「三人で」
今回から視点がマリエッタから主人公のガイトへと戻ります。
翌朝、オレがロビーのを通るとディーネが待っていた。一日振りなのに無性に懐かしさを感じる。
「……おはよう、ガイト」
「おはよう、約束守ってくれたみたいだな。朝食の時に見かけなかったから冷や冷やしたぜ」
「……うん、ありがとう、約束した」
「ギリギリだったけどな……となるとオレももう一度謝った方が良いのか、いや、この場合は礼を言うべきなのか? 」
「……それよりも、ガイトにお願いがある。これを聞いてくれるのが一番だと思う」
変わった言い回しに首を傾げる。
……お願いって何だ?
まさか今度はオレが何か様子がおかしいという理由で空を飛んでディーネの部屋、女子寮に入ったことでオレを脅すとかじゃないだろうな? あらゆるトラブルとか全部オレのせいにされるであろうことを考えるとそれは面倒だぞ。
いや、ディーネに限ってそれはないか……
即座に自身の予想を否定する、となると何なのか見当もつかない。観念して彼女の言葉を待つと意外にも彼女はオレから顔を背けてオレから死角となっているロビーの柱を見る。するとそこから驚くことに茶髪でショートヘアのマリエッタが姿を現した。
「お、おはよう」
「おう、おはよう」
昨日の今日の出来事でぎこちない挨拶を交わす。ていうか、何でディーネとマリエッタが一緒にいるんだ? 脅迫した者とされた者だろ?
驚くオレにディーネは言う。
「……私からのお願い、今度から三人で動こう。三人でバディ」
「どうしてそうなったんだ、いや、マリエッタはそれで良いのか」
「ええ……じゃなくてええ! ずっとガイト君と仲良くなりたかったから! 」
彼女が途端に抱き着いてくる。
「ちょっと待て、いきなりなんだそれは」
「……ちょっと」
突然の行動にマリエッタの手を掴んだディーネがオレから離れると何やらヒソヒソ話。
「……それで行くの? 大丈夫? 」
「ごめんなさい、でも、昨日これで皆に見せびらかしてしまったからこれしかないのよ」
「……わかった」
全神経を耳に集中するが何も聞こえてこない。
もしかして、今度はディーネが脅す側になったんじゃないだろうな? いやだからそれは無いだろう。じゃあ、なんであんなに仲良くなっているんだ……分からねえ。
「分かったよ、ディーネ、マリエッタ、三人で行こう! 」
「……ありがとう」
「ありがとう、ガイト君」
歩き出すと彼女達は慌てながらオレの後を追いかけてきた。




