「新しい力」
クラス対抗戦顔合わせの夜、オレはいつものようにディーネと寮の修練場で剣を打ち合っていた。
「よし、じゃあ今日はこれで終わりにしよう。ディーネは先に帰っていてくれ」
「……ガイトは? 」
当然のように尋ねてくるディーネ、それもそうか。観念してその場に座る。
「光のソウルの戦法を考えたい。今日今のままじゃダメだって言われちゃってさ、部屋でも考えていたんだけど場所を変えたら何か閃くかなって」
「……そっか」
「ああ、そういうわけだから。先に帰っていてくれ。それとも……もしかして今日はいつもより質が落ちていたか? 」
今日の修練はソウルのことを考えていたため時間はいつもと変わらなくても質が落ちていて彼女が不満を持ったのだろうかと不安になり尋ねる。
「……そんなことはなかった」
「良かった」
安心していると彼女が何故かオレの隣に座り込む。
「……私も付き合う」
驚いた。まさかここまで付き合ってくれるとは思っていなかったからだ。とはいえ、元がフワフワした考えだったため具体的な方法があるわけでもない。しかし、このまま彼女を待たせてただ時間が経つと汗をかいているため体が冷えて風邪をひいてしまう。とにかく何かしなくてはと口を開く。
「助かるよ。じゃあ……光っていって何が浮かぶ? 」
「……光? 」
咄嗟の思い付きを顎に手を当て真剣に考えてくれている様子の彼女に心を痛める。オレも考えよう。光と言えば……
「……明るい」
「そうだな、一気に輝かせれば目くらましが出来る」
しかし、求めていた戦法ではない。
「掴めない……も違うな。それじゃダメージが与えられない」
頭を掻く。
やはりなかなか出てこないものだ。
と悩んでいると彼女が口を開く。
「……速い」
「速い? 」
「うん、光はすごい速いって聞いたことがある」
「そうなのか」
修練場を照らす松明を見つめる。あの光は高速で移動をしているのだろうか?
「待てよ……松明を持ってるときとかさ。光って落ちたりしないよな」
「……うん、松明を落とさない限りは……」
「それだ! 」
模造剣を手にして思わず立ち上がると目を瞑り意識を集中する。イメージするのは……光の翼!
瞬間、剣が輝きその光が体を伝い背中へと移動する。
思った通りだ。他のソウル同様、光も意図的に体に纏うことが出来た、そして他のソウルと異なる点は攻撃には使えないため自傷の心配もないということだ。
「……凄い」
「いや、驚くのはまだ早いぜ。本番はここからだ。いくぞ! 」
一気に地面を蹴る。するとたちまちオレの体は跳びあがり……
「うおっ! 」
「……ガイト! 」
そのまま地面に激突しそうになるのをディーネに受け止められた。
「……大丈夫? 」
「ああ、ありがとうディーネ」
間一髪の所で助けてくれた彼女に礼を述べる。
空を飛ぶにもコツがいるということかそれとも翼のイメージが足りなかったか……とにかく失敗だ。でも、これはとても大きな一歩だ。これを使いこなせるようになれば獣の大群に襲われても空を飛んで立ちまわることができるのだから……
「よし、今回はここまでにしよう! これを絶対モノにして対抗戦で大活躍してやるぞ」
ガッツポーズを作る。すると彼女もそれを見て「うん」と首を縦に振った。