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「三回戦」

「すみません、負けてしまいました」


 三回戦の会場へ向かう道中、合流したアローさん達がオレ達に謝罪をする。


「いいってことだ、まだ負けたわけじゃねえんだから」

「そうよ、見える範囲ではあれが最善の行動だったわよ」

「まァ、あのアローが頭を下げてるって状況は悪かねえなァ」

「ヴィルゲル……」

「あとは任せてください。必ずウィニングリングを持ち帰ります」


 まあ、オレは出るか分からないけど。

 と口にしながら心で呟く、こういうのはきっと勢いが大切だ。だというのに彼はオレを見て真剣な面鞭で

「頼んだよ」と口にした。


「それではみなさん、よろしくお願いします。微力ながら観客席で応援させていただきます」


 そう言葉を残して彼らは去っていった。


「さて、残念ながらこの五人から出られるのは三人だけだが、誰か立候補はいるか? 」

「立候補者ってよォ……光の剣士と三期生二人で決まりじゃねえんですかァ」

「ああ、悔しいがそれが最良の選択だろう。我々は辞退させて頂く」


 二期生の二人がそんなことを口にする。確かに対人となると光のソウルは強力でオレの得意な試合形式だ。しかし、オレにとって不利なドラゴンとの戦いで活躍の場を設けてくれた二人を押しのけて出場するというのも気が引けた。


「いえいえ、二期生から誰も出ないはマズいのでオレが辞退しますよ」

「それには及ばないわ、ワタシは出場しないもの」

「え? 」

「出場しないって言ったのよ。さっきの試合でケガをしちゃって剣が持てないの」


 そう口にして彼女が腕を抑える。


「大丈夫なんですか? 」

「ええ、平気よ。私は一足先に観客席へと向かうから四人で決めて頂戴」


 彼女は手をひらひらと振ると観客席へと向かっていった。


「こうなると余計に勝たなきゃいけなくなったな」


 ウォルバーストさんの言葉にオレ達は頷いた。


 〜〜

 話し合いの結果出場選手はオレとヴィルゲルさんとウォルバーストさんということになった。


「ルドラ学園、一回戦選手の入場を」


 第三修練場のフィールドの端に用意された椅子の前に立っているオレ達に係員の男性が声をかける。


「じゃあここは一期のオレが」

「いいや、オレが行くぜェ」


 ヴィルゲルさんがオレの肩を叩く。


「まァ、オレが後輩のために一勝稼いできてやらァ、いいよなあァ先輩ィ」

「ああ、思いっきりやってこい! 」


 とウォルバーストさんの後押しされヴィルゲルさんが会場へと向かう。


「宜しいんですか? 」

「やる気があるのはいいことだ」


 対するノーブル学園側からは赤いズボンの生徒がこちらへと向かい合った椅子からフィールドの中心へと向かっていく。


「フレイムとアイスの戦いか」

「そうなると溶かされてしまうヴィルゲルさんが不利なのでは? 」

「いや、そうでもねえ」


 ウォルバーストさんがきっぱりと否定する。


「それでは、ルドラ学園、ヴィルゲル! ノーブル学園、ベンの試合開始! 」


 その直後に始まる試合開始の号令、それと同時に両者ともに動き出した。


「良い判断だな、相手は三期生だ。模造剣により地面に張り巡らされる氷は映像に過ぎないこと、フィジカルの差とソウルの強さからして接近戦に持ち込んだか」


 ウォルバーストさんが絶賛するも納得がいかなかった。というのもやはり炎と氷のバトルだと氷が不利だと思うからだ。

 そんなオレの心配とは裏腹に接近した二人の剣がぶつかる。哀れにもヴィルゲルさんの氷を纏った剣は炎の剣に溶かされ……とはならなかった。彼の剣は溶かされはしたがそれは数ミリほどで逆に相手の剣の炎を一部消滅させたのだ。


「これは……」

「見ての通りだ、例え炎が氷を溶かせるとしても僅かな時間ですべて溶かせるわけじゃねえし逆に凍らせられるなんてこともありえる。勝ちたいってソウルの強い方が勝つんだ」


 ヴィルゲルさんの怒涛の攻撃が続く。模造剣の欠点はあくまで映像なため実際に氷で固めた剣で剣を叩いた時のダメージとかは再現できないところだが、彼はそれをもろともせずに剣術でも相手を翻弄していた。

 そうして遂に壁際へと追い詰めあと少しで勝てる、といった時だった。


「ん? 」


 ふと、ヴィルゲルさんの動きが不自然に止まった。それは相手にとっては大きな隙でそれを逃す相手ではない


「ウグァ……」


 模造剣とはいえ十分な硬さのある剣だ、腹に思いきり剣の一撃を受けたヴィルゲルさんは倒れてしまった。


「勝者、ベン」


 無情にも審判が勝敗を告げる。


「ヴィルゲルさん! 」


 オレ達は急いで彼の所へと向かった。

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