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「目覚める伝説のソウル」

 その夜、オレはディーネと修練場にいた。ディーネの練習とオレのソウルを確かめるためだ。


「行くぞ、ディーネ『インバリード』」


 名前を叫ぶと同時にオレは剣を掲げて以前のようにソウルを出現させる。たちまちオレの剣が眩い輝きを放つ。

 ……よし、何とか出現させることはできた。あとはイメージだ、手始めに光の剣で行こう!

 そこから更に強く以前見た炎をまとった剣をイメージすると更に強く薄暗い同情が眩しくなるほどの輝きを放った。


「……眩しい」


 ディーネが思わず目を瞑るのをみて慌てて光を消す。


「悪い、ちょっと加減が難しくて」

「……ううん、私の方こそ。ソウルが使えるようになればもう少し力になれるのに……」


 ディーネが肩を落とす。おそらく彼女はオレと同じようにバーンのソウルを消したことからオレのソウルは他の人のを打ち消す力があると仮定しているのだろう。


「いや、付き合ってくれるだけで充分ありがたいよ。オレもこんな感じでピカピカ光らせることしかできないしあってないようなものさ。気長にやるよ、ハハハ」


 彼女の気が楽になればと大げさに笑い飛ばすもそれは本心からであった。実際にソウルを消せるのかどうかはディーネが使えるようになったときに検証をしても変わらないであろうしこれでは対人では役に立っても、ソウルを使用しない魔物との戦いでは目くらまし程度でしか役に立たないのだ。それならばディーネと剣を打ちつつ彼女の姿から何かを掴み取ることができれば良いと感じる。


「とにかく、今日はお疲れ様。明日は安息日だから……」


「ゆっくり休んで」と言おうとして言い留まる。何かが引っ掛かったのだ、その正体はすぐに見つかった。ディーネとの約束だった。


「約束通り街を案内する、でいいかな? 」


 間一髪で思い出しさも覚えていたというように口にするとディーネは目を輝かる。


「……良いの? うん。楽しみ」


 余りに嬉しそうにそう口にするので今の今まで忘れていたなんて言わなくて良かったなんて思いながら修練場を出ようとした時だった。バタン! と勢いよく扉が開き寮長が姿を現したかと思うと彼女は突然オレに抱き着いてきた。


「ガイト君、聞いたわよ。ソウルが使えるようになったのだって? 一度でいいからお姉さんに見せて」


 よっぽど嬉しかったのだろうか? 前方から当たる柔らかい感触とは対照的に背後ではミシミシと音が響きそうなくらいの力で回された腕に力が込められてまさに天国と地獄のような状態だ。


「わ、分かりましたから離してください」

「あらごめんなさい。それで何の属性だったの? 凄かったしか聞いてなかったのだけれど楽しみだわ~」


 正直、使いこなせてもいないので気が進まなかったのだけれどいつもより高めなテンションで寮長が言うので数歩下がると剣を構える。


「それじゃ、行きますよ」

「ええ、いつでもいいわ! 」


 寮長がそう口にしたので即座にソウルを出現させると再び剣が光を放った。


「まあ、こんなものです。まだこれくらいの光らせることしかできません」


 他にはとかどんなことができるのか聞かれても何も答えられないので先手を打つ。しかし、寮長が何も言ってこないので横目で彼女を見ると彼女は何かとても懐かしい物を見るような表情をしていた。


「寮長? 」


 オレの一言で彼女がハッと我に返る。


「あら、ごめんなさい。凄い綺麗な輝きで思わず見惚れちゃった。素敵なソウルね。丁度読み終わった本のように恋人と暗闇に閉じ込められたときに明かりにすることができるロマンチックな力だわ」

「ロマンチックですか? 」

「……うん、素敵だと思う」


 半信半疑で尋ねるとディーネが頷く。


「あら、ディーネちゃん分かってくれるのね嬉しいわ。素敵よね~」


 ……でも、それは戦いでは何も意味が。

 言いかけて口を紡ぐ。感性の差というやつだろう。それにせっかく褒めてくれたのだからわざわざ暗くするのも悪いので笑っておくとどういうわけか意気投合した二人は何か本を貸す借りると口にしながら修練場から出て行った。


「あ、ディーネ。明日の待ち合わせ」


 一人残ったオレの声が修練場にポツリと響き渡る。


「帰るか」


 独り言を呟き外へ出ようとした時だった。


「こんばんわ」


 再びバンと修練場の扉が開き先生が姿を現した。


「先生もここで修練を」

「まあね、といってもそれは深夜になってのことで今は違うわ」


 中らずと雖も遠からずといったところのようだ。先生も教育と修練どちらも疎かにしてはならず大変だな、でも深夜になってのことということは今は?


