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微笑のミシェル

作者: 昼月キオリ

二人の出会いは奴隷オークション会場だった。


ミシェルは感情のない14歳の少女。

肩ほどまで伸びたウェーブがかった茶色い髪に茶色い瞳と痩せ細った身体は今にも折れてしまいそうだった。

貧乏な家に産まれ育つ。


レークは女性と話すのが苦手な20歳の男。

褐色肌に黒い瞳と190cmもある肩幅のある身体はその場に立っているだけで迫力があった。

お金持ちの家に産まれ育つ。


レークを心配した父親が気晴らしにオークション会場に連れて行こうと考えた。

最後まで反対していたレークだったが父親があまりにしつこかった為、それで父親の気が晴れるならばと渋々オークション会場に行ったのだ。


オークションが始まり、色々な奴隷たちがステージ上に出された。

その中に奴隷としてオークションに出されたミシェルという少女がいた。

怯えた様子はなく、その状況を受け入れている様子だった。

無表情のままただ買われるのを待っていた。

父「この中で気に入った者はいるか?」

そこでミシェルが感情がないという情報を主催者から聞いたレークは少女を指名した。

他にも買いたいという人が現れたが、レークの父がその三倍の額を示し落札された。



それからすぐにレークの屋敷で暮らすことになった。

部屋は一部屋、一日三食の食事、新しい衣服など衣食住は全て与えられた。

ミシェルはこの時、牢屋にでも入れられると思っていたのであまりの待遇の良さに何か裏があるのではないかと考えていた。

しかし、レークも父親も暴力を振るうことも性的なことを要求することもなかった。


レークはオークション会場でミシェルが感情がないことを知り、彼女に惹かれ始めた。

彼女には女性特有の相手を品定めするような目付きや色目がなかったからだ。

共に過ごすうちにミシェル対し居心地の良さを感じていた。



そんなある日、俺が仕事から帰って来ると

俺の肩に付いていた花びらをミシェルが取ってくれた。

レーク「ん?」

ミシェル「あ、ごめんなさいつい・・・」

レーク「いや、取ってくれたのだな、ありがとう」

ミシェルは花びらを見つめている。

レーク「花が好きなのか?」

ミシェルはコクンと頷いた。

主催者がミシェルは感情がないと言っていたがあれは嘘だな。

レーク「この屋敷にガーデンがある、行ってみるか?」

ミシェルはもう一度頷く。

一人で屋敷から出ることを禁じられていたミシェルはレークと共になら外へ出ることを許されていた。

屋敷の外には見張りがいるので逃げようとしても成功はしないだろうが。



レークは隣でガーデンを目をキラキラさせながら見ているミシェルをチラッと見る。

相当花が好きみたいだな。

しばらくガーデンを見た後、レークが部屋に戻ると言い歩き出した。

ミシェル「(てててっ)」

ミシェルは拘束されているわけではない。

自分の意思でレークの後ろをやせ細った身体で付いて行く。



同僚二人が屋敷に来た時のことだった。

「奴隷なんだったら俺らも楽しんでいいよな?」

とニヤニヤし出す奴が現れた。

ミシェルは意味は気付いたが黙ったまま表情を変えることなく自分の膝の裾をぎゅっと両手で掴んで立っていた。

そうなっても仕方ないと、諦めていたのだ。

しかし・・・。

レーク「おい、ミシェルに手出したら許さないからな」

「何だよ自分だけ楽しもうってのかよ?」

レークはギロッと二人を睨む。

「う・・・おい、行こうぜ」

「お、おお」



レーク「すまない」

ミシェル「どうしてあなたが謝るの?」

レーク「不快だっただろう?」

ミシェルは首をふるふると横に振る。

ミシェル「あなたが守ってくれたから」

レーク「・・・そうか」



レークはそれからしばらくしてミシェルを気遣い、

一年経っても自分のことや屋敷が不快ならばここを出て構わないと伝えた。

ミシェルは目をまんまるくしながら分かったとそれだけ言った。



しかし一年後、ミシェルはレークの元を去ることはなかった。

レークがガーデンで一年前と同じ質問をした時、ミシェルは首を横に振ったのだ。

その時、ミシェルは40cm以上も背丈の差があるレークの服の裾を掴んでいた。

ミシェルが初めて自分に対してした仕草だった。

二人並んで色とりどりの花を眺める。

レークが隣を見る。

ミシェルは柔らかい表情でただ真っ直ぐに前を見つめて微笑んでいた。

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