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「奪還作戦」

 誘拐事件から一時間、薄暗い騎士団の支部の個室で一人の男に尋問(じんもん)を受けていた。


「君はなぜ一度現場から去ってまた戻って来た」

「気が動転していて……」

「君が殺した男達の剣がなくなっていたが君がやったのかね」

「はい、剣を捨てれば生き返るかなと思って近くの海に捨てました」


 嘘をつく、本当は今後のために逃亡した際にホテルへ行きマリエッタに三本とも預けた。


「ふむ、光の剣士もまだ学生ということだな」

「誘拐犯は捕まりました? 」

「まだだ」

「どうしてジェシーが」

「分からない」


 男が答えた後に一人の男性が入ってくる。


釈放(しゃくほう)だ、君は剣士候補生で場合が場合だからな。引率(いんそつ)の先生がいらっしゃったぞ」

「ありがとうございます」

「君はよくやった、後のことは我々に任せて修学旅行を楽しみなさい」


 ……冗談じゃない、誘拐を無かった事にして楽しめる訳がない。

 心ではそう毒づきながらも「はい」と答えると男について部屋を後にした。

 ロビーではメイソン先生が心配そうにこちらを見つめていた。


「ご迷惑をおかけしました」


 彼女は頭を下げるとオレに声をかける。


「行きましょ」

「はい」


 彼女の後についていく。


「どうして一人で追いかけたの? 」

「二人のソウルは街中では使用できませんし追わないと逃げられると考えたからです」

「そう」

「何も言わないんですか? 」


 騎士団の世話になったのに一言で済まされたのが拍子抜けで尋ねる。


「ええ、私が貴方でも同じことをしていたから……ただ、私のお兄さんも亡くなる前はそうだったみたい。貴方とは違ってソウルが無しでも戦えるって証明をしたかったのが動機だけど……」


 先生のお兄さんはソウルを使えない状態で剣士になったもののモンスターにやられて死んでしまった、という話を思い出す。


「無茶だけはしないでね」


 そう言うと再び彼女は無言になった。

 ……ごめんなさい、今夜オレはもう一度無茶をします。

 オレは心で先生に謝罪しながら彼女の後を黙ってついて行った。


 〜〜

 消灯時間後、部屋を抜け出したオレはディーネとマリエッタが泊まっている部屋へと入る。


「よし、作戦を始めよう」

「本当にやるの? 」

「……騎士団に任せるとかは」


 マリエッタが首を傾げる。


「ダメだ、騎士団が大勢に動いちゃ向こうに探知される。街中の戦闘になった場合と考えてウィンディを送り込んできたんだからガイアのソウルを使うのが一人はいて探知しているはずだ」

「なるほどね」

「それでどうするの? 三人とはいえ探知されることに変わりはないんだろうけれど」

「そこなんだけど、マリエッタは地面にかかる重さで探知してるだろ? それは剣が木の上に刺さったとかでも出来るのか? 」

「それは……人の感度次第だけれど出来るわ」

「それくらいの物を気にするか? 」

「気にしないわ、小さいと動物かもしれないもの」

「突然人一人分の重さを持つ何かが木のてっぺんに止まってしばらく動かなかったりしたら? 」

「鳥だと思うでしょうね」

「それなら大丈夫だ」


 確信を持って口にすると二人が首を傾げる。


「……何が大丈夫なの? 」

「考えたことが出来るってことさ。簡単な事だ、オレがマリエッタを抱えて飛ぶからそこから木の上で街外れの空き家を手当たり次第に探知してくれ」

「なるほど、それなら見つかる心配もなさそうね」

「……一ついい? 」

「なんだ」

「……それ、ガイトが考えたの? 」


 質問の意図が分からない。


「なんでだ? 」

「……凄いなって」

白状(はくじょう)するとそこまで思い浮かばなかったのよね」

「なるほど」


 納得を示す。そりゃそうだ、思えばいつもオレはその場の思い付きで行動していて事前にここまで確実と言える対策を決めて話し合うなんてことはほとんどなかった。

 それもそのはずだ……


「じゃあオレも白状するよ……入っていいぞ」

「話は聞かせてもらったよ、剣が四本あると言うことで協力させてもらう。ボクにとってもジェシーは友達だからね」


 オレの声に従いフウトが入ってくる。


「なんだ、彼が考えたのね」

「そういうこと、それじゃあまずはオレとマリエッタで行ってくる」

「一旦帰ってくるなら場所さえ分かればあとは騎士団に連絡すれば良いじゃない」

「その騎士団はどうやって探知されずに移動するんだ? 」

「あ」


 マリエッタがハッとする。


「短時間限定で三人までなら飛べることが出来るのは前に確認してある。行くぞ」


 マリエッタの手を取ると窓へと向かった。

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