第3話 妖精の城
☆前回までのあらすじ☆
海賊ごっこをしたよ
「なにこれ......」
ようやく僕たちはお城の前まで辿りついた。長く険しい航旅ももう終わりみたいだ。
透き通るように透明な湖は太陽の光を反射して............ってあれ?
「ねぇ、フリージア。そう言えばここって太陽無くない?」
「あなたを照らす眩しい光!キュアフリージア!!私にかかれば影すら作らないわ!」
フリージアは何故か例の女の子に大人気なアレになり切っている。......そっとしておこう。
「成程、太陽は無くても光の精霊のお陰て明るいってことか......」
「......。皆で力を合わせて今日も平和を守るのよ!」
「みんなの頑張りで成り立っていると」
「......。でたな、闇の帝王!今日こそ決着をつけるわよ!!」
「光の精霊がいるのに、夜はあるんだ」
「......。今こそとどめよ!ダメ、こんな時に......力が抜けて、意識が......保て......ない」
「つまり光の精霊たちが眠っている時が夜になるってことか」
「いい加減ツッコんでよ!!」
「あはは、どこまでやってくれるのか気になって」
「もう!そんなことより今はこのお城を見て!!」
湖の中心に位置し、湖に反射した光を浴びて揺らめくように輝く白亜の城。
そしてお城へと架けられた石橋。
テレビで見たどんな絶景よりも綺麗なその光景に自然と感情が高ぶる。
「凄い!凄いよフリージア!こんなの見たことないよ!」
「そうでしょそうでしょすごいでしょ!このお城はここに住んでるみんなで作ったんだからね、力作よ!魂こもってるのよ!土の妖精と火の妖精がお城を立てて水の妖精が湖を、そして私たち光の妖精が仕上げに光を当てているのよ!」
フリージアがこれでもかという位に胸を張る。
誇らしさの権化と化した妖精がそこにはいた。
「ねえフリージア、お城の中はどうなってるの?」
「やっぱり気になる?気になっちゃうよねぇ~。まぁナビゲーターピクシーの私にかかればお城の中の案内なんて余裕よ!大船に乗ったつもりでついてきなさい!」
「ナビゲーターピクシーって何?っていうか何時からそれになったの?」
「直進です」
ナビゲーターピクシーのフリージアは僕のことなんかお構いなしに進んでいく。
「まって~フリージア~」
僕は急いでその背中を追いかけてお城に入った。
お城の中は純白の壁に真っ赤な絨毯が一面に敷いてあり、その鮮やかなコントラストに目を奪われる。
所々に花瓶も置いてあり妖精達のセンスの良さが伺える。
「すごーーーい!」
思わず叫んだ僕の声が城内にこだまする。
「ふふん。ここの花の手入れはね、全部女王様がしているのよ!女王様はお花のスペシャリストなんだから!」
自分のことのように自慢するフリージア。
「ねぇ女王様はどこにいるの?」
「女王様に会いたいのね、こっちよ!」
導かれるがままに進んでいく。
「ここが女王様がいつもいる部屋よ!おーい!女王様!遊びに来たよー!とびらあーけーてー!」
何故か歌うように言うフリージア。
「とびだせーるーのー!」
女の子がノリノリで歌いながら扉を開けて出てきた。
透明感のある水色の髪。日光を反射するシルクのような輝きを秘めた肌。
背中に清澄の羽を生やした神秘的な美少女。
彼女を見た瞬間、僕の頬が上気し、鼓動がどんどん早くなっていく。
「やっほージア、あなたが来るのを待ってたの。今日は何して遊ぶ?」
「やっほー、女王様元気してた?今日はね今日はね、なんとビックゲストを連れてきたの!紹介するわね......ジャジャーン!人間の優よ!」
そう言って僕を引き立てるように手をひらひらと振るフリージア。
女王様と目が合った。
「はじめまして女王様、僕はーーーーー」
「キャー!なんで人間がここにいるの?!ジア!この前一人で外に出るなって言ったばっかなのにまた出たのね!あれほど人間は醜くて汚くて利己的で公害にしかならないと教えたでしょ?!それなのにあなたはこんなところまで連れてきて、もしそいつがこの国のことを他の人間に話したらどうなるか分かってないの?!きっと欲をかいた人間どもが私たちを捕まえに来るよ!そこをどいてジア!!逃げられる前に私がその人間を殺してやるから!!」
手に氷の短剣を作り出し僕を睨む女王様。
「まって女王様!優はそんなことしないわよ!確かに勝手に連れてきたのは悪かったけど......でも優は優しいんだから!」
僕の前に飛び出て必死にかばってくれるフリージア。
「そうだよ!僕はそんなことしないよ、それに人間はそんなひどい奴ばっかりじゃないよ!」
怖い......でもここで引いたらダメだ。
ここで引いたらもうここには戻ってこれなくなる。
人は鏡なんだ、こちらから手を差し出せばきっと分かり合える。
「だから、僕と友達になってよ!」
勇気を振り絞って手を差し出す。
「遺言はそれだけでいいのね......」
「え......?」
「まずいわ優!!女王様ブチギレよ!!逃げて!!」
「転生させてあげるから大人しくしてなさい......来世は無いけど」
「それただ殺すだけじゃん!!!う、うわーーー!!」
僕は走った。
ひたすらに走った。
こんなに走ったことなんて一回もない。
この世界に来れたから全力で走ることが出来ている。
でも、何でかな......ちっとも嬉しくないや。
「優、避けて!」
ビュン。
「ヒィーーー!!殺される!!」
後ろから、氷の短剣を持った美少女が追いかけて来なければ、心からこの感動を味わえたのに。
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