笑顔のいえい
ゆるふわ設定ですがよろしくお願いします。
夏休みがはじまったばかりの頃だった。
友人のあおいは「心霊写真が撮りたい!」と言い出し、朝早くから墓地に続く道にて何か起こらないか、もしくは何か写らないかと張り込みをしていた。
なぜ夜にやらないのか。
中学生なので、夜の2時になんて出歩いていたら補導されてしまう。
と、返答された。なんで妙に真面目なんだ、そして出歩くなら夜の2時なのか。さまざまな疑問が出たがここは黙っておくべきだと思って何も言わなかった。
夜中に出歩いて心霊写真を撮りたがる彼女のやる気はどこからでてくるのか…
不思議に感じたが、そのやる気は早朝張り込みという形で発散されることとなった。
しかし、そんな簡単に心霊写真が撮れたりはしないのであった。
まあ、わかりきったことではあった。
「そうだ、このおっちゃんみたことない?」
そこには満面の笑みでピースするおじさんが写っていた。
「だれ?」
「知らない」
知らんのかい。関西人じゃないけど、関西弁でツッコミが出てしまった。
あおいによると朝の張り込みで声をかけてきたおじさんらしい。
中学生が早朝から墓地周辺を張り込んでいれば誰だって気にはなるだろうな…
とも思ったがそのおじさんは最近自分の笑顔の写真がないことに気づきカメラを持っていたあおいにダメもとで声をかけ、写真を撮って欲しいと頼んだらしい。
オッケーしたあおい。
いい写真が撮れたので後で現像して渡すことを約束したが。
「連絡先聞いてなかった…」
あー…
もう早速詰んだ。
「私、渡してこようか?」
一緒に話を聞いていた世那がそう言った。
え、知ってる人なの?知り合いだったのなら先に言って…
「いや、親戚んちの近くに住んでるかもしれない人」
はい、知り合いという程の人ではないということですね。
そして、そのおじさんの写真は世那と私が届けにいくことになった。
あおいは用事があったので行けなかった。
予定を合わせてからでもいいと思ったが、世那は早い方がめんどくさくなくて済むだろうと言って今日のうちに届けることが決まった。
そう、プールの朝練が終わってすぐに行こうということになった。ちなみに時間は8時過ぎ。少し家で休みたい。
そこは私たちが住んでいるところから自転車で30分くらいのところだった。
葬祭場と言われるところで個人宅には見えなかった。
「本当にここであってるの?」
「あってる、あってる」
世那はきょろきょろと周囲を見ただけでどんどんその葬祭場の奥まで入っていった。
そして突き当たりの扉のインターホンを押した。なんでそんなところに一般宅にあるようなインターホンがあるのだろうか。
すると「どちら様ですか?』と言っておばあさんが出てきた。
その出てきた人に世那は写真が入った封筒をを渡して言った。
「旦那さんは自分の笑顔の写真がないことがよっぽど心残りだったみたいです」
弾かれたようにその人は封筒を開け、中の写真を見て泣き出してしまった。
「急だったんです。
いや、以前からお医者さんにあまり長くないと言われていたんですが、突然病状が悪化して、あっという間でした。
前から写真を撮られることが得意な人ではなくてこんな時になって、主人が笑っている写真がほとんどないことに気がついて…
ありがとうございます」
棺桶から見えたのは、確かにあおいからもらった写真と同じ顔のおじさんだった。
閲覧ありがとうございます。
こちらの小説は、このような行動を推奨するものではないことをご了承ください。
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