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「最終戦」

「これが俺の応えだ」


 戻ってきたウォルバーストさんがなんなくオレ達に微笑みかける。相手がどんなことをしてきても正々堂々と戦い勝利をするというのが彼の応えのようだ。

 ……立派だなあ。

 先程まで怒っていた自分が本当に小さく見えた。


「今度はガイトの応えを……ルドラ魂をみせてくれ」

「頼んだぜェ大将! 」

「はい、行ってきます! 」


 立ちあがると会場へと向かった。


 ~~

 目の前に立ちはだかったのは緑ズボンの男性、恐らくトリに来たのだから三期生なのだろう。


「おいおい、光の剣士とはいえ一期生が大将とは。一戦目はお得意のモンスター相手に何とか活躍したようだがあんなの俺のソウルの前じゃカモに過ぎないぜ。雑魚を出す前に勝つって当てが外れちまったとは可哀想になあ」

「挑発行為は慎むように」


 見かねた審判が注意を促す。しかし、自分でも無意識に分析していたように三番手は切り札の人物が出るであろうポジションだろうにオレがいるというのも驚くべきことだ。


「それでは三戦目ルドラ学園、ガイト ノーブル学園、ブライアン、試合開始! 」

「そら、これでどうかな『クリアランス』」


 宣言と同時に放たれる斬撃、それは三期生なだけあってフウトの攻撃よりも速く威力もあることが伺える。あまりの速さにもう右左の回避は間に合わず下だと体制を立て直すのに時間がかかるため追撃を免れない。それならば答えはただ一つ、上だ。


「『光の翼(ライトウィング)』」


 光の翼を纏い宙へと跳ぶ。斬撃はオレの真下を通り過ぎた。それを見届けるや否や空を駆け相手へと向かう。


「いくら浮いているからって近付くと当たりやすくなっちまうんだぜ『クリアランス』」


 得意げに次々と放たれる斬撃をひらひらと躱しながら進む。そして遂に彼の元へと辿り着き剣を振ろうとしたその時、彼の口元が僅かに動いた。


「……ぺっ」


 ……本当にやってきた。

 予定通りオレは瞬時に急降下し唾を避けると懐に入り込み。


「おらあっ! 」


 思いきり足を振り上げ股間を蹴り上げた。


「うおっ! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 悲痛な叫びが会場に響き渡る。


「え、えーとルールではソウルもしくは剣を相手に当てた選手が勝利となるのでそれでは勝利ということには……」


 審判も困惑の表情を浮かべる。


「ど……どういうつもりだ……てめえ」


 蹴りが強すぎただろうか? ブライアンが股間を抑えながら尋ねる。


「どういうって、いや最後の学園対抗戦の思い出が唾吐いて勝利で終わり! だなんて可哀想だと思いまして。そんな真似するくらいなら正々堂々と戦って負けた方がまだスッキリしませんか? 」

「ななんだと……俺達は勝利こそ絶対なんだ。そのための仮定なんて……問題ねえんだよ! 」


 剣を握る手に力がこもるのと同時に再び口元が動き唾が発射される。身を翻して避けると立ち上がり斬りこもうとする彼の股間に再び蹴りこんだ。


「おごっ……ぐうう……」

「唾を吐くっていうのはですね。来るとわかっていれば口元を見れば大体分かるんですよ。そういうの抜きで勝負しませんか? 」

「くそ、くそがあああああああああ『クリアランス』」


 痛みよりも怒りが勝ったのか彼は剣を振り斬撃をあらぬ方向へと放つ。速度も先程よりも遅い。力がもうないのだろうか?

 そんなオレの疑問とは裏腹に勝ち誇って彼は言う。


「ハハハハハ、見ていていいのか? 俺が使っている剣は実物の剣だとしたら? 早く何とかしないよ死人が出るぞ」


 なるほど、確かに斬撃はルドラ学園の観客席に向かっているしバーンの時と異なり剣を打ち合ったりはしていないから彼の言葉が嘘か分からない。実物の剣ならば映像ではないため直撃したら大惨事だ。だが、先ほどの初撃が何もなかったことと実際にそんなことをしたら大問題なことを考えると、それを聞いたオレが慌てて止めに行ったところを狙うつもりなのだろう。


「『インバリード』」


 ソウルで剣を光らせる。するとたちまち彼の斬撃は消えてしまった。


「……な」


 驚く彼の背中を踏みつける。


「……が」

「もういいよ、ガッカリだ。ノーブル学園ってそんな盗賊の真似事みたいなことしか教えない学園だったんだな」


 剣を下ろし背中に照準を合わせる。これを当てて試合終了だ。

 そう考えた時だった。



「なめ、るなあああああああああああああああ! 」


 突如彼が体を回転する。演技ではなく心底失望し脱力していたため彼はいとも簡単にオレの足から逃れ立ちあがった。


「俺達を舐めるなあああああああ」


 激高した様子の彼はそう口にするとこちらに向かってきた。


「お前なんてな、こんなことしなくても本気になればイチコロなんだよ! 」


 そう言いながら振り下ろされる剣、そして彼の動きには確かに隙が無い。かと言ってオレも負けるわけにはいかない。


「なんだよ、ちゃんと強いじゃねえ……か! 」


 再び手に力を籠め剣を振るい剣を弾いた。


 ~~


「す、すごいことになってきました。試合開始から数十分、未だに決着がつきません」


 司会が声を上げるとともに観客を歓声を上げる。残念ながらこの数十分、隙という隙は見つからない。となれば後はスタミナ勝負に持ち込むかそれとも……


「へっ、剣の腕には自信あったんだが、一期生と互角なんてな。だが、これまでだ」


 彼は一気にオレと距離を取り剣を後方へと回す。

 そう、ここまで剣での勝負がつかないのなら後はソウルでの勝負だ。


「まさか、奥の手を使うことになるとはな。でも、楽しかったぜ『ギガンティックストーム』」


 瞬間、彼が後ろに回していた剣を勢いよく振り下ろすと巨大な風圧がオレへと向かってくる。光のソウルなら無効化できる。だが、見ているウォルバーストさんのためにも、本気で向かってきてくれた彼のためにもこの一撃から逃げるわけにはいかない。

 オレは光の翼を出現させると巨大な一撃に向かって思いきり突っ込む。


「『ライトニングスラッシュ』うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 」

 

吹き飛ばそうとする風圧を輝く剣で受け止め押し返そうと力を籠める。すると、映像故かオレの方がパワーが本当にあったのかオレは彼の攻撃を真っ二つに裂きながら徐々に前進していきやがて目標の彼まで辿り着くと剣を振り下ろす。


「……マジかよ、さっきみたいにかき消してくるかと思って斬りこむ準備をしていたのに、突っ込んでくるなんてよ」


 その言葉と共に剣を受けた彼は両膝をついた。

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