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○<9

作者: ロック
掲載日:2021/08/23

 私立探偵というのは稼げない。

 それは、探偵事務所を経営している者なら誰だって分かるはずだ。

 稼げる仕事なら大量にあるわけだし、彼の収益の殆どは探偵業としての活動よりも、ネット配信や投資の配当、そして企業の業務委託等が収益源だ。

 もっとも、彼には探偵としての実績はあるものの、彼は性格や態度に問題があり、なかなかクライアントが集まらない状況がある。

 さらに、彼は探偵としての多少の才能はあるものの、クライアントに対する配慮も足りない。そして積極的に営業もしないため、看板だけがある状態である。


 私立探偵ジュン。

 マッシュヘアの22歳の探偵であり、およそ探偵とは思えないほどのカジュアルな服装と、部屋中にモクモクと漂うタバコの煙は、サウナの湯煙を彷彿とさせる。

 そんな彼はとある失踪事件に関心を持った。

 インターネットで配信している少女達の失踪事件。

 そして被害者の遺体の首元元には縄で括りつけられたような痕がある。

 容疑者は、同じく配信者をしている人間と考えられていた。

 しかし、どうにも辻褄が合わずに事件は迷宮入りとなっていた。


 配信に疎い、警視庁サイバー犯罪対策課は、ジュンに業務を委託することも多い。

 そして彼は数々の難事件を有り余るインターネットの知識で解決していったという実績がある。

 登戸警部が彼の探偵事務所に赴くと、事務所からは大きなエレキギターの音が響いた。

 そして、登戸が探偵事務所のドアを開けると、彼はむせた。

 ショートピースの臭いが充満した探偵事務所は、彼の嗅覚を痛めた。

「なんて悪臭だ!」と彼がこぼすと、ジュンは消臭スプレーをロッカーから取り出し、事務所の消臭を始めた。

「何の用ですか?警部さん」

「君が署でも有名な…探偵の山下ジュンですか」

「はぁ…僕は山下探偵事務所、所長のジュンですが」


 部屋中に消臭スプレーをかけた後に、警部は今回の事件に関する資料を提示した。


「で、今回の事件なんだが」

 ジュンは資料を読んだ。

 失踪事件の被害者は、15歳の少女が2人、14歳の少女が3人、16歳の少女が5人で、そのうち6人は、遺体として発見された。

 そして、容疑者リストを彼は見つめた。

 ・アプリを通してライブ配信を行なっている26歳男性A

 ・36歳無職のゲーマーの男性B

 ・17歳の少年C

 しかし、容疑者リストを見ながら、ジュンはボリボリと頭を掻きむしった。

「なんか、みんな人殺しとかしなさそうじゃないすよね。

 なんだろう、容疑者リストにいる彼らが僕には犯人だと思えない。」

「3人には共通点がある。

 彼らのツイートには、猟奇的なものが多いため、殺人願望があるように思える。

 また被害者達の住居からある程度近い」

 ジュンは、再度ボリボリと頭を掻きむしった。

 死体の発見場所や日時に関する資料を見つめるジュン。


 話し終えた警部が席をあとにすると、ジュンは暗号化された画像や動画ファイルを検索できるソフトウェアを開発したリア株式会社の代表のノエルに電話をかけた。

「ノエルバートン、俺だ。インターネット探偵のジュンだ」

「やあノエル。どうしたんだ」

「君の会社が開発したアプリケーションのベータ版を使いたいんだ。」

「…ほう?用途を確認したい。」

「警視庁からちょっとした依頼があってね」

「オフコース。構わないけど、入金後にファイルを送る。500万だ」

「・・・たっけえ」

 ジュンは頭を抱えながら

「経費で落とす…」とパソコンで500万円をリア株式会社の口座に500万円を振り込んだ。


 そして送られた暗号化されたインターネット上の画像を検索するソフト。

 ダークウェブの中にも暗号化され、様々な手段を行使しないと見られない画像ファイルも数多くある中で、彼はレタッチで高画質化させた遺体の画像をソフトウェアに読み込ませ、そして、ソフトウェアはダークウェブブラウザを立ち上げ、数多くある画像の中から、同一のサムネイル画像を探した。


