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廃鶏

作者: このび

私には何もない。歳を重ねてからはそういう事ばかり考えるようになった。

学生時代はそれこそイケてる部類ではなかったものの、それなりに謳歌できていて

これから来るであろう華々しい未来に心を躍らせていた。

それからいくつかの年月が経つと、急に人とまともに会話すらできなくなっていった。

激しい動悸、今話している相手は私に対して何を思いながら会話しているのだろう。

誰かの笑い声が常に聞こえ、私は疑心暗鬼になっていった。

幻聴や被害妄想が増え、明らかにまともではないと判断した私は勇気をもって病院へ行く。

心の病にかかってしまった私はそれから何年も家の中で暮らした。

話し相手は脳内にいる複数人の私。様々な思想をもった私と無意識に会話をしていた。

時には自分では到底できないようなことを成したかのような妄想に浸ることもあった。

薬のおかげで昔のようなひどい幻聴や妄想は減ったが、長年家に籠っている生活が続く私には

もう社会復帰など到底無理だろう。

ただ餌を与えて育てられる、まるで家畜のような生活が続いていく。

いや、何も生み出すことのできない私は家畜以下の存在か。

卵の産めなくなった採卵鶏、所謂廃鶏になった私はいつになったら出荷され、ミンチになれるのだろうか

それすらも他人に委ねてしまっている私自身がとても愚かでみじめな存在だと痛感した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 500文字の超短編とは思えないほど心に響きました。廃鶏という着眼点も非常に良いと感じました
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