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「二体目の魔人」

「おい、まさかこの流れはよォ……」

「恐らくヘルソルジャーだろうな、それに(また)がっているのはケルベロスか。それにあの剣はなんだ? あれほどの大剣は自前のようだがクリスタルが埋め込まれているのか? 」


 アントーンさんが分析をする、確かにあの自前のような剣にはソウルを発動することが出来るクリスタルが入ってはいなさそうだが、まさかヘルソルジャーはクリスタル無しにソウルを使えるとでもいうのだろうか?


「分からないことだらけなヘルソルジャーが、二人も襲ってきていたとはな」

「悔しいけれど、先生方が一人目に向かってしまわれたのを思うと理に適っている襲撃方法だわ」


 本当に悔しいことにヘルソルジャーの言う通りにするのが現状では最適かもしれない、いや待てよ……奴らの狙いが指輪なら一か八か上手くいけば……

 名案が浮かぶ、しかし悟られないように声を落とすように意識して口を開く。


「先生方には悪いけれど指輪は……」


 ガラスケースから指輪を取り出すとウォルバーストさんに手を掴まれた。


「何をするつもりだガイト」


 その時、ヘルソルジャーが叫びのような大声を上げる。


「貴様らに用はない。サタン様の力を封印したものを大人しく渡せ、そうすれば見逃してやる」

「……とヘルソルジャーの言う通り指輪を渡すんですよ。後ろにも何人も生徒がいるのでここで戦闘になるのは危険なので」

「確かに、悔しいがその通りだな。任せる」

「ありがとうございます。すみませんが御者さん、護身用に剣を一本いただけませんか? 模造剣しかないもので」

「安物で宜しければ……」


 と御者さんが出してくれた剣を礼を言い受け取ると準備完了、ドアを開けて外に出て今にも噛みつこうとするのを抑えているケルベロスをヘルソルジャーと向き合う。


「これが指輪です」

「なるほど、ぼんやりとだがサタン様の力を感じる。さあ、それを渡してもらおう」

「その前に、本当に約束してくれるんだな? 」


 指輪を持っていた手を握りポケットに突っ込む。


「約束しよう、無益な……いや正式には即座に降伏をする闘志なき者には興味がない」

「そうか……じゃあ、諦めずに拾いに行きな! 」


 ポケットから手を出すと握っていたものを体を捻らせて右にある森目掛けて投げる。


「貴様、なんということを」

「そら、早く追わないとどこに落ちたか分からなくなるぞ」


 声をかけるとともに馬車へと戻ると「出してください」と御者に言い、伝わることを信じて窓から手を出し「馬車を走らせろ」というメッセージを込めて前後へと動かす。程なくして馬車は走り出した。


「よく無事に帰ってきたなァ」

「ああ、指輪は残念だが命には代えられない」

「ところがそうじゃないんですよ」


 アントーンさんにそう言うと、再びポケットの中へと手を突っ込み中のものを掌に収め彼等に見せる。


「指輪? でも、貴方さっき投げて」

「昔よく子供達にやっていたやつです。ポケットに手を入れた時に戻して代わりに先ほど見せたネックレスのペンダントを取って投げました。微弱でもサタンの力とやらが残っていたら騙されてくれるかなと期待して賭けてみたら上手くいって良かったです」

「なるほど、あんなでかいのの前でやってのけるなんてやるじゃねえか」

「でも待って、それじゃあ偽物と分かったら追いかけてくるんじゃ」

「平気ですよ」

「どうして? 」


 指輪をシェスティンさんに渡すと立ちあがりドアへと向かい手をかける。


「今からオレが何とかしますから」


 そう言い終えるや否や光の翼を出現させるとドアを開け走る馬車から飛び降りると全速力で来た道を舞い戻りヘルソルジャーを探す。すると恐ろしいことにもう偽物と気が付いたのか最後尾の馬車を追いかけていた。


「貴様、よくも」


 ヘルソルジャーの目が鋭くオレを捕らえる。


「見抜けていなかったようだな、何も! 」


 空中から加速して勢いよく敢えて直線的に斬りかかる。


「ふん! 」


 ヘルソルジャーがカウンターとばかりに大剣を一刀両断せんと真上から振り下ろす。

 ……かかった!

 即座にオレは直角に移動し剣を躱すと再び急降下をする。最初から狙いはヘルソルジャーではなくこのケルベロスだ。まずは相手の足を叩く!


「させぬ! 」


 作戦成功を確信し反応できていないケルベロスに剣を振り下ろした時、彼が勝ち誇り振り下ろした剣の角度を斜めにずらしオレ目掛けて剣を振る。


「くっ」


……作戦失敗。攻撃を中断しヘルソルジャーの攻撃を避ける。


「でもこのままじゃ終わらない……ぞ! 」


 ヘルソルジャーを通り過ぎるとこちらに向けて揺れている尾のところまで飛び剣を振る。

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 尾は狙い通り一刀両断されケルベロスはその痛みに立ち止まると雄たけびを上げる。何とか足止めにも成功した。


「貴様、素直で面白みのない男かと思えばなかなかに(したた)かな男だな」

「さっきはどちらかというと猫を被っていたからな」

「なるほど、先程の。ケビンとは異なるが飛行能力といい興味深い。だが、もう貴様の動きは見切った。それに我がペットも怒りに燃えているが一人でどこまでやれるかな? 」


 ケルベロスがオレを威嚇する。確かに息は荒々しく怒っているようだ。

 だが、ケルベロス。尻尾くらいでどうした。お前はこの後それ以上の苦痛を味わって葬られるんだ。 そしてケルベロスを葬った次はヘルソルジャーを倒す!

 と負けじと睨み返したその時だった。


「ほう、援軍か。そこまで考えていたとは……」


 ヘルソルジャーが感心したように言う。

 はったりか? いや嘘にしてはあまりにも間が抜けている……

 警戒しながら背後を振り返るとそこにはウォルバーストさん達の姿があった。


「皆さん、どうして」

「まァ、シェスティン先輩のソウルでフワッと飛び降りたらあとはよォ」

「恐らく、そういうことを尋ねているのではないと思うぞ」

「俺達がチームだからに決まっているだろう」

「まあ、そういうことよ」


 四人が剣を構える。


「学園に帰るまでが対抗戦だ。さあ、ガイト! このヘルソルジャーをぶっ倒して皆で帰るぜ」

「……はい! 」


 彼等に続いてオレも剣を構え強く握りしめた。

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