「サタンの復活」
今回からガイト視点に戻ります
夕刻、剣を抱えサタン城の最上階に降り立つと既にこの建物にいるヘルソルジャーが全員揃ってオレを待ち構えていた。
「随分と遅かったなあ。俺達を何日待たせたと思ってるんだ」
大きな身体のワッパーが巨大なハンマーを片手にオレを睨みつける。負けじと睨み返すと口を開く。
「悪かったな、だがこっちも土砂降りのお陰で止むまで空き家と下水道を転々とする逃亡生活をする羽目になっていい迷惑だったよ」
「それなら、雨の中帰ってくりゃ良かったろうが! 」
「前が見えねえ中でどうやって帰るんだよ! 」
「まあまあ、ガイト様落ち着いてください」
小柄な執事のプシーが宥めるように言うとワッパーを睨みつける。
「貴様はサタン様のご子息に何という態度を」
「大体手に入れ次第ぶっ壊せばいいじゃねえか、なんで持って帰ってくるのを待たなきゃいけねえんだよ! 」
「そこは感動の親子の対面というやつだよ」
ステッキを持ったジャンが代わりに応える。
「何が親子の対面だ、撃ち落されるのが怖いだけじゃねえか! 大体光の剣士なんだろ? 本当に親子なのか? 」
「貴様と違ってヘルソルジャーの姿にならずとも闇のソウルが使える。これが何よりの証拠じゃろ! 」
「それに彼の年齢はピッタリ一致します。例えそうでなくとも……闇のソウルを使用したという事実がある以上我々につくしかないでしょう」
ジャンがニコリと微笑む、しかしその内容は脅迫みたいなもので笑い返す気にはなれない。彼は言葉使いこそ紳士を装っているもこういうことを笑顔で言える恐ろしい奴だ。
「その通りだよ、総司令がヘルソルジャーとなっちゃ裏切ってもみろ、なにされるか分かったものじゃない、オレは自分可愛さにこっちに来たんだ。何よりも信用できるだろ? 」
「まあ、彼なら権力でサタンの息子と称して指名手配はするでしょうね」
「そういうことだ、自分可愛さにこっちについて自分可愛さに剣を壊さずに持ち帰って来た。それだけさ。こっちならプシーが闇のソウルの稽古もつけてくれるしな」
「ええ、ガイト様は素晴らしい。この数か月でもう私が教えることはなくなってしまいました」
「我々を襲うこともしませんでしたからね」
「分かったよ、じゃあさっさとその剣をぶっ壊して親子の対面と行こうぜ」
言葉を受けてプシーが棺桶を開くと魂の抜けたサタンの身体が露になった。十年近く時が経っているのにその身体は腐らずに済んでいるのはヘルソルジャーだからなのだろう。闇のソウルを身に纏ったヘルソルジャーの姿、魂が封印されても尚持続されているというのは便利なものだ。
「ああ『ダークブレード』」
奪ってきたレプリカの剣を床に置くと剣を抜き闇のソウルを纏わせ振る。パキン、という音とともにレプリカの剣が割れ闇のソウルが割れ目から剣を素材を残らず消滅させていく。それから数秒、剣が完全に消失した瞬間、突如現れた禍々しい気がサタンの身体を包んだ。
「おお、今この瞬間、サタン様が復活なされる! 」
興奮したプシーが声を上げ両手を広げたその直後、妖気が消失するとともにサタンの目がカッと見開かれた。
「懐かしいなプシー、ワッパー、ジャン」
「「お久しぶりですサタン様」」
三人が跪くとサタンの視線が唯一動かなかったオレへと向いた。
「久しぶりだね、父さん。いや、初めましてかな? 」
「父さん……だと? 」
サタンが眉を顰めたので剣を抜き闇のソウルを発動する。途端に彼は手を叩いた。
「おお、ガイトか。立派に育ったようだな、私の教育は成功したようだ」
「感動の親子の対面だ。それでは我々はこれで」
都合のいいことにジャンがワッパーを引き連れると部屋を後にし階段を下っていく音がした。
「教育? 」
三人が去ったのを確認して尋ねる。
「名家はソウルが遺伝するようだが何分、闇のソウルは私が初めてのようだからな、あれも役に立ったということか」
「あれ? 」
「貴様の母だ。名前は確か……まあいい、とにかく貴様がいる村をキマイラに襲わせたのは正解だった」
あれって……母さんのことか!
「そう睨むな……親の愛というやつだ。闇のソウルがあれば例え幼くともキマイラ相手に勝つことが出来ると確信していたよ。生存者が一人だけと耳にしたときは心が躍ったものだ。会えて嬉しいぞ」
「……オレも嬉しいよ、父さん」
歯を食いしばってかろうじてそう返すと剣を握る手に力を籠めるとそのままサタン目掛けて駆け出した。
「行けない! サタン様! 」
異変を感じたプシーが叫びサタンに駆け寄るももう遅い……はずだった。
「ご無礼をお許しください」
彼は思い切りサタンを突き飛ばす、その行動は予想外だった、間一髪彼は間に合いオレの剣がサタンの代わりに思い切り彼を貫く。
「ちっ……仕留め損ねたか」
「プシー……我が身を犠牲にするとは大儀である。そしてガイトよ、息子でありながら謀反とは……気に入ったぞ、貴様の力を見せてみろ」
そう口にしながらサタンは剣を抜いた。




