8話 魔法の使いどころ
本日、わたくしは悪いことをしますっ!
そんな下賤なことを堂々と心に誓い、いざ向かうは台所。
宮廷の台所だった。
悪いことはバレずに行うものだ。
わたしが使ったのは透明になる魔法だった。
ーーー透明化。
そんなものは現代日本、現代アメリカの特殊部隊ですら無理な話だろう。
それを行うのだ。
火をおこしたり、風をおこすというのは、コンロや扇風機で十分なのだ。
こういう現代科学を超越したものこそ魔法ではないかと思う。
父が狩りに行ってきて数日。
血抜きと解体も終わり、ブロックにした肉があるはずだ。
もうすでに食べたかもしれないが、少しは燻製用に残しておくはずだ。
干し肉。燻製。
どう違うのかはわからないが、塩を練りこみ、蒸しておくはずだ。
肉みたいなものが入ったスープが食卓に出てきたこともある。
きっとあるはずだ。
「ええええええええええ??????????」
素っ頓狂な声を出してしまった。
透明化されているが、声も透明化できているのだろうか?
足音も透明化してほしい。
肉がない。
肉はあるのだが、燻製は作らないのか......????
肉は冷蔵庫ともいえるべき、氷の巨大な塊が置いてある零度の厨房に保管してあった。
そ、そうか......
この世界にも冷蔵庫はあるのだ。
魔法の冷蔵庫がっ......!
氷魔法を使ったことはあったが、そんなのは一瞬、氷のよくて手のひらサイズの塊ができるだけだった。だけれど、こんな人のサイズよりも大きい氷の塊を作り出すことができるなんて思わなかったのだ。
無念。
干し肉、できれば燻製。ベーコン、ハム、ベーコンが欲しかった。
カップラーメンにある肉みたいなもの(あれは豆腐肉だろうか?)をこの世界でも食べたことがあるのだから、干し肉くらいはあるだろうと思っていた。
が、ない。
が、ない。
が、ない。
わたしはこの事実を受け入れられずにいた。
だが。天命が降ってきた。そしてそれは最も合理的なものだった。
自分でさ作ればいいじゃん、。肉はあるんだから。
次回、異世界、燻製づくりの開始だ。
ちなみにベーコンとハムの違いはよくわからない。
食べ物として違いはわかるが、作り方はわからないのだ。
形が違う。油の量が違うくらい。あと着色料。ハムのほうが多い気がする。