修学旅行
星々が雲に隠れ、冷たい雨が降る夜......
視界が朦朧としていてハッキリは見えない。
意識は身を誰かに委ねているように、
身を自分で動かせない、何故だろう。
雨夜で輝く明るい都会を俺はとぼとぼと歩く.....
赤から青に切り替わった信号
俺は自分の意思と反対に交差点を渡る。
横から雨を散らしながら速度を加速させる自動車が、
───俺と共に交差点を通過した。───
─── 2045年 9月 25日 月曜日 ───
快晴の朝、小鳥達が鳴きタイマーの代わりに僕を夢から現実に呼び起こす。
「んん〜!!」
僕はベッドから上半身を起こして背伸びをする。
今は何時だろうか、外の様子を見るに七時半と予測出来る。
さぁ、答え合わせをしようか...。
僕はベッドの脇に置いてあるスマホのスイッチを入れてロック画面の時計を見る。
──8:54──
見間違いじゃないだろうか、僕はタイマーを三回鳴るように掛けてあった。
全てしっかり作動している通知がスマホのロック画面にある、つまりだ...
「やっばい! 二度寝なんて次元じゃねぇ!!!」
僕はベッドから飛び出して寝室の扉を開けると洗面台で顔を洗ってから歯ブラシを口の中に突っ込んでタンスから制服を取り出す。空いた片手で制服を着終えると洗面台でうがいをする。
「ちょ! 朝食はえぇっと...食パン食っときゃいいや!」
僕は食パンを口に加えてカバンを取ると玄関を出て鍵をかける。
スマホを取り出して時間を確認する。
──9:00──
授業が始まるのが九時十分、つまり後十分で学校にでは無く、教室に行かなければならない。
普通ならもう諦めた方が早いんだろう、だが僕は違う。
僕の住む場所は我が校が作った寮だ。
つまり、歩いて三分で着く程近い距離に学校がある。
走れば教師が職員室から教室に行くまでより早く着けるかもしれない。
「うおぉぉぉ!!!」
食パンを上下に揺らしながら両手両足を激しく動かして寮を駆け抜けて学校まで走る。
「んぐんぐ...くそっ、はひっへるからはへふれぇ!!」
僕はちょびちょびと食パンを食べながら校舎の中に入る。
あと少しだッ! あと少しで僕の勝ちなんだぁ!!
階段を駆け登り、教師が来る前の賑やかな教室の騒がしさを聴いて勝利を確信する。
自分の教室の前扉を勢いよく開けて叫ぶ。
「僕の勝ちだァァ!!」
僕は勝利を確信して扉を開けるとクラスメイトと談笑している教師が教壇の上に居ることを僕の目が教えてくれた。
───否、僕の負けだったのだ。───
扉の前でガックリと膝から落ちると片手で食パンを押し込んで飲み込む。
炭水化物、ブドウ糖を取った俺は今誰よりも頭の回転が早いだろう。
落ち着け、思考を加速させるんだ。
勝利への抜け道を考えろ!!
「はい、透空...遅刻っと、お昼は職員室行きだぞ」
悪魔の言葉が僕の心臓を、心を貫く。
──完全なる敗北、勝利への道は消えた───
僕の心は悲しいと言うのに教室はクラスの皆の笑いで埋まる...
こいつら、人間じゃねぇ!!!
なんだって人の不幸を飯に笑いやがって...くそっ。
僕に力があれば、力があれば...ちきしょぉぉぉ!!!
