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「偽りの結婚式」

 時は()ちヘルソルジャー討伐のための結婚式作戦の当日が訪れる。会場は以前学園対抗戦を開いたルドラ学園のスタジアムだ。ここでオレがマリエッタに惚れたという設定で民間人を巻き込まないようにこの場所となった。

 参列者はガラガラだと怪しまれるので学園長とオレの友達ということでアローさん、マリエッタの昔馴染みということで総司令が参加してくれて(ささ)やかな式ということになっていた。告知の紙を確認するとあくまで宣伝のメインは指輪で使われますというだけなので普通のオレなら「へーそうなんだ」位の内容だ。

 シャツの間に剣を挟み隠すように上着を羽織る。一見普通の正装だが迎撃準備はOKというやつだ。

 会場入場前の通路でマリエッタを待つ、すぐ現れた彼女は純白のドレスに包まれて普段の彼女からは想像できないほどに大人びて見えた。


「よくここまで嘘をつけたわね」

「マリエッタこそよく隠せたな、いやディーネには話したのか? 最近避けられてるような気がしたけど」

「話すわけないでしょ」


 早速、新郎新婦らしくない会話をする。まあ、本当はそうではないと言えばないのだから間違ってはいないだろう。


「それでは新郎新婦の入場です」


 宣言と共に扉が開く慌ててマリエッタと腕を絡ませると作られたヴァージンロードを歩いた。

 そこから友人代表スピーチなどが何事もなく行われ指輪をマリエッタの指にはめ誓いの順番になる。


「おい、このままだと本当にすることになっちまうぞ」

「私だって初めてをこんな形では嫌よ! 」

「それでは誓いのキスを」


 オレ達の(ささや)き声でのやり取りを無視して学園長が淡々と進める。


「お互い、覚悟を決めるしかなさそうね」

「そうだな」


 減るものじゃないし世界のためだ、それにマリエッタは悪い奴じゃないし……

 観念してヴェールを取り瞼を閉じた彼女に顔を近づける。

 今にも彼女の唇と重なりそうになるその時だった。


「羨ましいぞ死ねええええ! 」


 頭上から声が鳴り響く見上げるとそこには一人の人物が禍々しいオーラを足場として立っている。恐らく報告にあったヘルソルジャーだ。なかなかの小柄な男で狙いを定めるのが難しそうだ。

 ……それなら光の翼で飛んで。

 マリエッタから身体を離し剣に手を伸ばそうとしたその時だった。


「『エアスラッシュ』悪いけど、後輩の晴れ舞台なの、邪魔しないでもらえるかしら? 」


 声と共に斬撃がヘルソルジャーの足場を破壊する。同時に観客席から1人の女性が姿を現した。


「シェスティンさん、どうしてここに! ? 」

「言った通りよ、お邪魔だったかしら」

 

 ……邪魔とかじゃなくて何で情報が漏れているんだ? 騎士団の仕事仲間から聞いたとか何だろうか?


「ボクもいるよー」

「アタシも」


 シラさんとマリレーナさんも姿を現す。

 どうやら騎士団で情報が漏れていたようだ、でも彼女達なら分かってくれるはずだ。まだ、まだやり直せる……


「けっ……チョロチョロと出たところで烏合(うごう)(しゅう)が……」


 ヘルソルジャーは空に新しい足場を出現させそこに着地しながら口にすると信じられないことに幾つものボール状の闇のソウルが現れる、それはヘルソルジャーが手を振ると一斉にオレ達へと飛んで来た。


「『ダークシュート』ハハハハハ、指輪を壊しちまえばいいんだ、お前達を生かす必要はない」

「それはどうかしら? 」


 闇のソウルの前に現れた火球が勢いよく爆発し思うと闇のソウルは全て燃え尽きた。


「メイソン先生! 」

「話は聞かせてもらったわ、結婚式を黙っているなんて水臭いじゃない。ルドラ学園、職員一同、教え子の結婚式を守り通す」


 何処(どこ)に隠れていたのかメイソン先生に続きヴィリバルト先生などがステージへの入退場口から現れる。

 ……あの学園超室の物音は先生だったのか。断片的(だんぺんてき)にしか聞いていないのを広めるなんて何と迷惑な……でも、まだだ……まだ教師陣だけなら説明をすればやり直せる。

 震える手で剣を掴む、しかし、この状況で無効化をするとヘルソルジャーはあの高さから転落することになってしまう。いや、下手に気を使って死人を出すよりはマシだ。

 ……決意を固めて剣を抜いたその時だった。


「後ろががら空きよ、ヘルソルジャーさん」

「おい、ここは高度十メートルだぞ? そんな馬鹿な」


 振り返るヘルソルジャーの背後にはジェシーの姿があった。

 ……彼女も空を飛べたのだろうか? いや、違う。僅かに足場が輝きを放っているのを見ると氷の足場を作ったのだろう。だが、そんなことはどうでもいい。先生が情報源と言う時点で薄々そうではないかとは思っていたけど、情報が生徒にまで渡ってしまったのだ、このままでは……いや、まだ何とかなる……はずだ。

 ジェシーがみるみるうちにヘルソルジャーを凍らせていくのを見てぼんやりと考える。


「バカめ、手足を真っ先に凍らせたようだがそんなの何の意味もない」


 ヘルソルジャーは勝ち誇ると宣言通り、凍らされた手足を動かさずに空間に先程よりも多くの数の闇のソウルを出現させる。


「その特等席でお仲間がやられるところを見てい、な! 」


 そう口にすると自らの身の安全よりも指輪の破壊を優先したのだろう、先程よりも大きな数の闇の球をこちらに放つ。


「あんな広範囲だと私一人では」


 メイソン先生が口を開く、彼女の言う通りの結果になった。範囲の問題だ。あのヘルソルジャーの攻撃は大きさこそ小さいが全てが喰らったら終わりの闇のソウルであり広範囲の攻撃のため彼女一人では対処をしきれない。


「それならオレが無効化で……」


 剣を取り出したその時だった。


「……ガイトの幸せの邪魔をさせない『コンプレスプロージョン』」


 観客席から現れたディーネがソウル目掛けて火球を放つ、するとたちまち全ての攻撃は燃え尽きた。

 で、ディーネまで来た……もう、お終いだ。

 いっそさっきの攻撃で消えてしまえば良かった……なんて考えながらがっくりと項垂(うなだ)れた。

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