「今は、何の用事でしょうか? 」


 オレが尋ねると先生がふう、と息を吐く。


「先ほど、寮長とばったり会ってね。ガイト君がソウルで悩んでいるから力になってあげてくれって」

「寮長ですか? 」

「ええ、でも丁度よかったわ。貴方には私が生徒にソウルの講義をしているとき退屈な想いをさせると思うし何か埋め合わせをしなきゃと考えていたの」


 確かにオレのソウルはフレイムではないため講義でそこまで実用的な経験はないかもしれない。とはいえ、その保証まで考えてくれるなんてこのクラスを選んでよかったと思う。


「それじゃあ、まずは貴方のソウルを見せて頂戴」


 修練場の奥へ向かうと先生が声をかけ剣を構える。それに応じて剣を抜く。


「行きますよ」


 その言葉と共にオレはソウルを出現させる、たちまち剣が眩い輝きを放った。が、それだけだ。剣が大きくなってリーチが伸びたり攻撃できる何かが出てくるというわけではない。


「なるほど、攻撃面では少し頼りないわね」

「はい、目眩ましくらいしか。でも、あの時みたいにソウルとぶつかると何かが起こるかもしれません」


 先ほどのバーンとの出来事を思い出しながら口にする。すると先生が信じられないことを口にした。


「出そうとしてるのだけれど、出せないの」

「え? 」

「もしかするとそれが貴方のソウルなのかもしれないわね。一度ソウルを解除してみて」


 言われるがままに力を抜きソウルを解除する。すると部屋がほんのり暗くなった次の瞬間、先生の剣から出現した炎が部屋を照らしだした。


「もう一度ソウルを」


 再び力を込めてソウルを出現させると今度は先生の剣の炎がスッと消えた。


「どうやら、貴方のソウルは他人のソウルを消すことができるようね」

「みたいですね」


 これではヘルソルジャーと戦うなんて到底無理だ。がっくりと肩を落とす。


「そう落ち込むことでもないわ。たまにソウルを使う元剣士の強盗なんて厄介なのもいるし、そういう方面も剣士の仕事よ」


 先生が励ましてくれるもオレの憧れはキマイラを倒した彼女であるためデモンではなく人を専門で相手にしなくてはならないというのは余りに受けとめがたい事実だ。それが伝わったのか彼女は更に付け加えてくれる。


「そういえば昔はね、サタンは人を自身の力でヘルソルジャーという部下にしてヘルナイツという組織を作っていてね、彼らもソウルを使っていたらしいわよ」


 先生がヘルソルジャーについて語る。彼女の言葉通り、サタンによりヘルソルジャーとなってしまった人々はかなりの猛威を振るっていたらしい。でも……


「でも、最近ヘルソルジャーっているんですかね」

「………………情報すら耳にしないわね」


 長い沈黙の後に先生が答える。

 ……うん、平和なのは良いことだ。


「昔ならともかく、今じゃ仲間との連携もできない微妙なやつですね」


 生まれてくる時代を間違えたなあと考えながら呟く。


「まあ、今はそうね」


 先生がきっぱりと言ってのける。あまりにはっきりというものだから思わず面食らった。


「でも貴方はまだ1年の入学したばかりなのよ? それに連携もディーネさんと頑張ればいいでしょ」


 先生の言う通りだ、諦めるのはまだ早い。ここからこのソウルをどうしていくかはオレ次第なんだ。もしかしたら凄い閃きがあるかもしれないし、ディーネと連携も練習をすればいい。


「それに……」


 先生が続ける。


「私は本職の教師だからね」


 その言葉から先生が近くにいることを忘れていたディーネに教え方が良いと褒められたことを思い出す。


「あの、もしかして先生気にしてました? 」

「……別に気にしてないわよ。それじゃあ、今日はここまでにしましょう」


 先生はそう切り上げると踵を返し出口へと向かう。


「ありがとうございました、これからもよろしくお願いします」


 去りゆく彼女に礼を述べると彼女はこちらに向けて手を上げた。




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