「はい、どうせ心の中で懺悔してるんだろうけど授業始まるからもう座りなさい」
担任の教師がそう言うと僕はカバンを引き摺りながら席に座る。
「はい、透空の遅刻で笑うのはもう終わりだ、HRを始める」
「休日の疲れが完全に抜けきっていない奴も居るようだが今日から平日だ、それにお前らは水曜日から修学旅行に行くんだから、今週だけはしっかりしてくれ」
「「はい!!」」
僕を除いてほとんどのクラスメイトが返事をする。
修学旅行ねぇ...あぁ、陽キャが楽しむだけのイベントだろ? 楽しいかぁ? いいや、陰キャの僕には辛いし暇だしなーんも楽しくない。
「それにお前ら、異能なんだから、常日頃から細心の注意を払って行動してくれ」
異能、それは人智を超えた存在、人の限界を超えた身体能力、性質、異能、魔法を生まれ持った人の呼称。
「我がイクシオ高等学校の生徒の名に相応しい行動してくれ、良いな?」
「「はい!!」」
またもや、俺を除いて大半のクラスメイトが返事をする
国際保全監視特別校、我が校の正式名称。
世界が作った保全という名目で異能を持つ僕らを監視している機関、僕らの生まれ持ったこの力は個々で異なるが人によっては核兵器にも匹敵するほどの力を持ち、世界からしたらそんな者達が街中を歩くのだから恐怖でしかない、故に作られたのが我が校。
僕らは幼稚園を卒園してからは親元を離れて高校を卒業するまではずっとこの箱の中で暮らす。
僕らが卒園してから国に引き渡すのは法で定められており、その後の両親達は死ぬまで国から多額の支援金を送り込まれる。
その額は億にも達するとかなんとか...
というか普通は支援金って僕らの方に送り込まれるんじゃないの?。
なんてちっぽけな僕が言ったところでお偉いさんが怒鳴って終わりだ、だから僕らは世の理不尽さを幼い頃に味わい、慣れさせられている。
政府に常に監視され、身もプライバシーも何もかもを奪われるかわりに安全と安心を保証してもらえる。
何が安全と安心だ、僕らはこと自衛においてはそこら辺の格闘家なんかより数倍得意だぞ。
まぁそれも全て異能のおかげだけどね。
「さぁ、まぁこんな堅苦しい説教しても時間が進むだけだ、今日の一時限目は修学旅行の計画を決める時間だ」
クラスが一気に賑やかになる、だが僕は気が乗らない。
「はい、全員各自の班の形に机を動かして移動!」
全員が机をギギギと動かして四角形の形にする。
えっと、カバンにしおりが入れてあったよな...。
《人生最後の修学旅行! ~ハワイ旅行を楽しもう!~》
いつ見ても小学生が考えたような名前だな。
───修学旅行出発予定日 9月27日 水曜日───
出発場所─イクシオ高等学校
中間地点─船乗り場
到着場所─ハワイ諸島
────────────────────────
船とか最悪だろ、酔うやつ出てくるだろうな。
まぁ、沈没しても僕達ならなんの問題も無いがそんなことより僕が最も心配しているのが暴食島だ。
世界で最も危険で謎に包まれている島と言われていて唯一、知られているのがそこに住む民族が不死の生命体であり尚且つ、人も喰う野蛮で最悪な民族。
生きる為なら仕方ないだろう、だが僕らからしたら有り得ないにも程があって怖いなんてレベルじゃない。
しかもその島に聳え立つ鉄塔、雲を貫くほど高くその鉄塔から連なる島に覆われた見えない障壁があらゆる干渉をしようした存在を消滅させるが故にこう名付けられた、神の鉄塔。
僕が最も恐れているのがハワイ諸島の真横にあり、見た目も瓜二つと言う点だ、それに稀に障壁の中に入れたという人も居ると聞く、つまり間違えてあの島に入った...なんてことになったら、人生の終わりだろう。
「まぁ、可能性としては二十パーセントにも満たないけどな」
「何の話?」
僕の視界の目の前から前屈みにおっぱい...ではなく。
「あぁ、桜木さん...いや何、ただの独り言だよ」
「そ、そう?」
首を傾げる彼女こと、桜木涼音
容姿端麗、スタイル抜群、性格まで神がかってるときた
学校の姫であり、僕の初恋でもある。
「それより、ハワイに行くんだよ! 水着とか何買おうか迷うよねぇ~」
おいおいおいおい、それを純粋無垢な思春期男子の僕の前で話すか!?。
「うーん やっぱりぃ〜、白が普通でいいと思うよ〜」
「それ〜、僕は黒だけどね〜笑笑」
僕はおふざけ半分、いやおふざけ百パーセントで水着の話に乗った。
「え? えっとぉ...透空君は......黒、なんだね!うん、いいと思うよ!!」
「透空...めちゃ引くわー、まぁでもうちも白って言いながら黒にするかも〜笑笑」
おいおい、僕はおふざけで言ったのにそんな貴重な情報を貰っていいんですか!
