プロローグ 絶望の未来
これは……夢……?
閉ざされた場所で、キミはボクに優しく笑いかける。
「あなたは、まだ死ぬ時じゃありません」
キミは死ぬ間際、ボクにそう言ってくれたね。でも、ボクにとっては……キミはとても大切な人で、希望でもあったんだ。
そんなキミが死んでしまうなんて。ボクは生きている意味がなくなってしまった。キミが傍にいて、ボクに笑いかけてくれる。それこそがボクの幸せだったのに。
「泣かないで。こうなる運命だったんですよ」
そう、ボクに語りかけながら目の前で無残に処刑されてしまうキミ。キミは、悪いことなんて何一つしていないのに。悪いのは、他の人達なのに。なんでキミが死なないといけないんだ。
頬に何かが伝った。それが涙だと気付くまでに少し時間がかかった。
ボクは持っていたナイフを自分の手首に当てる。そしてそのまま、周りの人達の制止なんて聞かず自分の手首を斬った。そこから血が流れて痛むけど、彼女が味わった苦痛に比べればなんてことはない。何度も、何度も斬りつける。周囲の声なんて、全く聞こえない。
キミがいない世界なんて。
キミガイナイセカイナンテ……。
イキテイテモイミガナイジャナイカ……!
薄れゆく意識の中、ボクは後のことなんて全く考えず、ただ皆のために死んでいったキミのことを想っていた――。