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「バディを見つけろ」

始業式当日、オレはフレイムのクラスに着席をして授業カリキュラム等の説明を聞いていた。ここにくるまでソウルがわからないということで大幅減点となり、どこのクラスの寮に属するかということを決めるために一悶着あったものの、自由に選んでいいということで、いざ発現した時に一番取得が難しそうなフレイムを選択したのだ。

……それにしても、とんだ入学になっちまったな。

横目でクラスの面々を眺める。オレの座っている場所は一番後ろの左端だ。自由席のため少しでも目立たないというようにしたのだけれど、その試みも空しくメイソンという長い黒髪をハーフアップでまとめた若い女性教師は「約1人を除いては」としきりに口にしている。

……スラっとしているに加え顔も可愛いというのに残念なことだ。いや、教師からすると未だソウルが未確定のオレが邪魔ものなのだろう。

そんなことを考えているとふと話題が興味深いものへと移りオレは切り替えて聞き漏らすまいと耳に神経を集中させる。


「例年行われている他校との交流試合ですが、1年生は代表を1人選抜することになっております」

「まあ、その枠は既に俺様と決まっているがな」


会場に自信満々な声が響き渡る。誰かと視線を向けるとこのクラスの入学試験結果1位だと触れ回っていた赤い髪の男性だった。


「コホン、バーン君。静粛に」

「失礼いたしました、現実となることとはいえ今この場で宣言することではございませんでしたね」


含みを込めて答える男性を一瞥するとメイソン先生は続ける。


「その選抜方法ですが、まずクラス内で代表を1人決定してその後、クラス毎の対抗戦で学年代表者を決定します。そして我がクラスの選出方法ですが、2人1組のバディを組み優勝したバディのどちらか1人がクラス対抗代表選へ進めるという方式です」

「なぜそのような方法を! 」

「いつもは個人戦の優勝者と決まっているのでは! 」


次々と抗議の声が上がるも皆途中で言葉を切る。このルールは至極簡単、オレをクラス対抗戦に進めないようにするためのルールなのだ。カリキュラムを見るに対抗戦までにソウルの講義は十分にある、その間に多くの生徒はソウルを交えた行動が可能であるだろうからそうなるとソウルを使えないオレは圧倒的に不利なのだ。いや単純に、フレイムではないオレを出したくないということなのかもしれない。そのために、オレを落としたいものの既にアローを倒したオレにタイマンで勝てるものは恐らくいないだろうからパートナーをつけてその辺を補いつつ仮に優勝をしてもパートナーをクラス対抗戦に出場させることができるという魂胆なのだろう。

……まあ、オレは気楽にやるだけさ。

再び教室全体を眺めながら生徒の数を数える。すると奇妙なことに気が付いた。生徒の数が奇数しかいないのだ!


「あれ」


キョロキョロと見渡す。するとオレとは対照的に後ろの席の右端にポツンと1人だけいる金髪の少女が目に入った。

……あの子も何かあるのかな

教師の言葉を耳にふと彼女の存在が気になった。


~~

「配布物の説明に移りますが、こちらの模造剣はクリスタルが内蔵されており皆さまのソウルを投影し、実物の剣で使用した時のような攻撃を安全に繰り出すことが可能となっている高価なもので…………それでは2人でバディを組んでください」


模造剣などの配布物や一通りのルールの説明が終わった後、その一言とともに生徒が散り散りにバディを組むために席を立ち歩き始める。オレはその様子を眺めながらも立ち上がると先ほどの少女目掛けて歩き始めた。オレと彼女の距離は数十メートルある、その間彼女はオレに視線を向けることもなければ彼女をバディに誘おうと近寄るものもなかった。無論近寄るものがなかったのはオレも同様だが。


「ねえ、君。良ければオレと組まない? 」


パッと見た印象だけれど必ず誰か1人がオレと組まないといけないとなると該当者はこの子だ。だから先に申し込んでおこう、その位の気持ちで声をかける。


「私と……バディを……? 」


ゆっくりとこちらを見上げる少女は月のような髪とあうパッチリとしたアイスブルーの瞳に整った顔立ちで一人でいるのが不思議なくらい顔が可愛らしい少女だった。


「うん、ダメかな」


……計算が違った。これだけ可愛いと今からでもその気になれば組みたいという男子がいるかもしれない。


「……私でよければ」

「え、いいの? 」


オレの問いに彼女は頷く。そしてそれと同時に申し訳なさそうに1枚の紙を差し出した。どうやら今回の入学試験の結果表のようだ。


「みていいのか? 」

「……うん」


許可が下りたので目を通す。正六角形で表される彼女の成績はソウルと持久力だけ尖っていてそれ以外は平均以下だった。


「……それをみても私と組んでくれる? 」


懇願するようにこちらを見る。


「勿論だよ、で今度はオレの番だけど」


口にしながらバッグを弄りながら結果表を探そうとするのを彼女は笑って制する。


「……良い、有名だから」

「そっか」


照れくさくなり思わず笑いで補う。


「……それじゃあ、よろしく。私はディーネ・オルスタイン」

「宜しくディーネ。オレはガイト」


こうして、オレにバディを組んでくれる仲間ができた。

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