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「出陣」

「ヘルソルジャー……」


 うすうす勘付いてはいたけれどやはりそうだった。かつて魔王の部下にされたというヘルソルジャーが未だに存在しているかもしれないということだ。それならば対抗策として魔王達を苦しめた光の魔法が使えるオレを連れていきたいというのも合点がいく。


「あくまで可能性の話だ。順を追って話そう」


 カルロスさんは語り始めた。彼の話によるとここ数日、ここから離れた100キロ程離れた町で数人の死者が出たらしい。調査によると殺されたのは年配者ばかりで時には家に押し入るという強引な手段だったらしい。報告を受けて数人の剣士を向かわせたところ全員が死体となって発見され、事態を重く見た騎士団は更に多くの剣士を派遣した。ところがその翌日その剣士達ですら死体となって発見されたそうだ。そこで敵はヘルソルジャーなのではないかという推測に至り強行を仕掛ける今夜、戦力としてオレに白羽の矢が立ったらしい。

「学園長から能力は既に聞いていて許可も君次第ととってある。君は無効化できるギリギリの距離からソウルを発動してくれればいい。あとは我々で対処する」


 悪くはない条件だ。オレのソウルの無効範囲はディーネとの検証によると五メートル程、その特等席から現行剣士達の腕前を見学できるというのだ。


「お引き受けしま……」

「反対よ」


 言葉を遮ったのは先生だった。


「さっきも言ったけど、彼はまだ一期生。絶対安全とは言えないでしょう? そんな危険なところに行かせるわけにはいかないわ」

「それでしたら私たちが付いていきましょうか? 」

「ジェシーさん、貴方ね……ゴホッ……そういう問題じゃないのよ。それなら私も行きます」


 口に手を当てながら激しくせき込む。どうみても先生は満足には戦えない状態だ。それどころかいつもより顔も赤い気がする。


「先生、失礼します」


 彼女の首に向けて当身。


「あっ……」


 反応できたであろうのに彼女は振り返ることもなく意識を失った。倒れる彼女を慌てて掴み支える。


「まさかこれで倒れるなんて」

「……先生、相当無理してた」

「先生には悪いけれど……私も連れて行ってくれますよね」

「あ、ああ……分かった」


 とカルロスさん。すかさずフウトとディーネも口を開く。


「ボクも数年後のために戦いは見てみたいので、お願いします」

「……私も」

「分かったよ。幸いバランスもいい、皆で行こう」


 観念したように彼は告げた。


 ~~

 馬車に乗り寮に先生を送り届けるとそのままヘルソルジャーがいるべき場所へと走り出した。


「メイソン先生とはどういったご関係で? 」


 オレの質問にどういうわけか彼は激しく咳き込んだ。風邪でも引いたのだろうか?


「失礼。彼女とはね、一言でいうとライバルかな。一年の時はクラス対抗で競い合って、二年からは共に戦った。彼女は実力を見ても騎士団に入るかと思っていたんだが、分からないものだなあ」


 しみじみと語ると丁度横に並んで座っているオレとディーネを見る。


「彼女は教師として上手くやっているかい? 」

「そうですねえ」


 ディーネと顔を見合わせる。先生との良い思い出と悪い思い出は半々だ、でも悪い思い出もほとんどはオレのことを思っての行動が空回りしてしまったからだと聞くと憎むことはできない。


「良い先生だと思います、厳しいですけれど」


 結果、このような回答になってしまった。ディーネが頷く、それを見た彼は笑い出した。


「ハハ、彼女は不器用なところがあったからなあ。でも上手くやっているようだ」

「あれ、もしかしてカルロスさんってメイソン先生のことが……」

「いや、そんなことは決して……」


 ジェシーの言葉に平静を装おうとする彼だったが声は裏返り目は泳いでいる。

 何というかジェシーはグイグイと攻めるタイプだなあ。そんなに恋愛話が気になるのか。

 と同意を求めてディーネに視線を向けるも彼女はジッと彼を見つめていて言葉には出さないものの興味津々の様子だった。

 ディーネもなのか……

 思わぬ裏切りから仲間を探すと向かい合って座っているカルロスさん、ジェシーと続いて更に右側に一人ポツンと気まずそうなフウトを発見。偶然目が会い軽く会釈。

 座る場所を間違えたかなあ……。

 そんな思いと共に馬車は街を抜け野原を駆けていった。

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