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「学園対抗戦開幕」

 学園対抗戦当日、今回の会場はルドラ学園ということでオレ達は移動をすることもなくいつも通りの寮生活でその日を迎えた。今回の会場は以前演習で訪れた森の奥にあるというスタジアムだ。ステージばかりか両学園の生徒が席についても余裕があるほどの広さだった。


「まさか、森の中にこんなスタジアムがあったなんてな」

「街中ではこんなに大きいのは置けないわね。それに二つも」


 マリエッタが驚いたような声を上げる。確かに二回戦用のと二つもこのクラスのスタジアムがあるというのは凄いものだ。


「さあ、遂に毎年恒例のルドラ学園とノーブル学園の対抗戦が幕を開けます! 一回戦の敵はこちら! 」


 フレイムの二期生用の席に着くとほぼ同時に司会のヴィリバルト先生の声援と共に巨大な檻が運ばれる、中には翼こそないがドラゴンのような巨体のワームが入っていた。


「対抗戦に凄いの連れてきたじゃない」

「学園じゃ違うのか? 」

「ええ、連れてきても巨大猪とかね」


 どうやらオレ達の学園は相当景気が良いらしい、学費が高いからと言えば当然と言えば当然なのだろうか。


「それでは先行のルドラ学園の選手達の入場です」


 声に従いヴィルゲルさん、ヘルガさん、イワン、フウト、レベッカが姿を現す。


「去年みたいに戦力を分けてきたか」

「知らなかったの? 」


 意外だったらしくマリエッタが尋ねる。


「ああ、こういうのは知らない方が楽しいだろ? 」


 と言っても試合を見られるとは限らないけどな……

 立ち上がろうとすると腕を掴まれる。


「どこへ行くの? 」

「トイレだよ、トイレ」

「さっきから観客席と学園長ばかり見ていたようだけれど学園長が好きなの? それとも指輪に興味があるの? それにその貴方の腰の剣、模造剣ではなく本物よね? 」


 矢継ぎ早に質問が飛び出すも彼女の眼は全て見透かしているぞ、と告げている。


「寮長と学園長にウォルバーストさんにも試合を見せたいと言ったら今日だけ許可をもらえたんだ」

「じゃあ、試合を見せて上げないといけないんじゃないの? なんなら帰ってくるまで私が預かってあげようか? 」

「分かったよ」


 観念したオレは席に着く。


「平気よ、去年の件も踏まえてこの会場は何十人の剣士が警備についているから、学園の制服を着てまぎれている人もいるわ」


 彼女が耳に囁く。


「それ本当か? 」

「ええ、だから安心して試合を見学しましょう」


 警備が? それなら安心できるけれど……


「本当だろうな? 」

「嘘をついてどうするのよ、例えばほら、あの人、私達と同じフレイムの制服を着て二期生の固まっている席に座っているけれど、見たことある? 」


 言われて視線を追い二期生フレイムに用意された席に座っている男性を見る。彼女の言う通り制服はフレイムの制服を着ているけれど見たことがない人物だった。


「信用するよ……てなんでそんなことを知っているんだ? 」

「こ、ここに来るとき偶然会話を聞いたのよ! 」


 彼女はやけに慌ててそう答える。

 ……なるほど、耳にしたのなら納得だ。


「分かったよ、じゃあ優秀な剣士に任せて見学をするか」

「それがいいわよ、ほら、もう始まる」


 促されてフィールドに目を向けると五人が剣を構えワームが今にも解き放たれようとしていた。


「それでは、一回戦開始」


 高らかな宣言と共にワームが大きな叫び声と共に檻から飛び出た。

 ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

 雄たけびを上げてワームがドラゴンのような顔と恐ろしい牙で噛み殺そうと五人に襲い掛かるのを彼らはソウルと俊足(しゅんそく)を駆使して(かわ)す。


「まずいわね、防戦一方よ」

「いきなり出てきたらな。ドラゴンと違って翼がない分移動手段が足だけではっきりしてるから動けるんだろうな」

「そうねえ……待ってドラゴンなんて連れてきたの!? 」


 マリエッタが驚くのに「ああ」と答える、そうこうしているうちに彼らは何か作戦が決まったようでバラバラに動き出す。レベッカ一人を正面に残して。


「まさか、実戦でいきなりあれをやる気!? 」

「ああ、多分な」


 ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

 何も知らないワームが一人残ったレベッカに襲い掛かる、そして歯が彼女に当たる直前でソウルで地面から岩の柱を出現させた。

 ウオアアアアアアアアアアアア!

 岩がワームの顎を押しワームの口が閉じるばかりかのけぞらされる。それを合図に四方から地氷炎風の

 攻撃が直撃するとワームは動かなくなった。


「き、決まったああああああ! ルドラ学園早くもワームを撃破しましたあああああああああ! 」


 司会の声とともに歓声が上がる。


「冷や冷やしたわ」

「流石にあんな直前で壁を出せとは指示してないと思う、彼女、凄い度胸だ」


 一期生に見せ場を……か

 懐かしさに浸りながら剣に手をかけた。

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