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「幻の五回戦」

 光の翼で宙を舞いスタジアム中央で着地し宣言をする。


「ルドラ学園からはオレを出してください! 」

「おおーっとこれは早くも光の剣士が立候補だ」


 急な決意表明に動じずにヴィリバルト先生は司会を進行する。


「さあどうするルドラ学園」


 選手達と生徒達を交互に見るも辺りはシンと静まり返っていた。


「オラオラオラァ! 三期生を差し置いて出るって言うんかァ! 」


 最もかもしれないヤジが飛ばされる。

 ……ダメか、いや、それなら三期生の立候補者と戦ってでも……。

 決意を胸に声のした方向を見る、声の主は……ヴィルゲルさんだった。

 ……どういうことなんだ、何故ヴィルゲルさんがあんなヤジを?

 悩んでいる内に彼が次の言葉を発する。

「それなら勝って来いよォ、頼んだぜェガイトォ! 」

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオおおおおお」

「やってくれ光の剣士! 」

「期待してるぞ! 」


 彼の声を皮切りに歓声が上がる。


「頼んだよ、ガイト君」

「締めは任せた」

「お膳立てしてあげたんだから決めなさいよ」

「……頑張って」

「ありがとう、皆」


 観客、そして選手からの応援を受け晴れてオレは五回戦の選手として認められた。しかし、そこでノーブル学園の校長が立ち上がる。


「静粛に、いや別に光の剣士の参戦を否定するわけではありません。ただ、うちのガイアのマーブルと光の剣士では模造剣の映像で決着を付けるのは難しいと思いまして、この試合は真剣をしようするというでいかがでしょうか。無論、危険ならそこで試合を止めて頂いても結構」


 この提案に会場は更に沸き上がった。オレにとってもこのウォルバーストさんの剣で戦えるというのなら願ってもない提案だ。


「オレは問題ありません」


 校長に負けじと叫ぶ。


「それでは、この試合のみ真剣を使用した勝負とします」


 ヴィリバルト先生が叫んだ。


 ~~

 対戦相手であるマーブルという男性と剣を構え向かい合う。


「それでは、両者位置について! 学園対抗戦前代未聞の五戦目、ルドラ学園、ガイトVSノーブル学園、マーブル……試合開始! ! 」


 開始の宣言と共に光の翼を出現させて対戦相手目掛けて動く、悪いが速攻で決めさせてもらう!


「貰ったァ! 」

「そう来ると思っていたよ『サモンロック』」

「何! ? 」]


 どうやら速攻とはいかないようだ、彼はニヤリと笑うと地面に突き刺した剣からオレの目の前に高さ二メートルほどの太い柱を出現させる。


「うおっ」


 急速旋回し右へと移動して回避、残念だがこの攻撃は読まれていたようだ。


「それなら……」


 改めて方向を変えて攻撃を仕掛けようと彼目掛けて飛ぶ。


「『ロックマウンテン』」

「うおっ」


 瞬間、目の前から柱が現れて再び回避、それから次から次へと岩の柱がオレを捕えようとフィールドから飛び出す。


「スタジアムに遠慮なしか」


 悪態をつきながら急上昇、出せる岩の高さは流石に三メートルが限度だったようで天井まで昇れば安全だ。

 だが困ったことにこの時間を使って彼は自らを岩で覆ってしまったようで彼が立っていた場所には大きな岩が立っている。

 このまま睨み合っていたら埒があかない、となるとオレから仕掛けるしかなさそうだけれど奇妙な事にオレの戦法は全て見透かされている気がする。思えば去年出来る光のソウルの全ての能力を見せてしまったため仕方ないと言えばないのだが、こうも念入りに対策されるなんてことは予想していなかった。

 いや、待てよ……対策しているということはオレの行動は読まれているわけでつまり裏を返せばオレがオレの行動を読めば裏をかけるということ……か?

 考えるほど頭が痛くなりそうだったので理屈はやめて次に何するべきかを考える。

 オレならばやることは一つ、岩に向かって突撃だ。それで人がいるであろう高さの場所に剣を突き刺せば勝ち……しかし今突き刺すのは真剣なため殺人に繋がるので不可能だ。となると……ん?

 彼がいたはずの場所に現れた巨大な岩にポッカリと穴が開いているのが視界に入る。

 誘っているということか、ならその誘いに乗って岩の中に入って奴より早く剣を振るう……そう考えるだろう。

 これの裏を書くってどういうことだ……?

 入口の真上で待っているとかか? いや、そもそもガイアの探知は体重だとマリエッタが言っていた。それならば飛んでくるオレを探知は出来ない。そうなるとオレを地面に着地させる必要があってそのためには……

 何故か頭が冴えそこまで思考が回り一つの結論に辿り着く。

 ……もしかして、あの中にいないのか?

 信じられないことだ、ただこの説を確かめる方法が一つだけあった。


「『インバリード』」


 高度を下げ着地する寸前でソウルを光の翼から無効化の剣に切り替える。これで着地点を狙われることはない。安心して地に足をつけると剣に光を集中させた。


「ライトニングブレード」

「おおーっと防戦一方かと思われたガイト選手、ここに来て巨大な光の剣を作り上げた! あれで斬られたら一たまりも無さそうだ! しかしあれは真剣、ガイト君落ち着いてください! 」


 殺傷力(さっしょうりょく)のないただ大きく見せただけの光の剣を新技だと錯覚した司会のヴィリバルト先生が慌てて声を張り上げる。

 しかしオレはそれを無視して思い切り剣を振り落とした。


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― 新着の感想 ―
[良い点] この戦闘を書きたかったのだろうという、作者の熱い思いが伝わってきました。
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