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「トーナメント表」

  数日後、修練場でディーネと特訓をしていると先生が入ってきた。

「やっぱりここだったのね、少しは休みなさいよ」


  呆れるようにそう口にすると彼女は手にしていた物をヒラヒラとさせる。


「その紙は? 」

「来週から始まるクラス対抗戦のトーナメント表よ。今日受け取って明日クラスで発表するのだけれど。出場する貴方には早めに知らせておこうと思って」

「トーナメントですか」

「ええ、一人しか選ばれないのだから相性とかの運も必要ってことになってね」


  意外だった、クラスも四つしかないのだから総当たりかと思っていたのだけれどそういう考え方もあるのか。


「お気遣いありがとうございます」


  お礼を述べながら用紙を受け取る。トーナメント表というのだから張り付けるという形になるのだろうけれど、そうなると十中八九できる人混みをかき分けて見に行く手間が省けるというのは本当に有難いことだ。

  受け取ったトーナメント表を覗き込む。それによると第一試合はフレイムクラスのオレとブリザードクラスのジェシー、第二試合はウィンディのフウトとガイアのイワンという人物のようだ。

  ……フウトと戦うとしたら決勝か。

  真っ先にそのことが頭に浮かぶ。そういえば、あの場では代表がオレじゃないと思っていたとはいえ不義理なことをしてしまった。明日そのことについて詫びに行くとして気になるのは……


「ジェシーとイワンって人はどんな人でしょうか? 」


  先生とディーネを交互に見ながら尋ねると二人とも首を横に振る。


「残念ながら他のクラスの方は知らないわね」

「……私も。多分、知らないと思う」


  どうやら二人とも知らないようだ。まあオレもフウト位しか知らないし……問題二人の調査は明日するとして次の問題は戦法だ。空想や本で見ていたとはいえ実際とは異なる場合もある。今のうちに先生からそれぞれの戦法を

  確認しておきたいと口を開く。


「それぞれのソウルの戦法ってどのようなものですか? 」

「あら、意外ね。そういうのは出たとこ勝負なタイプだと思っていたけれど」

「まあ、負けず嫌いなので」


  先生の反応がオレにとっては意外だったのでそう返す。彼女は腕組みをしてしばし沈黙した。各ソウルの戦法を思い出しているのだろう。邪魔をしないようにと黙って見守る。


「まず一回戦であたるブリザードだけれど、主な勝ち方は凍結ね。といってもトーナメントで使用するのは模造剣だから実際に凍るわけではないのだけれど……」

「凍結はどこから」

「足元からね。地面を氷が伝っていって足元が捕まったらアウト、そういう判定よ」


  思い描いていた戦法とはいえ実際に耳にして絶句する。すると代わりにディーネがそれを口に開いた。


「……それだと、勝ち目が」


  そこなのだ、勝ち目がない。広範囲に氷を広げ足を捕まえたら即凍結勝利だなんてフレイムのソウルではないと反則もいいところだろう。


「そこは心配ないわ」


  先生がきっぱりという。


「広範囲に高速で氷が広がっていく……なんて考えているのでしょうけれど、それはできないみたい。範囲か速度、どちらかに制限がかかるわ。ベテランの剣士となれば別でしょうけれど」


  胸を撫で下ろす。範囲を狭めて高速にするか広範囲で低速かのどちらかとなれば恐らく前者が多そうだから対応はできそうだ。


「そうなると、シンプルに避けて斬るのが一番でしょうね」

「まあそうね、剣を氷を出す場所に触れさせる必要があるからその通りに行ければ有利よ。それで後はガイアとウィンディでしょうけれど、ガイアはブリザードと戦闘面ではほとんど似たような感じでウィンディは……一番厄介かもしれないわね。斬撃を飛ばして風の防壁と何でもありよ。手札が多い分こちらとしてはどれで来るかを見極めたいわね」

「もし、剣をソウルで強化とかした場合は……」

「それはね、意味ないのよ」

「え? 」


  先生の言葉に耳を疑う。意味がないってことはないだろう。重くはなるだろうけれどこちらとしては咄嗟の行動でそれをやられて剣を折られたりしたら負けなのだ。


「あくまでソウルは映像だから、剣同士のぶつかり合いでの強度まで正確にはできないのよ。戦いも剣士とはいってもほとんどがソウルの打ち合いで剣戟(けんげき)自体が(まれ)なのよ」


  言われてアローさんの戦いを思い出す。彼の戦闘は先生の言う通り開始と同時にスタート地点からソウルで攻撃を仕掛けて勝負を決していた。


「それでは、例え剣に纏っていても強度に変化はないということですね」

「ええ、ウィンディやフレイムだとそこから剣に纏ったソウルを放つことはできるけれど、剣に纏われている間は試合には何も影響はないものと考えていいわ」


  そこまで述べて先生が目を細める。


「といっても、貴方には無効化できる光のソウルがあるから元から無いものと同じでしょうけれど」

「はは」


  笑って誤魔化す。まさかソウルなしで戦おうなんて考えてますとは到底言える雰囲気ではない。


「それじゃあ、頑張って」


  彼女がそう口にしてくるりと踵を返し出て行くのを「ありがとうございました」とお礼を述べて見送る。


「……ガイト、もしかしてソウルを使わないで戦うつもり? 」


  ディーネにはバレていたみたいだ。


「ウォルバーストさんに言われたんだ。ソウルは無効化されるから出しても意味がないって。それが申し訳ないというかさ。三期生で数年ここで磨いたソウルとも戦ってみたくて、モンスター相手にソウルを無効しても意味がないからオレのためにもなるし。そのためには新しい戦法を考えないといけないんだが……もう少し付き合ってくれるか? 」


  オレの問いに彼女は首を縦に振る。


「……ガイトは優しいね」


  オレが優しい? それをいうならそんなオレに付き合ってくれるディーネの方が何倍も優しいと思うのだけれど……

  照れくさくてそう彼女に告げることも、褒められた手前、学園対抗戦に出たい思いは変わらないので状況が怪しくなったら遠慮なくソウルで無効にするということもできなかったオレは「ありがとう」と感謝の言葉を述べた。

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