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プロローグ
目の前に広がる、一面の、青。
雲一つない青空。
太陽の光を反射して光り輝く青海。
「う〜っ、気持ちいい!」
少女は大きく伸びをして、心なしか海の塩辛さがのった空気を胸いっぱいに吸い込む。
「朝から元気だねぇ、結奈ちゃん」
声のしたほうを振り返ると、学校の正門前に警備服姿の老人が仁王立ちしている。
「高坂さん!おはようございます」
元気が良すぎるくらいの挨拶とともに、少女は勢い良く頭を下げる。
「うむ、おはよう」
挨拶を返した老人は、少女を凝視したまま動かない。
そう長くはない沈黙の後、耐えきれなくなったのから少女が訝しげに老人をみやる。
「な、なんですか?私、何か変ですかね?」
老人はまるで少女の声など聞こえていないかのようで、質問には答えなかった。
「そろそろかな……」
老人がそうつぶやいた瞬間。
少女の後頭部に何かが当たり、鈍い音を立てた。
後ろから殴られるような感覚。
脳が……揺れる……。
そこにはもう少女の姿はなかった。