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「コンビネーション」

 爆発の煙の中、私達は勝利を(たた)えるため両手を合わせるとパチンと良い音が響き渡る。


「話していないのによく気付いてくれたわね、私が怒っているのが演技だって」

「……マリエッタを信じてたから」

「ありがとう。それじゃあ送ってくれたシェスティンさんの所に向かいましょうか、信じてもらえないかもしれないけど報告をしないと」


 そう口にしてその場を後にしようとした時だった。


「悪い癖だ、六十秒あるのだから三十秒は遊べるなんて考えるのは……」

 まさか、と思って振り向くとそこには左腕を失いながらも右腕に剣を持ち睨みつけている総司令の姿があった。


「そんな、あれを食らって生きているなんて」

「直撃なら危なかった。意表を突かれはしたが避けれないものではない。しかし、(いまし)めとしては……大きな代償だ。その礼に見せてやろう」


 彼が言い終えた直後、彼の剣から禍々しいオーラが出現しそのオーラに包まれた彼は全身が黒く筋肉質な禍々(まがまが)しいヘルソルジャーの姿となった。


「出たわね、闇のソウル」


 以前は成すすべなく敗北した力を前に首のクリスタルを握り締める。

 ……大丈夫、この前とは違ってディーネがいる。まだ近付いてない今なら目の前に私のソウルで岩を出現させてそれを斬っているすきにディーネのソウルで攻撃すれば……


「剣に纏うタイプの闇のソウルは近距離でしか戦えない。二人なら勝てる……そう考えているのか? 」


 考えが見透かされていることに驚くも有利は変わらない。じっと彼を見据え狙いを定める。


「確かに私は自我があるヘルソルジャーというレアケースだ、それ故に他のヘルソルジャーのような芸当は出来ない、だが……『デス・ウィンド』」


 彼が踏み込むのを見てソウルを発動しようとしたその時だった。

 ……いけない!

 根拠のない危機感が私を襲い防御のために私達の間に何層もの壁を出現させる。

 ……なんで私、防御を……

 その判断を後悔した次の瞬間、ズバッという音が耳に響く。

「……危ない」

 ディーネに身体を引っ張られ数歩下がった直後、私が立っていた場所に斬撃が命中し地面が(えぐ)られる。


「前に見た飛ばせるタイプの闇のソウルはこんなに威力がなかったのにどうして……」

「見ての通り、私の真の力、二つのソウルの融合だ。二つのソウルを掛け合わせることでさらなる力を引き出す、弱点もソウルの消費の大きさ程しかない。最もこんな真似ができるのは自我のあるヘルソルジャーである私くらいだろうがね」

「ソウルの融合、そんなことが……」

「……信じられないけど、受け止めるしかない」

「さて冥途の土産はもう済んだろう。時間だ、これで終わらせてもらう」

 

 彼はそう口にすると私達と距離を保ちながら走り始める。


「何を」

「……まさか、ソウルを貯めながら走っている」

「なんですって」

 

 ……マズいどころではないわよそれ、今あれを受けたら……悔しいけど止まっている最中ならともかく走っている彼に当てることは出来ないのはさっきので実証済、そうなると……


「ディーネ、貴方のソウルで跳ね返すことは? 」

「……さっきより強力な攻撃だと無理、他の建物を巻き込むことも出来ないし」

 

 そこに関しては彼も同じだろうけれど、彼と違って爆発が起きる分調整が難しいのだろう。街中でなければもしかしたら……と悔やむけれど仕方がない。

 ……それならば病院を背にするのは……駄目ね。

 病院を背に戦うなんて真似をしたら例え生き残ってもその後辿り着いた人達からこちらが悪者にされてしまうかもしれない。

 ……そうなると残る手は……避ける?


「ディーネ、さっきの攻撃どうして分かったの? 」

「……マリエッタが壁を出す前に彼の剣の構え方が見えたから、そこから斬撃の方向を予測した」

「凄いことするわね」

「……ガイトに教えてもらった。でも、今回は無理だと思う」

「そうよね、方向が分かっても……よね」


 彼は未だに私がせめてもの抵抗と繰り出す攻撃を(かわ)しながらもソウルを貯めているのが分かり見る見る剣に(まと)うオーラが大きくなっていく。

 それにしてもガイトね……確かにガイトなら何年も騎士団に所属している総司令の裏をかくような突拍子(とっぴょうし)もない作戦が浮かぶかもしれない。考えなさいマリエッタ、ガイトならどうする……

 ガイトになった気分で考える。すると一つの妙案が浮かんだ。一か八かだけれどこれしかない!


「ディーネ、ソウルは打てる? 」

「……うん、最後の抵抗にって準備してた」

「助かるわ、それなら私の言うように動いて」

「……分かった」

 

 彼女に作戦を説明すると何故か微笑んでから首を縦に振る。


「何を企んでいようがこれで終わりだ、喰らうがいい! 『デスウィンド』」


 彼が病院を背に思い切り剣を振り巨大な闇と風のソウルをこちら目掛けて放つ。


 「『コンプレスプロージョン』」

 

 それに対してディーネが迎撃(げいげき)のソウルを放った。

 互いのソウルがぶつかりドカン! と大きな爆発が起こるその直後、


 「『サモンロック』」


 私はソウルで岩を出現させる。その場所は……私の足元!

 瞬間、私とディーネは平らな岩に突き飛ばされる形で空中に投げ出されディーネのソウルが彼のソウルん消されるのを見下ろす。

 このまま気付かれずに上空から斬りつけて……とはいかないわよね。

 大雨の中彼が私達を見上げる。


 「まさか岩の形状を変えたとはいえ自らにソウルを放つとは……だが惜しかったな。空中では的にしてくれと言っているようなものだ」


 彼が剣を構え一閃(いっせん)する、狙い通り咄嗟の攻撃のため飛んでくる斬撃は小さかった。とはいえ、闇のソウルは直撃するとアウトなので最良の一撃で流石と言うべきなのだろう。

 ……でも、これなら。


「ディーネ! 」

「……うん! 」

 

 彼女が私を踏み台にして更に高く飛び攻撃を(かわ)す逆に踏み台にされた私は地面に落下して攻撃から逃れた。そして着地と同時に彼目掛けて全速力で走ると胸にクリスタルを押し付けソウルを流し込む。

 

 「『ロックブラスト』はああああああああああああああああああああああああああ! 」


 ズシャッという音ともに彼の身体から岩と共に赤黒い液体が次々と噴き出した。


「見事だ、マリエッタ、だが……お前だけは道連れにしてやる」


 最後の力で彼が左手で私の腕をつかみ右手で剣を振り下ろそうとする。

 ヘルソルジャーの生命力を侮っていた……最後の最後でヘマをしたわ。

 ゆっくりと振り下ろされる刃を前に生を諦め自分の詰めの甘さに呆れたその時。


「……させない」


 天から降り注いだ声とともにディーネが彼の右手を切り裂いた。


「おっ……がっ……サタン様……無念」


 剣を失った彼はそう言い残して動かなくなった。

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