「洞窟での駆け引き」
陽が沈んでしまった中、ディーネのソウルで炎を纏った剣を松明代わりに洞窟へと向かう。
「ところで、作戦を立てなくてもいいの? 」
ジェシーが口にする。
「作戦か」
三人を見る。これまでとは違って仲間がいて相手は一体で未知の敵だ。そうなるとどう連携するか等の作戦は必要なのかもしれない。
「……チラッと見えたけれどヘルソルジャーは鎧があるから一切避ける素振りは見せてなかった」
「恐らく、それがカルロスさんとの剣の技術の差を埋めたのだろうな。とはいえ、ガイトがそれを無効化できると知られるのはマズい、切り札としてギリギリまで温存しておこう」
とフウト。
「確かに、逃亡をされるとなると面倒だ」
やはり、作戦は必要そうだ。といってもフォーメーションとかを今から練習したらいつになるかは分からない。オレがソウルを使い解除したところを三人が三方向から襲う。そんなシンプルかつ最適であろう策が洞窟内故に行えないのがもどかしい。何か手はないだろうか?
「そうだ、ディーネさんのフレイムをボクのウィンディで飛ばせないか? 」
「……やってみよう」
二人が丁度十メートル程先にポツンと岩がある場所で立ち止まり頷いて見せる。
「……はっ」
ディーネが剣に纏った炎を大きくしひと振りをする。
「そこだ! 」
剣の軌跡に残る炎目掛けてフウトが風を纏った剣で跳ぶ斬撃を放つ結果大きな炎は後押しされ風を燃やしながら対象目掛けて進んでいく。その結果を見届けるべくオレは全速力で駆け出した。風を切り進む炎を追いかける。
……速くなったな。
以前よりも一段と速くなった斬撃を何とか追い抜くと目標地点の真横に立つ。
ドゴォン!
炎を纏った斬撃は消えることなく岩に命中し拳ほどの穴を作り上げた。
「射程は十メートル以上か……」
「大成功だ」
「そうか」
「……でも、岩は壊せなかったみたいだけど良いの? 」
「ああ、上出来だよ」
「盛り上がっているところ悪いのだけれど……それ、ヘルソルジャー相手に効果あるのかしら? 」
ジェシーの突っ込みに一瞬の沈黙。
「確かに……相手は無敵と言っていい程強靭な鎧だ。これでも意味は……」
「無敵か……でも少なくとも一つは意味がある」
三人の視線が集まる。
「あいつが入った洞窟に打てば炎で中の様子が分かるし上手くいけば外に出てくるかもしれない」
「なるほど、出てきさえすれば」
「……ガイトが鎧を無力化して四人で攻めることができる」
「そういうことだ」
「なるほどね、それなら儲けものね」
ジェシーも渋々頷く。確かに相手の動き頼みで作戦と呼べないかもしれないが今はこれしか思い浮かばなかった。いや、案外自分一人が関与しない作戦で拗ねているってことも? そうなると何か彼女が活躍できる方法も考えた方が……
「あっ! 」
思わず声を上げる。
「どうしたのよ急に」
「いや、もしこの方法で出てこなかった場合はジェシーがカギになるかもしれない」
その言葉を皮切りに思い付きの考えを口にした。
~~
目的地の洞窟は高さ2.5メートルで人一人が入れるくらいの穴がぽっかりと開いていた。警戒しながら近付くも中はそこそこ広いようで入り口付近で待ち伏せているようではなさそうだ。
「それじゃあ、二人共頼む」
「「『フレイムランス』」」
二人が頷くと剣を構え斬撃を燃やして飛ばす。洞窟内は直線の用で炎は数メートル進んだのち鎧が見えたと思った直後に消滅した。
「直線のようだな」
フウトが呟く。剣を構えて数秒待つも出てくる気配がない。
「そして、出てくるわけでもないのね」
「じゃあ、行くしかないか。何かあったときのためにジェシーはここで待機していてくれ」
「分かったわ」
と残念そうに口にしながらも顔には笑みを浮かべてウインクをする彼女を残してオレとディーネとフウトは奥へと向かった。