「繋がれる道」
ドラゴン討伐から数時間、馬車は騎士団本部へと到着した。
「それでは我々はこれで」
「結果は後ほど……失礼言わなくても分かりますよね」
「当然だ、上官を突き飛ばして邪魔扱いだもんな」
「じゃがガイト君はドラゴンを倒したぞ? 死体は消滅してしまったがワシのソウルが岩にこびりついていた血がその証拠じゃ」
ロイドさんがフォローをしてくれる、しかし彼はそれを鼻で笑った。
「あのな爺さん、闇のソウルで全部消滅させて剥ぎ取った部位みたいな証拠もない老いぼれのアンタと俺達どっちの言うことを上は信じると思うんだ? 」
二人が馬車を降りるのをぼんやりと眺めながらすまないとディーネに心で詫びたその時だった。
「つまりガイト君は不合格ということじゃな? 」
落ち着いた言い方だったがロイドさんの視線には有無を言わさないといった迫力があった。
「凄んでも無駄だぜ爺さん、こいつは不合格なんだよ。大体何で俺達がサタンの息子なんかと一緒に戦わなきゃいけねえんだ今日一日同行してやっただけでも感謝しろ」
負けじとジョンソンさんが怒鳴りつける。するとロイドさんがゆっくりと立ち上がった。
「それならば不合格じゃな…………お主達二人が」
「「は? 」」
突然のロイドさんの言葉に驚いた素振りを見せたのも束の間、次の瞬間二人は思い切り吹き出した。
「フハハハハハハハハハハハ、爺さん遂にボケたのか? 」
「貴方に何が出来ると言うのです」
ロイドさんは答えずに代わりに懐から何かを取り出して二人に見せつけた。綺麗な金色で派手な飾り付けがされている星形の何かを見せつけた。
「どうした爺さん、そんな売店で売ってるような玩具を取り出して本当に頭がおかしくなっちまったのか? 」
「いえ待ってくださいジョンソン、これは……総司令のバッジです」
バンさんが慌てて彼の肩を揺さぶる。言われてみると確かに前の総司令が胸に付けていたものに似ている……気がする。
「……本物? 」
「そんなバカな」
と慌てた二人が震え出すのに対してロイドさんはゆっくりと立ち上がった。
「ジョンソン、バン、一受験生に対して毒を吐くばかりか命を預けた仲間の作戦に背き故意にチャンスを不意にしておいて上官を敬え等とは笑止千万! 」
「いえ、それはこのジョンソンのバカが勝手に……」
「バン、お主はそればかりか何の合図もせず仲間の背からドラゴンに対して余計な攻撃をしておったな……仲間を進んでピンチに陥れるなど言語道断! 二人とも二週間の謹慎処分の上、降格とす」
「こ、降格! ? 」
「クソ、黙って聞いてればこのジジイ偉そうに……なら良い手があるぜ」
ジョンソンさんがにやりと笑って剣を鞘から抜く。
「今ここでこの二人を斬っちまえば良いんだなあにドラゴンにやられたってことにすれば良い」
「……何を斬るというのだ? 」
「お前達だよボケジジイ! 」
ジョンソンさんが叫んだ次の瞬間、先程から視界に入っていた剣士達がわあっと車内に入ってくる。彼等は熱くなって忘れていたのだろうがここは騎士団本部だったのだ。程なくして二人は連行された。
「新しい総司令官だったのですね」
「今までは裏方に徹していたからのう、知らない人がいるのも無理がないわい、久方ぶりに現場に出てみて良い気分転換になったわ、まだまだいけるらしいしのう」
「……その節はどうも」
言葉に詰まりそんなことを返す。二人ほどではないが総司令となると相当失礼なことをしてしまった気がする。
……下手すればここで終わるぞ。
身構えていると彼が意外な言葉を口にする。
「すまなかったな」
「何がですか? 」
「二人の事だ、今回の試験は騎士団のメンバーが君とどう接するかのテストも兼ねていた。命の危機を共にすれば出世など関係なく接してくれると信じていたのだが……あそこまで根深いとは思わず危険に晒してしまった。本当にすまなかった」
「やっぱり迷惑でしたか」
「いや、君は十分過ぎるほど戦力になる、メンバーに関してはこちらで調整するからどうか剣士の道を諦めないで欲しい」
「それってどういう」
彼がオレの肩にポンと手を置く。
「文句無しの合格だよ」
そう言って彼は笑った。
オレの剣士の道は繋がった。断とうとする人もいればこうして繋いでくれる人もいる。改めてこの道を進んで行こうと思った。