良いんです!!。
くそ、思ったより修学旅行ってやろうは楽しいじゃねぇか、乗ってやるよ。この波に!!海だけにな!!ハハッ!!。
「おいおぃ〜、蒼夜ぁなぁに学校の姫様と話してんだよーこのっ!」
後ろからぼさっとした金髪の細ヤンキーが僕の頭をグリグリと殴る。
「いってぇ!!」
僕はブンブンと頭を振って抗う。
「お前、まじでいつもそれ止めてくれよ」
僕は自分の頭を撫でながら、俊介を睨む。
こいつは逸雅俊介、僕の親友であり見た目がヤンキーみたいだが根は良い奴だ。
因みに蒼夜ってのは僕の名前で、透空蒼夜って名前だ。
「んで? 計画はどこまで進んだ?」
男子の絡みみたいに立ったまま僕の両肩に手を添えてくる。
「全然進んでねぇよ」
僕はその手を握って揺らす。
「なら、とっとと決めないと明後日だぜ?」
僕は頷きながら溜息を吐く。
「分かってんだよ、それぐらい。 」
まぁ、計画も地道に進めるのが良いだろう。
取り敢えず、何処に行こうか...。
───国際異能研究所───
「本当に良いのですか」
「構わん、こいつらは確かに貴重な存在だが変わりは居る上にまだ失敗が確定した訳じゃない」
「そうですが、我々は彼らに安全と安心の提供と引き換えにあの箱で住まわせています、もし今回の計画が世に知れたら一国の終わりです」
「何、世界は我々の味方をするだろう」
「なぜなら、誰もがあの島は嫌う、そんな島が消え領土は拡大する...得しか無いだろう?」
「ですが......」
「うるさい! 黙れ!! 大体から心配など無用だ、彼らの中に核兵器と比較に渡り合う者が居ても決してそれを超える者達は今までに居なかった、そして今回送り込む奴らもそのような規模ではない!何を不安に思っている?」
「いえ...」
言うべきなのだろうか......私は見てしまった。
偶然見てしまったのだ、私は......。
───数時間前───
──資料室──
「全く、人使いが荒いのよ、あのハゲは!!」
私はドアを開けて重い本と紙の束を机の上にドサッと置く。
「ふぅ...後はこれをひとつひとつ直していくだけ......」
「えっと、まずはこれを直して...ん?」
私は棚に資料を直そうとすると手が止まる。
──異能持ち全生徒者記録表──
私はふと、資料を手に取る。
─桜木 涼音─
桜木涼音は全体的に落ち着いて人に優しい性格をしています、害はないでしょう。
体重:45kg
身長:165cm
異能:あらゆる存在の原因と過程の幻を見る力
─逸雅 俊介─
少し気の荒いところもありますが彼は我々から害をなさない限り、我々に手を出してくることはないでしょう。
体重:57kg
身長:178cm
異能:エネルギーを物体に変換し扱う力
─透空 蒼夜─
彼は大人しく誰にでも平等に接しますが我々が理不尽な態度や扱いを続けると反抗する恐れがあります。
体重:53kg
身長:175cm
異能:地球の重力の二倍の吸引力を持つ、 空間型の球体を出現させる。
彼は~~~~~
───現在───
まぁ良いでしょ、彼程度の異能じゃどうにも出来ないし資料の間違いだったってこともあるわ。
という事で、ついに書き始めました!!
今作は私めのサイトで書きません、こちらのなろうのみで書いていこうと思います。
もう早速、ひとつ募集した異能を使わせてもらいました
正確にはそれを紹介した形ですが
大嘘憑き@球磨川楔さん考案&提供の異能
地球の重力の二倍の吸引力を持つ空間型の球体を出現させる異能。
考えて下さり、本当にありがとうございます。
この能力は今後、ありがたく使わせてもらいます!
他の皆様が考案して提供してくださった異能もいくつか既にもう使うことが決定しておりますので今後登場次第、ご紹介させて頂いてお礼も言わせてもらいます。
では、またいつか。花散る日まで......