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「フウトとの決戦」

  昼休憩も終わり決勝戦の時が訪れる。耳が痛くなるほどの歓声の中、案内されるがまま会場へ向かうと先に辿り着いたフウトが腕を組んで待っていた。昼休憩ではお互い囲まれて激励を兼ねてご飯を奢ってもらったりなんかしていたので話す暇がなかったので決勝進出者として会うのは初めてだ。


「やはり、ここに立つのはボクと君だったか」

「みたいだな」


  ファイナリストとしてそんなやり取りをするも数分後にはオレ達の中で片方が勝者でもう片方が敗者となってしまうのだから勝負の世界というのは恐ろしいものだ。

  と世の無常さを嘆いていると審判が手を挙げるのをみて剣を抜き手前に構える。会場がしんと静まる中フウトも同じように抜いたが構えは異なり剣をオレから見て左側の頭上へ持ち上げると刃をこちらへと向けるという剣を振り下ろしやすいものだ。

  やっぱりあれで来るのか……

  生唾を飲み込む。彼の狙いは間違いなくイワン戦で見せた飛ぶ斬撃だ。イワンのように壁で防ぐことができないオレにとっては来るとわかっていても厄介な一撃。


「ウィンディ、フウト。フレイム、ガイト。試合開始」


  試合開始の宣言と共にフウトが大振りで勢いよく剣を振る。それは構えから見るにオレからみて左から振り下ろす一撃なので右に飛べば難なく回避できる……はずだった。


「君の狙いは読めている、『クリアランス』 」


  オレが体を右に傾けると同時にフウトはにやりと笑うと構えを崩し右上から斬撃を飛ばす。こうなっては右側に飛んでは餌食になる。剣で防げるはずもなく即座に試合は敗退だ。

  しかし、そうはならない。その行動も予測していたからだ。


「何!? 」


  フウトがオレの動きを見て更に剣を振る方向を変えようと試みるが既に振り下ろす動作に入っている以上それは叶わなかった。

  ズバン!

  と素早い一撃が未だ試合開始位置である白線の上に立っているオレ目掛けて飛んでくる。

  そう、オレはただ体を傾けただけで飛んではいなかった。

  なぜなら……どちらから来るかわからない以上どちらの攻撃でも中間地点に位置するこの場所こそが一番避け易いから!

  勢いよく地面を蹴り上げ跳ぶ、読み通り放たれた一撃は空しくその下を通り抜けた。


「やるな、ボクの攻撃を読んでいたのか」

「まあな、飛ぶ斬撃を放てない防げないオレに対しては大振りで確実に当ててくるだろうなと」

「お見事、だがこれからはどうする」


  彼が笑みを浮かべ再び剣を構える。言葉通りで避けたからと言って遠距離攻撃もそれを防ぐ術もオレにない以上、彼の有利は依然変わりないのだ。勝利への道はたった一つ、攻撃をすべて避けて懐に入り込み一撃を食わせること。

  ……面白れえ。光のソウルの使い手なら風より早く走れないとな、やってやるよ!

  明らかに不可能に思える状況に思わず笑みがこぼれる。それは武者震いという奴だろうか?


「行くぞ」


  その言葉を合図にオレは全速力で駆け出しフウトはオレ目掛けて剣を振り攻撃を仕掛ける。ヒュン、と先ほどまで立っていた場所が切り裂かれる音がしたと思うと同時に彼が変な反応を示した。


「……どこにいった? 」


  顔をしかめながらキョロキョロとあたりを見回すフウト。信じられないことにオレの姿が見えていないようだった。三期生のウォルバーストさんと張り合えるほどの速度とはいえまさかそこまで速く動けているとは思えず演技かと考えあえてジグザグに移動しながら近づいていく。


「くそ」


  遂に辺りかまわずにソウルを放つフウト。その攻撃は空しく空を切る。

  そうこうしているうちにうまく懐に入るも実は見えていましたとされる可能性も考慮しカウンターを警戒しながらくるりと彼の体を回り込み背後を取ると剣で彼の背を軽く叩いた。


「なに!? 」


  慌てて振り返るフウト、同時に審判が手を挙げる。


「勝者、ガイト! 」


  しんと会場が静まり返る。フウトですら見えていなかったのだとしたら一期生ばかりの観客が見えていないのも仕方ない、と自分に言い聞かせているとパチパチと手をたたく音が聞こえそれが次第に広がっていった。


「見事だったよ。君があれほどの実力だったなんて……恥ずかしながら何も見えなかった、まだまだ鍛練が足りないな」

「ソウルが戦闘では使えないからな、この速さが見破られたその時にはオレの負けだ」

「ハハハ」


  彼は冗談と受け取ったようで笑い飛ばす。


「でも、ボクみたいにこのままで終わるつもりはないのだろう? 」

「もちろん」


  オレ達は健闘を称えあいつつこれからの成長の誓いを込めて固い握手を交わした。


「いやあ、おみごとおみごと 」


  パチパチパチパチと鳴りやまぬ拍手とラッパ音の中で一人の男性が満面の笑みを浮かべてこちらに歩いてくる。


「学園長」


  彼の姿を視認したフウトが手を放し一歩下がる。


「素晴らしい試合を見せて頂きましたよ」


  そう口にしてオレ達を交互に見た後にオレの手を取る。


「そしてガイト君、ライバルとの戦いを勝ち抜き優勝おめでとう。君が学園対抗戦の一期生代表だ、期待していますよ」

「ありがとうございます」


  学園長が握手した手をそのまま持ち上げると再び大きな歓声が上がる。

  入学する前からトラブルの連続だったけれど、ここまでくることができて良かった。

  会場を見渡しながら掴み取った幸運を噛み締めていると偶然ウォルバーストさんとアローさんの姿が目に留まった。

  ここで満足してはいけない、オレの目指すのはもっと先だ。クラス対抗戦でさらにオレは強くなって見せる!

  彼らに笑みを返すとクラス対抗戦へと思いを馳せた。

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