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「エキシビションマッチ」

 開始の宣言と共に駆け出す、相手はメイソン先生だ。単純計算でも卒業生+学年の一年分剣術を磨いてきた方で油断はできない。何よりまい開始の宣言と共に駆け出す、相手はメイソン先生だ。単純計算でも卒業生+学年の一年分剣術を磨いてきた方で油断はできない。何より彼女の実力どころかパワーで押してくるタイプか技術で来るタイプなのかというざっくりとした戦闘スタイルすらも知らないため速攻あるのみだ。

 とはいえ、これまでの彼女の行動から推理するに恐らく技術タイプだ、だから数メートルの距離とはいえ加速した勢いも足したこの一撃で終わらせてもらう!


「貰ったあ! 」


 日頃の恨みも込めて思いきり剣を振り下ろす。それに対し先生が剣を差し込むもオレのパワーに押し切られこの謎のエキシビションマッチは即終了……とはならなかった。


「なかなかの……パワーじゃない……」


 苦しそうな声を出すも彼女の剣は見事にオレの剣を受け止めている。


「じゃあ、今度はこっちから行くわよ! 」


 その言葉を合図に次々と振るわれる彼女の攻撃を防ぐも、彼女の攻撃は一撃一撃が重く気を抜くと剣を落としてしまいそうだ。

 先生、見かけによらずにパワータイプなのか……なら対パワータイプ用の受け流す戦法に切り替えて。

 パワーを込めて振ると剣を繰り出すインターバルが僅かに遅くなる。また、攻撃もどこから来るのかが読みやすい、それを利用して即座に衝撃が少ない位置に剣を差し込み敵の消耗を誘い反撃の機会を窺う、これが対パワータイプ用にオレが編み出した戦法だ。しかし、彼女はいち早くそれに気が付いたようだ。


「やるわね」


 そう言うと剣を振ると見せかけて彼女は後方に下がる。剣技では不利と見てソウルでの勝負と来たか。それならオレも無効化ではなく全力でぶつからせてもらう。

 意気込んで光の翼を出現させようとした時だった。彼女の出現させたソウルに目を奪われる。それは、学園対抗戦の日にウォルバーストさんが繰り出した巨大な炎の剣『マキシマムパニッシャー』だった。

 その剣を見てようやく気が付いた、あのパワーによった剣技といいこのソウルといい彼女はウォルバーストさんを意識していたのだ。いや、ウォルバーストさんになろうとしている。そして、ここまでの展開は偶然かウォルバーストさんと剣を交えた展開と似ている、いやまさにあの時ソウルでぶつかろうとしていたらこうなっていた……という状況だった。


「先生もそれならそうと言ってくれればいいのに」


 思わず愚痴をこぼすと息を吸い込み今度は大きな声で叫んだ。


「行きます! 」

「来なさい、ガイト君! 」


 光の翼を出現させ地面を蹴ると宙に舞う。ずっと考えていたこの炎の剣との戦い、目指すはただ一点。ソウルではなく彼女だ。この剣は先端を折っても再生される恐れがあるため根元から立たねば勝利はない!


「『ライトニングスラッシュ』」


 加速して一気に距離を詰めると懐に入ると同時に彼女が剣を振り下ろす。振り切った半ばの所に剣を横にして飛び込む。

 ソウルとソウルの激突、模造剣のため映像とはいえ僅かに光っているオレの剣と先生のソウルが映像で可視化されるとともに強弱が判定され先生の炎を打ち破りオレの剣が彼女の剣とぶつかる。ソウルでは(まさ)ってる、あとはこのまま押し切ればオレの勝ちだ!


「貰ったああああああああああああああ」


 一気に勝負を決めようと渾身の力で剣を押す。


「負ける、もんですかああああああああ」


 負けじと先生も力を込めると信じられないことに剣は若干戻されたと思ったらその位置からピタリとも動かなくなった。

 まさか、これほどのパワーがあるなんて……でも、負けてたまるか! もう一押し!


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

「はああああああああああああああああああああああああああああああ」


 互いに力を込め叫ぶも剣はわずかに震えるだけで一切動かず永遠にこのままなのかもしれないと錯覚したその時だった。

 バキンッ! という剣が折れる鈍い音が突然この戦いの終わりを告げる。


「うわっ」


 バランスが崩れ勢い余って一回転した後に地面に仰向けで倒れる。すぐ真後ろで先生も倒れる音がした。


「し、試合終了! 両者剣が折れたためドロー! 」


 審判が鳴り響いたのを耳にして立ちあがるのをやめて横になったまま綺麗な青空を見上げる。


「はあ……まさか剣が折れるなんてね」

「オレは二度目ですね。一度目はウォルバーストさんです。ありがとうございました」

「別に、卒業生の皆からも頼まれたし当たり前のことをしただけよ」

「でも、先生本当に強いんですね……凄いです」

「そう思うなら、来年度は大人しくなってくれると有難いわね」


 冗談交じりに彼女が口にする。


「すみません、それは約束できません」

「そう……」


 観念したように彼女が微笑む。


「……と主役の私達を差し置いていつまでステージを独占しているのかしら? 」


 不意に反対側から声が聞こえたので顔を向けるとそこにはシェスティンさん達が立っていた。


「ガイト君らしいけどね」

「うん」

「ほら、いい加減起き上がりなさい」


 シェスティンさんが差し出した手に捕まり起き上がる。


「すみません。先輩方、改めて卒業おめでとうございます。そしてありがとうございました。お陰で悔いなく卒業式を終えることが出来ました」

「……思いきり卒業生のセリフねそれ」

「ハハハ、でも観ていて楽しかったし」

「うん、凄かったよガイト君」

「ありがとうございます……剣士になってもお元気で」

「ええ、ガイト君貴方もね」

「元気でね」

「また会おう」


 先輩達に手を振ってアーチを作るべく在校生の元へと進む。見るといつの間にかメイソン先生は立ちあがり既に在校生に指示を出していた。またドヤされないようにと足を速めた。

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