大人となるとどういった手を使ってくるか未知数で一高校生が手を出しいい領域ではないのは十分理解している。


「達右くんらしいね。自分には力がないのにそれでもどうにかしようとするの」


それでも僕の身近な人が助けを求めているのならそれに答えるのが人としてあるべき姿ではないのか。敵う敵わないではなく僕は応えたいのだ。彼女の言葉に、期待に。


「それでも僕は.....」


「達右くんじゃ無理だよ」


彼女の言葉はどんな刃物よりも僕の心を深く突き刺した。


「だって考えてみて、子供が大人に勝てるなんてある?ないよね。それが自然の摂理だし法則なの。漫画やおとぎ話みたいな終わり方はできないのそれが現実だから」


「戦う前から勝敗は決まっているって言いたいの?」


「そうだよ。知見、経験、世界の見方まで子供が大人に敵うものなんである?仮にあったとしても子供には持っていないもので大人は勝つの。そこにはただ圧倒的な壁だけが立っていて私たちはそれを見上げることしかできない」


僕の自信はどんどんと言ノ葉さんの言葉に飲み込まれていく。


「やっぱり僕じゃ....力不足なのかな」


「そうだね、今の達右くんじゃ無理かもね」


「今の?」


「そう今の」


今のとは一体どういうことだ。僕に何かが足りていないというんだ、全く検討が付かない。



「言ったでしょ、大人は子供に持ってないもので勝つって。それはなんだと思う達右くん?」


「権力とか社会的地位とか?」


ぱっと思い浮かぶのはこのくらいだ。子供は社会的な評価が下る前の段階、信用が形成される前の段階だからこそ、大人よりもある意味信用がない。


それ故に社会的地位や権力といったものとは無縁であるためそれを振りかざしてくる大人に敵わないということだろうか。


「ある意味そうなんだけど、ちょっと違うかな。それはね」


「狡猾さだよ」


彼女から放たれた言葉が凝結となり宙に消えていった。そこには雪が混じった風とわかってはいた自分だけがそこにはいた。

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