前途洋々なり、我が人生!
すみませんちょっと追記しましたー!
「えー!
ルイーズ教員、元王女なんですか?!」
「そうよー、お姫様生活に飽きたから、
伯父さんに頼んでこっちの国に来たの」
本日はアヴィントン侯爵家にて、ルイーズ教員室の3人が集まっていた。
あの後無事に公的文書偽造の罪で父とホーク子爵親子は逮捕され、
被害者であるリリーは身の安全確保のため引き続きアヴィントン侯爵家に滞在していた。
もうすっかり準家族の扱いだ。
この度正式にリリー・コニーズの国外留学推薦決定が公表され、
かつ花が咲いたように美しい大変身に、
在学生たちのド肝を抜いたところである。
「でも本当によく勝ち取ったわね、
コニーズも、アヴィントンも」
そう。
ノア・アヴィントンも推薦を勝ち取っていた。
「でも、その枠どうされるんですか?
ノア様は行けないでしょう?」
リリーはノアの顔を覗き込む。
もともとリリーのチャンスを増やすために、受験に付き合ってくれていたのだ。
これ以上付き合わせるわけには行かない。
「…いや、そのことなんだが」
珍しくノアが口をつぐむ。
「俺も、行こうかと思ってる」
「え!」
そりゃあリリーは嬉しいが…
家は?!
すると、
「行ってきていいよー!!」
なぜか庭からノア父、アヴィントン侯爵が手を振っている。
「…だそうだ」
「ふたりが結婚したら帰ってきてねー!」
「!!」
思わず顔を見合わせるノアとリリー。
「いや私、家を捨てて平民として留学する予定なのでそれは…!」
「あら、問題ないわよ」
ルイーズ教員がこともなげに言う。
「私の家に入れたげる。私爵位持ってるの」
と言っても、向こうの国の伯爵位だけどね。
いい?
「十分です!!」
なぜかノアが興奮している。
「じゃ決まりね」
「リリー嬢」
ノアがリリーに向き直る。
「正直いいところを見せる機会もないくらい、
君は自分で自分自身を掴み取った。
そんな君を尊敬してる。
俺と一緒に異国へ行こう。
共に、生きてはくれないだろうか」
リリーは叫んだ。
「よろこんで!!!」
ーーーーーーー
「おっ、来たぜ、ホークだ」
「よう、裁判はどうだった?」
ははは、と男子生徒共がからかい通り過ぎる。
「ああ、あれがトレイン・ホーク」
「しっ、目を合わせちゃだめ。
サインを偽造して勝手に妻にされるわよ」
女子生徒は蜘蛛の子を散らすように廊下の端に逃げる。
トレインはあの忌まわしき試験のあと、
公文書偽造の罪で罰せられ、
今後一切の婚約・婚姻を禁じられた。
トレインは裁判でも己の主張を立派に述べきった。
「その法の在り方がそもそもおかしいのだ」
「リリー・コニーズは私の管理下にある。
その全ては私が適切に扱って然るべきだ」
「あの時、お父君がサインしたと知ったならば、
リリー・コニーズは言うべきだった。
『父、そして夫の御心のままに』と」
「それを愚かにも抵抗し否定するとは。
やはり彼女は淑女として極めて非常識だ」
「その責任は婚約者たる私にあるでしょう。
それについては指導不足の私の咎。
今後はより厳正に指導してみせましょう」
「婚約破棄?
いいや、私は許可しない」
「接近禁止?
それは私達には意味のないことだ。
彼女は自分から戻ってくるべきだ。
常識ある淑女ならばね」
「婚姻禁止?
それもナンセンスだ。
法で婚姻しておらずとも、
リリー・コニーズは私の物であるままだ」
そうして立派な危険思想人物と認識され、
傍聴していた新聞記者によりその主張は大々的に報じられた。
ホーク子爵としては息子の意見には何の異議も無かったが、己の主張のまま法を完全に無視するのはやりすぎだ、と咎めた。
「リリー・コニーズはあきらめろ、トレイン」
「諦めるも何も、
彼女が詫びてくるまで私は許す気はありませんよ」
「何?国外留学に行った?
非常識な、私の許可を得ず行くとは!」
やはり私の指導が必要だ、とトレインはリリーを追って異国へ渡ろうとし、アッサリ捕まって出国禁止が追加になった。
「リリー・コニーズ、お前が詫びを入れるまで、
私は許さない」
こうしてトレインは、
永遠の「詫び待ち」をすることになった。
そして数年後、
ノアと結婚し帰国したリリーを不貞行為で訴え、
逆に裁判所でボコボコにされ、
侯爵邸を襲撃してお縄となり、最終的に収監され強制労働をしてもなお、
「リリー・コニーズは詫びるべきだ」
と主張しているらしい。
最終話短い。
モラハラ反対。
7/6ちょっと追記!
トレインのその後、作者の頭にはあったのですが、
逃げ切ることを主軸に書いちゃったので省略してました。
こういう奴は反省しません。