「ヘルナイツの実力」
高く跳びあがり剣を構えこちらに向かってくるヘルソルジャーを見つめ剣を構える。
ヘルソルジャーがどんな戦法でくるか分からないけれど、もう光のソウルを発動するべきだろうか? しかし、そこまで器用でないため発動したらその間は他の人のソウルも無効になってしまう。カルロスさんが何かを考えているとしたらその作戦を無駄にすることになってしまう。
「ガイト君、ここは任せて欲しい」
彼の言葉に意思の疎通が出来たことに安堵しながら「はい」と返事をする。
それなら今のオレにできることは一つだ!
ヘルソルジャーに目を凝らす、ヘルソルジャーは何かしらソウルを使用した戦法を繰り広げてくるとの話だ。今のオレにできることは戦法を見極めることだ。
「『大地の怒り』」
カルロスさんのソウルにより土煙とともに地面から大きな岩が出現し目の前に迫ったヘルソルジャーの姿が遮られたかと思うとドン! と衝撃音が響き渡る。
ヘルソルジャーは予想以上に速いカルロスさんの攻撃に反応すら出来ずに激突……やったのか?
余りにも呆気ない最期に半信半疑になったその時だった。
ドォン!
「な! 」
けたたましい音とともに岩がパラパラと降り注ぎそれと同時に影が素早くオレの前を通り過ぎる気配がした。
……まずい、奴の狙いは。
「カルロスさん」
土煙で見えない中で彼の名を口にする。次の瞬間、フォン! と風を切る二本の剣の音。そしてキィン! という音とグサッという音が聞こえた。
なんだ、オレが来た意味がまるでないじゃないか。
カルロスさんは防具を身に纏っていた。ということは一方が彼の鎧が剣を弾く音でもう一方はヘルソルジャーを貫いた音だろう。勝利を確信したオレは砂煙というカーテンが晴れる瞬間を今か今かと待った。
……しかし目にしたのは予想外の光景だった。
目の前には予想に反して禍々しい鎧を纏ったヘルソルジャーの剣で鎧ごと体を貫かれているカルロスさんの姿があった。
「残念だったわね、この鎧を破ったものは未だにいないの。といっても、鎧を見せずにこうするのは意地悪だったかしら」
その言葉通り意地悪く笑うヘルソルジャー。
……ならば今すぐ、笑えなくしてやる。
剣を強く握りしめ近づこうとしたその時だった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお! 」
カルロスさんの腕が動き地面に勢いよく剣を突き刺したかと思うと次の瞬間、地面が真っ二つに割れ先端部分に立っていた二人が真っ逆さまに落ちていく。
「あなたまさかあの子達を……」
「すまなかった皆……どうか無事に逃げてくれ……メイソン先生にもす……」
無慈悲にも彼が言葉を紡ぐよりも先に時間が来たようだ。ズシン! と岩が地面に落下した音が響き渡る。
「これがヘルソルジャーか……」
「カルロスさんのソウルがあんなに簡単に……」
「……うそ」
「カルロスさああああああああああああん! 」
ギリギリまで近寄り岩だらけの山に向かって叫ぶ、あれだけの傷だ、受け身も取ることができず答えがないだろうということは分かっていた。
「カルロスさああああああああああああん! 」
しかし、返事が出ることを祈って叫ぶ。返事はない。しかし、岩を押しのけた姿を現した者があった。鎧を纏ったヘルソルジャーだった。ヘルソルジャーはオレ達を見上げる。
「彼に免じて今回は見逃してあげるわ。それじゃあね」
それだけ言うと駆け足で洞窟の中へと入っていった。
「オレがソウルで無効化しておけば! 」
こうなるだろうとは思っていただろうけど改めて直面すると悔しくなって拳で地面を作る。
「……ガイト、やめて」
ディーネがオレの手を掴む。それを強引に祓った。
「オレの判断ミスだ。オレが殺したようなものじゃないか! 」
「それは違う」
フウトがキッパリと言う。それでオレは余計惨めな気持ちになった。
「気休めはやめてくれ」
「気休めなんかじゃない。あの人のソウルのタイミングは完璧だった。ヘルソルジャーの出方を窺いながらも最大のダメージを与えられているように計算された攻撃だった」
「ええ、貴方がソウルを発動していたら途中で止まった岩を足場として利用されて、この中の誰かが死んでいたかもしれないわ、だから自分を責めるのはやめなさい」
「そう……だな」
歯を食いしばって拳を止める。どうあれここで悔やんでいても彼はもう戻ってはこないのだ。それよりも今は目の前のことを考えなくては……
「悪かったディーネ、乱暴に祓ったりして。ケガしてないか? 」
「……うん、大丈夫」
「良かった」
まずはディーネへの謝罪、傷がなかったようで安心した。次は……
「これから、どうする? 」
「どうするって乗り込むか逃げるかってことかい? 」
とフウト。
「そんなの決まっているじゃない、こっちには光の剣士がいるのよ! カルロスさんには悪いけれど、私達を無視したことを後悔させてやりましょう」
「……うん、これ以上被害を出したくもない」
「よし、決まるだな。それじゃあ行くか、カルロスさんの仇討に」
満場一致で方針は決まった。必ず倒すと決意を胸にオレ達は洞窟へと向かった。