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「フレイム寮」

  バディ登録を済ませたオレ達は寮へ向かうべく学園内を歩いていた。


「……フレイム寮は確か学園を出てから右に曲がって数十メートル歩いてから武器屋を……」

「ディーネはこの街に来るの初めて? 」


  学園でもらった地図を片手に目印と実際の建物とを見比べている様子を見て尋ねる。


「うん」

「そっか、ならオレが案内するよ。この街に長いこといるから」

「……ガイトはこの街にずっと住んでるの? 」

「数年位ね、ここの孤児院で今日まで暮らしていたんだ」

「……あっ、ごめん」


  不意に彼女が謝罪をする。

  ……しまった、出会って間もないのに孤児院とかいうのは気を遣わせちゃうかな

  不安になりながらも空気を変えようと口を開く。

「いや、謝ることじゃない。あそこでの生活は楽しかったしから。元剣士の人が凄い強くてさ、いろいろと教えてもらったんだ」

「……それで、アロー……さんにも勝てたんだ」

「うん、とはいえまぐれかもしれないけど。ディーネも家族の人に教えてもらっていたりするの? 」

「…………うん」


  長い間の後に彼女が頷く。

  ……もしかして、ディーネにも何か事情があったのだろうか? だとしたら無神経なことをしてしまった。


「ごめん」

「……ううん、気にしないで。大したことじゃないから」


  思わず謝罪の言葉を口にすると彼女が答える。


「まあ、そういうわけでさ、オレはこの街には結構詳しいんだ。街にある4つの全部の寮の場所も分かる」

「……すごい」

「ガイアの寮に行こうか? 」

「……それはまた、今度で」


  暗くなるのが嫌で話題を変えようとすると彼女が乗ってくてくれたことに感謝しつつも彼女の手を引いて歩き出した。



  ~~

  それからしばらく街を歩いて目的地に到着したオレは一旦足を止める。


「着いた、ここがフレイム寮だ」

「……大きい」


  ディーネの言う通りフレイム寮は2つの男女それぞれの個室が存在する建物とそれを結ぶ1つの食堂に稽古場がある建物があり、その3つが繋がっている巨大な赤い建物だ。


「オレも初めて見たときはビックリしたよ、建物が燃えてる……って」


  そう口にしながらオレ達は建物目掛けて再び歩き始める。徐々に大きくなる建物からディーネも初めて見たオレのように炎を連想したのだろうか? 握っている手に力が込められていくのが感じられた。


「でもこの建物の炎を意識した構造、欠陥じゃないか? 」


  オレが口にすると彼女はクスリと笑った。その反応を見て安心しながら左手を封じている荷物を地面におろしいよいよ辿り着いた木製の寮の入り口の取っ手に手をかけた時だった。


「おかえりなさ~い」


  勢いよく迫ってきた扉をたまらず右方向へと躱すと全身真っ赤な服を身に纏った女性が姿を現した。


「……大丈夫? 」

「危ないところだった」

「あら、ごめんなさい。人影が見えたものだから迎えようとしたら、遅かったみたいね」


  申し訳なさそうに口にする女性、その姿はどこかで見慣れた様子だった。どこで会ったのだろう?


「あら、ガイトさん。私です、あの入学試験の時の受付の! 」


  言われて思い出す。そうだ、彼女は今は赤い服に身を包んでいるけども紛れもなくその姿は試験の時、正装で受付をしていた女性だった。


「ご無沙汰してます」

「フレイムにしたのね、嬉しいわ。これから沢山サポートしていくから。私は寮長のイム。宜しくね」


  満面の笑みを浮かべて口にするイムさん、その口ぶりから察するにこちらの事情は全て把握してくれているようだった。


「そちらの方は? 」


  彼女がひょっこりとディーネに目を向ける。


「彼女はディーネです、今度の大会でバディを組むことになって」

「……よろしくお願いします」

「まあまあ、ディーネちゃん。宜しくね、それにしても隅に置けないというか。初日なのにもう手をつないでくるなんて随分と仲が深まったのね」

「……え」


  言われてディーネが俯いて手を放す。ここは勘違いされないためにも説明をしておいた方がいいだろう。


「違うんです、道に迷わないようにと手を繋いでまして、いや違う初めは教室でディーネが」

「……ちょっ、ちょっとガイト! 」

「ふふふ、仲がいいのはいいことだわ、お姉さんちょっと妬いちゃうけど」


  イムさんは何とか事情を説明しようと記憶をたどりながら説明をするオレと慌てているディーネを見ながらそう口にすると早歩きで数メートル間隔で存在する3つある扉のうちの左側に入ったかと思うとすぐに両手に何かを握りながら戻ってきた。


「そんな仲の良い2人にお姉さんからのプレゼント」


  イムさんはそう口にすると左手に握っていたものをディーネに、右手に握っていたものをオレに手渡す。それは黒いカギで銀色で数字で「309」と番号が記されていた。

「2人には同じ部屋番号の鍵を進呈しまーす。でも、部屋は男性寮と女性寮で別々よ」


  上機嫌で説明するもくぎを刺すようにそう付け加えると左側の通路を指さした。


「あちらが男性寮に続く通路で反対側が女性寮ね。そして……」


  左側、右側と順に向けられていた手が今度は3つあるうちの真ん中の扉に向けられる。


「あの扉を開けると練習場。結構広いから心配はないと思うけど仲良く使ってね。それから……」


  彼女が右側の扉に手を向ける。


「あそこが食堂。学園がお休みの日のお昼以外は私とお手伝いさんで料理を作るから残さず食べてくださいね。それからさっき私が入ったところが私のお部y……管理室で不安なら鍵を預かっているわ、そしてお風呂はそれぞれの寮の二階にあってお手洗いも……」

「……じゃあ、何かわからないことがあったらいつでも呼んでね。私は管理室か食堂にいるから」

「「ありがとうございます」」


  一通り説明を終えこれから料理を作るのだろう、食堂へと向かっていくイムさんにお礼の言葉を投げかけるとディーネと向き合う。


「さてと、早速で悪いんだけれど明日早くも第1戦があるから一度部屋に荷物を置いたら模造剣を持って練習場に来てもらってもいいかな? お互いに実力を知っている方が有利だと思うから」


  早く寮にたどり着き恐らく上級生もいないであろう今しか練習場を広々と使えるチャンスはないだろう。問題は、このハードスケジュールをディーネが受け入れてくれるかだけれど。

  威圧的にならないように微笑みながら彼女の返事を待つ。


「……分かった」


  オレの提案を彼女があっさりと承諾(しょうだく)してくれた。


「ありがとう、それじゃあまたあとで練習場で会おう」

「……うん」


  約束を交わすとオレは左へ、ディーネは右の通路へと向かった。

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