表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/164

「初戦突破」

「一応まだ剣での戦いはついていないけど、どうする? 」


  彼女の上にまたがり拳を突き上げ勝利宣言をしたはいいがまだ剣が当たったわけではない。彼女がその気ならばここからしばらく素手での取っ組み合いが始まることになるわけだが、それは気が乗らないので降参をしてくれることを祈りながら尋ねる。


「いいわ、私の完敗よ」


  あっさりと彼女が引き下がる。その言葉を聞いた審判が高らかに宣言をする。


「勝者、フレイム! ガイト! 」


  瞬間、二度目の歓声が沸き上がった。その中で体を起こすとお互い握手を交わす。


「この借りはいずれ返すわ。次の試合も頑張りなさいよ」

「ああ」


  力強くそう答えると踵を返して控室へと向かう。その途中で先生が待っていた。


「流石ねガイト君、彼女相手に勝利をするなんて。あれだけソウルを使いこなせる一期生は、そうはいないわよ」

「ありがとうございます」


  彼女の称賛の言葉を素直に受け取る。我ながらソウルなしで良く戦えたものだと感心していると彼女が不満げに口にする。


「でも、どうして貴方はソウルを使わなかったの? 彼女の行動を見る限り貴方のを把握している様子はなかったから隙をついていつでも勝てたのではないの? 」


  思わぬ一撃、そうなのだ。オレが勝手にソウルを使わないと決めているだけで本来は使っても構わないのだ。いや、代表ということを考えると率先して勝つために使用しないといけないのだろう。正直に話して許してもらえるはずがない。即座に頭を働かせて言い訳を考えるといいのが浮かんだので即座に口にする。


「彼女にソウルを隠してると思わせることが大切なのですよ。限界までソウルを警戒させつつ絶体絶命の場面で予想に反して剣を捨てる。これにより彼女に大きな隙を生ませようという策です」


  ……咄嗟の割には上手いことを言えたのではないだろうか?


「なるほど、貴方なりに考えがあったというわけね」


  分かったような分からないような顔で彼女が口にする。その反応からジェシーがオレがソウルを使えないことを知っているみたいなことを叫んだことを思い出しそれほど上手い言い訳ではなかったことに気が付き話題を変えることにした。


「本来ならフレイムに目覚めて炎でバンバンと溶かせるから初戦がブリザードは運がいいはずが、使えないせいでこうして頭を使う羽目になって大変でしたよ。フレイムが使うことが出来たならすぐ終わっていましたよね」

「そういうわけではないのよね」


  意外にも数秒の沈黙の後彼女はどういうわけかそんなことを口にする。


「……でも、運がいいというのはあながち間違ってはいないわよ」

「それはまたどういう意味ですか? 」

「決勝の前にお昼休憩が入るのよ、控室にいる必要はないのだから観客席で座りながら観戦してきなさい」

「でも、ここからでも十分というかそれ以上に観戦できると思いますが……」

「そうなのだけど、次の試合は上から離れてみた方が良いと思うわ。ソウルがぶつかるでしょうから」


  言われてハッとする、オレと違って次は風を操るウィンディと地を操るガイアの戦闘だ、上から見た方が良く試合の内容も把握できるだろう。「分かりました」と答えると足早に観客席へと向かった。

  観客席まで駆け足で辿り着くと先ほどまで立っていたフィールドが見渡せる程の高さに目を見張る。先生の言う通りこちらの方がよく観戦が出来そうだ、そして都合がいいことに階段状になっている目の前の最後尾の席には誰も腰を下ろしておらず空しく椅子が並んでいる。出入りが面倒なのでそこに座ると最前列に座っているブロンドヘアの女性が目に入った。ディーネだ。左右を見ると赤い服の女子生徒と何やら会話をしている。寂しさを感じながらも一人で見ているなんてことがなくて良かったと見つめていると彼女の隣の生徒が振り向き目が合った。

  ……まずい。

  気まずさから素早く視線を移しまだ選手のいないグラウンドを見ていた振りをする。その努力空しく彼女はディーネを肘で突くとディーネを含む数名の生徒がこちらを振り向いた。

  もはやこれまで、観念をして会釈をすると奇妙なことに彼女達は何やら仲良く笑うと皆でディーネの体を左右から小突き小突かれたディーネは笑いながら立ち上がるとこちらへと一直線に歩いてくる。


「……ガイト、決勝進出おめでとう、凄かった」

「ああ、ありがとう」


  後でもいいのにわざわざそれを言うために来てくれたのかと感心しているとどういうわけか彼女が隣に腰かける。


「別にオレが一人だからって気を遣わなくていいぞ」

「……大丈夫、そういうのじゃないから」


  キッパリと口にする。大丈夫と言われても彼女を挟んでいた二人は何やらニヤニヤしているし大丈夫ではないのではないかと尋ねようとしたところで歓声が沸き上がった。何事かと見るとグラウンドに二人の生徒が向かい合って立っている。試合開始目前のようだ。

  ……ディーネが良いのなら良いか

  そう納得するとグラウンドの二人がこれからどんな試合を繰り広げるのかという期待に胸を弾ませた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