 そして、被害者が殺される様子を捉えた動画をインターネット上で発見した。

 サーバーは、フィリピンに置かれており、防弾ホスティングが利用されている。

 どうやら、リンクから住所の特定はできないようだった。


「なるほど。こちらの行動は既に読まれていたか。」と独り言をこぼし、ジュンは動画にアクセスする方法をいくつか考えた。

 ダーク・ウェブにアクセスできる方法が現状においてないとすると、犯人の顔面をレタッチして、高画質化して特定するのが早いのかなとも考えた。

 しかし、犯人の顔は黒いマスクで覆われており、特定が難しい。

 凶器は鉈や鋸、鈍器、そして時折日本刀のレプリカ、そして銃であった。

 ジュンはこのサイトにアクセスして欲しい旨をウクライナのとあるIT企業に依頼した。


 依頼から3時間後、動画にアクセスができた。

 どうやらこの動画は会員限定コンテンツらしく、その会員はIDとパスワードが付与されるらしい。

 ジュンはチュニジアのサーバーを経由して、IDとパスワードを入手する手続きを行おうとしたが、部外者は一筋縄でいかないようだ。

「仕方ない」

 ジュンは動画のアクセスログから、このサイトにアクセスしたパソコンの個体管理番号を入手。そして、そのパソコンをサーバー経由でハッキングし、動画を見られる状態にした。


 その動画に写される猟奇的な殺人、まるで一つのコンテンツのような娯楽性がある。

 撮影場所は様々だが、大体は山だ。

 動画をしっかり見ると夕方チャイムの音が重なって見えた。

 それは、K市のチャイムとO市のチャイムであり、ここがK市とO市の中間部にある山だということが判明。

 …しかし妙だった。

 犯人の動きが人間らしくない。


 ジュンの中で何かが閃いた。

「そうか、謎は全て解けたぞ!」

 ジュンは登戸警部を呼んだ。

 そして、ジュンはゆっくりと登戸警部に話した。

「これはロボットによる犯罪です」

「ロボットだって!?」

「そうです…そして、そのロボットは3Dプリンターを用いられて作られた。

 ロボットの個体管理番号は、E3850。

 様々なサーバーを経由して判明した事実としては…このロボットが犯行を行い、有料コンテンツとして、動画を配信した。

 インターネットには、無数に殺人動画が転がっているが、日本国内の動画の大半は、殆どがサーバーを特定され削除されてしまう。

 そのため、特定されないようにファイルを完全暗号化し、対策を行った。

 僕は、その動画にアクセスしているパソコンをハッキングして、犯人の特定を行なった。

 しかし、これは人間の犯罪ではない…

 正確にいうと、遠隔操作型のロボットを用いて行われた犯罪だ。そして雨の日に犯行が決行されたことを考えると、犯人は溶解性の人工皮膚を被ったロボットにより犯罪が行われた。

 そして、ロボットの皮膚が溶けたら、地中にいるモグラ型ドローンで回収して、しまえば証拠は残らない…が、

 ならモグラ型ドローンと人工皮膚とロボットを製造している会社からCADデータを入手している会社を特定すれば良い。

 さらにこの溶解性の人工皮膚を現在製造している会社はX工業株式会社…

 そして、X工業株式会社のパソコンにアクセスし、顧客データを調べた。

 鈴木タクヤ・・・、鹿児島に住む配信者の一人だ。

 そして、推測にはなるが、鈴木タクヤの動機は…金銭に対する欲求から来てるだろう」


「この事件は裏がありそうだな」

「ああ」

「犯人特定ありがとう、名探偵ジュン」

「今回の事件は様々な企業との連携があったから解決できたようなものだ。

 報奨金は弾んでもらう」


 そして、鈴木タクヤの家を家宅捜査したが、鈴木タクヤは、首を吊った死体としてアパートで発見された。

 鈴木タクヤの遺品から、この事件は、イスラエルのマフィアにより計画されていたらしく、鈴木タクヤは、妹の命と引き換えに、彼の持つ技術や人脈を行使して、犯行が行われた。

 そして、都内にいる配信者の男性に呼び子をしてもらい、配信者により少女たちが呼び出し、配信者の男性は即殺、少女はレイプや監禁した後に殺したらしい。


 ミッションを次々と達成した鈴木タクヤだったが、彼の妹もまた、被害者の対象となった。話と違う!と憤りを感じたが、個人が勝てる相手ではないと悟った彼は室内で首を吊って自殺した。

 こうして、終わった事件の一連。


 ジュンは一仕事終えると、ショートピースをふかしながらドクターペッパーを飲んだ。

「さて、時間もできたし、旅行にでも行くか…」とジュンはボストンバッグに荷物を詰めた。


 完

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