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「ディーネの実力」

 ディーネと向かい合うと両手で握った剣を前に出して構える。

「いつでもいいよ」

 オレがそう口にするとディーネは剣を引き抜くと高々と剣を掲げたかと思うとそのまま走り出してきた。見事に隙だらけだ。

 ……なるほど、これは一から教える必要がありそうだ。

「はああああああああああああ」

 ディーネが剣を振り下ろすのを確認するとその軌道に差し込むように剣を横に構える。

 ガアン! という音とともに剣が弾かれた。

「まだあ! 」

 すぐさま体制を立て直し左足に力を込めてから大きく振りかぶっての右上からの第二撃。

「やるな! 」

 同じく右上から剣を当てて再び弾き返した。

「はあっ! 」

 あれからどれだけの時間が経っただろう。彼女は額に汗を滲ませながらも止まることなくオレに剣を振ってくる。50は軽く超えている。それはどれも大振りで隙だらけな攻撃であったのだけれど、大振りであるにも関わらずこれほどまで連続でこちらを狙ってくるというのは成績表にある通りかなりのスタミナだった。

「おっと! 」

 これまで同様二本の剣が音を奏でた時だった。追撃がなく彼女は動きを止めたかと思うとその場に座り込んだ。みると大理石の床には幾つかの汗が落ちた跡が生まれていた。

「……休憩にしよう、疲れた」

 そう口にしながら体が熱くなったのだろうフレイムの象徴である真っ赤な服を脱ぎ黒いシャツ姿になるとパタパタと手で風を送る。僅かに目線を下にすると僅かな凹凸が視界に飛び込み思わず視線を逸らす。

「驚いたよ。凄いスタミナだ」

「……嘘」

 その声があまりに仰天した様子だったので彼女を見ると少し頬を膨らませながらもある一点に視線を向けていた。その視線を追う、彼女はオレの全く汗の落ちていない床を見ていたのだった。

「ああ、いやこれは……ほら、オレは防御をしていただけだからさ」

「……そういうものなの? 」

「そういうものさ、それにこう見えてオレも疲れているんだ。大賛成。少し休憩にしよう」

 例えバディだろうと実力をすべて明かす必要はない。それはあまりに離れているのを知ってやる気を喪失させてしまうのも不味いのだ。首を傾げる彼女を無理に納得させるとその場に座り込むと彼女が口を開く。

「……結局、ガイトに剣を当てることは一度も出来なかった。やっぱりガイトは凄い」

「コツを覚えればディーネでも簡単だよ。今日オレはそれを教えようと思ったんだ」

「どういうこと? 」

 彼女が興味津々に近付いてくる。それをみて思わず後ずさりをすると彼女がその分近付いてくる。どうやらそんなかわいい顔をして近付かれると照れるという男心は理解していただけない様だ。

「足だよ……」

 そこで言葉を切るとオレは立ち上がり剣を手前に構える。

「まず、剣を振るには両足が並んでいたら振りにくいからどちらかの足を前に出すだろ」

 説明しながら右利きなので右足を一歩前に出す。

「ここからさ、相手の足を見るんだ。手前に出した足に体重がかかっていたら上から、かかっていなかったら下から剣が来る可能性が高いんだ。だからそこに注意すればワンテンポ早く防御に回れる」

 そう言って剣を体重を右足にかけて右上、真上、左下と三回振ると次は左足に体重をかけて右下、左下、真横と3回剣を振る。

「仮に外れてもさ、ほら」

 今度は先ほどとは逆に右足に体重をかけて下から三方向、左足に体重をかけて上から三方向ぎこちなく剣を振る。

「……凄い、これなら、遅れても相手の剣を防げる」

 ディーネが目を輝かせて口にする。

「まあ、こんな感じでさ。ディーネはスタミナがあるから敵を一人引き付けて敵の攻撃を受け流して時間稼ぎをして欲しい。その間にオレが一人を倒すから、そしたら二人がかりで残った相手を倒そう。どうかな? 」

 コツと共に明日の作戦を説明する。すると彼女はパンっと両手を合わせた。

「……うん、足を引っ張らないか心配だったけど、それなら私にもできそう」

「よかった。頼もしいよ、それなら今から練習を始めよう」

「……うん」

 彼女が頷いて立ち上がると剣を構える。そうしてオレはひたすら剣を振りディーネはその剣を避け続けた。

「じゃあ、今日は明日疲れが残るとマズいからここで終わりにしよう」

「……うん、ありがとう」

 練習場の扉を開いたその時だった。

「おやおや神聖なる練習場で男女のペアが汗を流して何をしていたやら」

 ロビーにいたバーン達に声を掛けられる。

「何って練習だよ、オレには余裕なんてないからさ」

「それはご苦労なこった」

 バーンはそう口にすると食堂へと向かっていった。

「……ガイトも大変だね」

「まあ、悪い意味で有名になっちゃったからな。それにオレだけならまだいいんだけれど、ディーネも気を付けろな」

「……了解」

「さて、じゃあバーンが食堂にいることだしオレは大浴場に行くかな」

「……私もそうする」

 冗談交じりの言葉に頷いてくれたディーネに視線を向けると汗だくの彼女が目に入り思わず目をそらす。

 ……バーンの奴め、変に意識させることを。

「……どうしたの? 」

「いや、まあとにかく明日は頑張ろう」

 オレは彼女にそう声をかけると恥ずかしさを隠すために早歩きで部屋へと向かった。


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