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「裏切りの一撃」

集合場所である建物に向かうとそこは入学試験の時に使用した建物で以前アローと対戦したその場所には大勢の生徒が壁にでかでかと貼られている一枚の紙に群がっていた。トーナメント表のようでそこに対戦相手と対戦の順番が記されているようだった。


「見てくるからどこかで(くつろ)いでいて」


一人でみれば事足りるのでディーネにそう告げると人混みをかき分けて張り紙に一直線に向かう。


「押すな押すな」

「げっ、俺いきなりバーンさんかよお」


様々な声に押しつ押されつで上下左右に動く安定しない状況でひたすらオレ達の名前を探す。左上から順に見ていこうとするといきなりバーンの名前があった。

……成績上位だけに一番目か。とするともしかして。

冗談交じりな推測に従い右下に視線を向けるとそこには残念なことにオレ達の名前が記されていた。

……なんということだ

言葉を失う。まさか本当にこの貼り方では最下位を連想させる右下にオレ達の名前があるとは、巻き込まれたディーネにはとんだ災難だろう。とはいえ、これは気の持ちようでもあり見方を変えればオレとバーンの対戦は決勝戦ということで盛り上げ上手にも見える。それに一番最後ならクラス全員の実力をじっくりと観察することができる。

……とりあえず、ディーネにも伝えなくては。

用件は済んだので彼女のところに戻ろうと今度は逆向きに人混みをかき分けながら進みようやく抜け出したかと思うと三人の生徒が目の前に現れた。バーンとその取り巻き二人だ。ショートヘアでギロリと悪党のような鋭い目をしている平均的な体型のバーンに七三分けに長髪に細長い目に細長い体、もう一人はオールバックに大きな丸い目にガタイの良さと見ていて飽きないような個性的な三人だ。


「よう、どうやら最下位にふさわしく右下で最終戦のようだな。オレ様が手を下すまでもなく敗退となりそうで残念だよ」

「なんたって一回戦は俺が相手だからな」


長髪の男が自らの親指を自分に向ける。どうやらバーンとオールバックの男性が組んで残った長髪の男がオレと一回戦で戦うことになったらしい。


「アローさんに勝って浮かれているようだが入学試験であの人が本気で戦っていないに決まってるだろ。俺が目を覚まさせてやるよ」


三人は言いたいことを言うと満足そうにディーネとは逆の方向へと歩いていく。


「本気を出してないか、まあそうなんだろうな」


オレ自身、入学試験は『ソウル』もなくそれを抜いても本気を出したとは考えていなかった。それ故にもっと自分を磨くという言う意味でもトーナメントで勝ち上がってクラス対抗戦、そして学校対抗で戦いたいのだ。そのためにもオレはここで負けるわけにはいかない。ぎゅっと拳を握りしめバーンの背中を見つめる。

……必ず決勝まで勝ち抜いて倒してやる

静かに闘志を燃やすと背を向けディーネの元へと向かった。


~~

ディーネに順番の事を伝えるとオレ達は見学席である二階から先ほどまで立っていたステージを見下ろす。順番を中途半端に気にする必要もないので左端の最前列の特等席だ。一番最初のバーンも似たような条件で試合が終わった後に堂々と隣に座ってくるという可能性も考えられたけれどまあ、そこまで堂々とはしてこないだろう。既に剣を構えているバーンに視線を向ける。


「ディーネ、よく見ておくんだ。おそらくオレ達が決勝で戦うべき相手だから」

ディーネが頷く。それと同時に先生が試合開始の宣言をした。

「うおおおおおおおおおお」


敵味方二人ずつがそれぞれ敵と五メートル味方と二メートルほど離れている中、雄たけびとともにバーンが目の前に対戦相手に向かっていく。


「はああああああああああ」


相手が間合いに入ったのを確認すると大きく横に剣を振るった。するとバーンは素早くバックステップをして一歩後ろに下がった。


「なんで……」


男の驚きとともに剣が空しく空を切る。それが終わるか終わらないかの内にバーンが再び走り出した。


「もらった! 」


今度はバーンが剣を振る。既に勢いよく剣を振りぬいてしまった男はその一撃を防ぐ術はなかった。


「ぐあっ! 」


剣で斬られた男が苦痛の叫びをあげる。早くもバーンは一人を倒した。この戦いは二人が一撃をそれぞれ受けたら敗北のルール、しかし既に勝負は決していた。


「ボブ! 」

「よそ見をしている場合か! 」


バディを心配した男のもとにバーンのバディが立ちはだかり勢いよく剣を振り下ろす。


「くっ」


男は咄嗟に剣を真横にしてガードをしようとする。


「甘い」


勝ち誇った声とともにガンと鈍い音と共に男は剣を落とした。


「終わりだ」


剣を落とした男に次の一撃を防ぐことはできない。


「ぐああああああああああああああ」


男は一撃をその身に受け倒れこんだ。


「そこまで、勝負あり! 勝者、バーン&ルーカス」

「……強い」


試合を見ていたディーネが呟く。


「ああ、バーンは自分が動くことで相手は気が動転していて足がすくんでいた。そこをついてあえて大振りで振らせてそこを突いたんだ。しかもそれでパートナーの動揺まで誘ったばかりでなくもう一人のルーカスっていう男は敢えて相手の剣先に叩き込むことで剣を落として自らのパワーが強靭であるかのように次の対戦相手になり得るオレ達ギャラリーに見せつけた。やっぱり手ごわそうな相手だ」


言い終えて初めてディーネがオレを見つめているのに気が付く。


「どうした? 」

「……いや、そこまでの駆け引きがあったなんて思わなかったから。やっぱりガイトは凄い」

「そんなことはないよ。それよりも決勝まで行ったとしたらオレがバーンを抑えるとしてもディーネにはあの男を抑えてもらわないといけない。幸い、春というのと他学年他クラスとの兼ね合いもあって今日は一回戦で終わりで決勝までは三日ある。それまでに対策をしよう」


オレの言葉にディーネは「そうだな」と小さく返した。


「次、ライオ&ルドス VS ディーネ&ガイト」


先生に名前を呼ばれオレ達はリングへと向かう。階段を下りようと向かうとそこにバーンの姿があった。


「楽しませてもらうぜ」


彼はそうとだけ言うといやらしい笑みを浮かべる。初戦敗退を予想しているのだろう。

……お前の思い通りにはならない

そう心で宣言し階段に足を踏み入れ下るとステージの所定の位置につくと剣を構える。昨日は気が付かなかったがこの模造剣にはオレの名前が刻まれていた。

……優勝したらこの剣を掲げてもいいだろうか

そんなことを考えて気持ちを高めると対戦相手の二人に視線を向ける。一人はバーンの付き人の長身、もう一人はなんというか普通の体格の男で体格による有利不利はなさそうだった。右に立っているディーネに視線を向ける。彼女と相談して既に作戦は決まっている。奇しくも最初はバーンと同じ戦法でオレが一人を斬ったら即座にディーネともう一人を狙う、というものだ。嬉しいことに目の前にはバーンの付き人、相手にとって不足はない。


「それでは、試合開始! 」


試合開始の合図がされた。それと同時に駆け出そうと足に力を込めようとしたその瞬間。

ブォンッ!

瞬間、素早く、鋭い風を切る音が右側から鳴り響く。


「……っ! 」


咄嗟に右側に剣を向けるとガアン! と剣と剣が激しくぶつかる音が響き渡った。

……どういうことだ?

目の前の光景が認識できず一瞬頭が真っ白になる。


「なんでだよ……」


弾かれた剣から態勢を立て直し再び向かってくるディーネに対してオレは思わず呟いた。

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