「突入」
誘拐犯の場所を特定後、近くの木のてっぺんにマリエッタを残すとディーネとフウトを連れて彼女の元へと戻った。
「二人ともここで降りてくれ」
「良いのか? 」
「ええ、ここに降りてその後ろくに動かないなら鳥か何かと勘違いするはずよ」
フウトが不安にマリエッタが答える。彼は納得を示すと木へと飛び移った。
「ディーネもだ」
「……分かった」
彼女も彼に倣い木に飛び移る。その直後フウトが額に手を当てる。
「待てガイト、君は今ここから動かなければと言った……まさか」
「ああ、突入はオレ一人で行く」
「なんだと」
「落ち着いて、動くと勘付かれるわ。それに私も無策で行かせるわけじゃない」
「マリエッタに大体の敵の位置は掴んでもらっているし探知を続けて貰っている。本拠地に着いたらオレが光のソウルで全部のソウルを無効化する。そしてジェシーを救いだしたら光の翼に変えて空を飛ぶ」
「そして地面に残っているのを私がガイアで串刺しってわけ」
「なるほど、光のソウルを合図に使うわけか」
「……それなら、私達は? 」
「ディーネとフウトは何かあった時に頼む」
「……分かった」
「ここまで連れてきといて悪い、人質がいなければディーネにアジトごと燃やして貰って解決なんだがな」
こんな時だが冗談交じりに口にする。
「……帰ってきてね」
「分かってるよ」
答えると数メートル先の館へと飛んでいった。
〜〜
大きな館の壊れた城壁を飛び越え地面がつくスレスレまで高度を落とすと館を見上げ内容を整理する。
ここまでに見張りはいないがドアの側に二人、各部屋に一人ずつだが二階の階段側の部屋だけ四人。
恐らくジェシーがいるのは四人がいる部屋だろう。それならば、二人をやった後に援護が来ないうちに救い出す。
「よし、行くか」
覚悟を決め地面を足に着けると同時に木製の扉を蹴飛ばす。
バンっと大きな音が鳴り扉が開き直後奇妙な音がした。どうせ足がついた時点で探知されているんだ。それなら派手な方が良い、加えてこんな開け方をするのはいない。今ので一人、扉の裏に隠れていた者がダメージを受けたはずだ。
「なんだ、てめえ! 」
光の翼を引っ込め無効化の方に切り替え男に突っ込む、何も知らない男は余裕の表情で床に剣を刺した。
「なんだ、なんでソウルガッ……」
戸惑う男に剣を突き刺し抜き取る、男が力無く地面に倒れるのを確認する前にもう一人の扉で強く打ったのだろう、剣を落とし手を摩ってる男にも同様に剣を突き刺した。
「ぐふっ……」
念のため地面に倒れた男二人の頭を突き刺すと階段を探す。
「しまった、詳しい内装が分からないのは痛いな」
僅かに離れた階段を睨み走り出す。
「なんだ? だ、だれ……」
騒ぎを聞きつけた一人に見張りの剣を投げつけて黙らせると階段を駆け上がり目的の扉を開いた。
予想的中、そこには三人の男と鎖で繋がれたジェシーの姿があった。
「なんだ貴様は」
「お前らこそなんだ、なんでジェシーを誘拐した」
「ジェシー、おいおいこいつ貴族様を呼び捨てかよ」
「貴族? 」
「知らないのも無理はないか、このお方は遠い雪の国の貴族様の娘なんだよ」
「なんだって? 」
驚き目を見開く、確かにジェシーは喋り方が大人びていた。でもそんなことはしなかったしそもそも隠れてアルバイトをしていたぞ、そんなジェシーが貴族だなんて話はにわかに信じ難い。
「まあどっちでも良いさ、お前はどうせ死ぬんだからな」
「その通りだな」
男に同意する。
「こいつやけに素直じゃねえか、なら死ねえ! 」
手前の男が剣を降る、オレはそれを躱すと男の首を切った。
噴水のように血を出す男の胴体を蹴り飛ばす、たちまち男達も血塗れになった。すかさず距離を詰め剣を降る。
「な、なんだ、目が……ぐっ」
「く、くそ、何が……ヒッ! 」
最後の一人となった男が目を開く、でも男に出来たのはそれだけだった。
「言い忘れてたよ、どうせ死ぬのはお前達、な! 」
そう告げると男の胸に剣を突き刺した。
「おいなんだ! 誰か来たのか! 」
随分と騒がしくなってきた、時間はなさそうだ、ジェシーの鎖を斬り彼女を抱える。
「そこまでだぜ」
声をかけられ振り向くとそこには十数人の男達が廊下からこちらを睨んでいる。
「一人でこれだけのことをやってのけたなんて信じられねえが、もう終わりだ。お嬢様をそこに置きな」
「嫌だと言ったら? 」
「お前の命はねえ」
元々助ける気なんてない癖に……まあそれはオレも同じか。
「それは残念だ、じゃあな」
……頼んだぞ、マリエッタ。
光の翼に切り替えると空を飛ぶ。
「馬鹿が、飛べるからなんだってんだ鳥のように撃ち落としちまえ! 」
男が命令したその直後
「うわああああああああ! 」
床から次々と岩が出現し周囲から悲鳴が起こる。マリエッタがやってくれたのだ。
「バカな、こんな……こんなあああああああ! 」
岩は次々と生え人を貫き最後に命令していた男を貫くと満足したかのように生えてこなくなった。




