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第1話 妖精の国へようこそ

不定期更新でぼちぼちと書き進めていきます。

あっさり短いショートストーリーの積み重ねになっていく予定です。

 

「君はあと1年しか生きられない」


 今日、通院している病院でそう言われた。

 

 何時も笑顔で優しい先生が今日だけは申し訳なさそうな顔をしていた。


 突如余命を告げられて、両親は僕を抱きしめて大泣きしていたが、僕は不思議と悲しいとは思はなかった。


 だってそうだろう、人はみんな生まれた時に命のカウントダウンが始まってる。


 そしてその数字は生まれながらに決まっているのだろう。


 健康に気を使い、毎日適度な運動をしていればカウントダウンのスピードを多少緩やかにすることは出来るだろう。


 逆にタバコを吸い、酒を飲み、カップラーメンばかりを食べているようじゃスピードは加速する。


 ただ僕はそれが見えるようになっただけ。


 誰も見えないはずの命の期限が見えただけ。


 だからかな、あまり悲しいと感じないのは。


 何時かはこんな日が来るだろうと幼い僕でも分かっていたのかもしれない。


 細い手足に白い肌、もうすぐ中学生になるというのにまだまだ小学生みたいな体つきで、女の子に間違わることだってある。


 僕は昔から体が弱く、入退院を繰り返す日々を送ってきたからか学校にはあまり馴染めていない。


 そのせいか、同級生にはよく女の子みたいだとからかわれる。


 無視されたり、腫れ物を扱うように接されるよりはマシだとは思うけど。


 それでもからかわれるのは嫌で、いつもは一人自分の部屋で本を読んでいるんだけど、今日は外に出て散歩している。


 家にいると泣きじゃくる親が離してくれないからだ。


「んー、いい風」


 春の訪れを感じさせる心地の良い風が涙にぬれた髪を乾かしていく。


「いい感じの天気だし、裏山にでも行ってみようかな」


 僕の家の近くの大きな病院。その裏には小さな山がある。


 何時もはいじめっ子の剛田君たちが遊んでいるから近寄りもしないんだけど、今週は剛田君は旅行に行くって言ってたから居ないはずだ。


 裏山に来た僕はブラブラと色んなものを見てまわる。


 体の弱い僕に山道は少しきついけれど、山の空気は僕の部屋とは全然違う。


 木の匂い、土の匂い、水の匂い、お日様の匂い。


 なんて素敵な場所なんだろう。


 剛田君たちが毎日のようにこの場所へ来る理由がなんとなくわかったような気がした。


 その時ふと視界の端に黄色く光る何かが写った。


「なんだろう、あれ」


 遠くてよく分からないので光のほうへ歩いていく。


 近づくにつれてだんだん鮮明に見えてきた。


 黄色い服に黄色い帽子、背中に透明の羽を生やした小さな小さな女の子が大きな葉っぱをベッドにして可愛らしい寝息を立てている。


 木漏れ日を浴びて黄色く輝く妖精がそこにいた。


 物語でしか見たことがない妖精に驚きつつも僕は好奇心を抑えられなかった。


「妖精さん......妖精さん!」


 僕は彼女に声をかける。


「ん、んー......誰よ、せっかくいい夢見れそうだったのに......」


「妖精さんが喋った!」


「喋るわよ妖精なんだから、何当たり前のこと言ってんの?ってえっ?!人間?!」


 妖精さんが僕の目の前まで勢いよく飛んで来て言った。


「こんにちは!僕妖精さんなんて初めて見たよ。ねぇ、その綺麗な羽ちょっとだけ触っていい?」


「私としたことが人間に見つかっちゃうなんて......え?今私の羽が綺麗っていった?」


「うん!」


「あんた私の羽の良さがわかるなんて人間にしてはいいセンスね!」


 そう言って僕の掌の上にちょこんと着地した。かわいい。


 妖精さんの羽を優しく触りながら聞く。


「ねぇ、妖精さんはどうしてこんな所でお昼寝してたの?」


「今日はめちゃくちゃいい天気でしょ?だから、本当は1人で出たらダメなんだけど妖精の国をこっそり抜け出して遊びに来たの!そんでリス達と遊んでたんだけど疲れたから葉っぱの上で寝てたの!そしたらあんたに起こされたのよ!」


 身振り手振りしながら忙しなく喋る妖精さん。


「じゃ僕が無理やり起こしちゃったんだ、ごめんね。妖精さん」


「あんた素直ね!素直なのはいいことよ!今回は特別に許してあげる!私はフリージア、光の妖精よ!」


 ニコニコと笑いながら許してくれた。


 そして何故か僕をジーッと見つめてくる。


 あ、そうか僕もまだ名乗ってなかった。


「僕は優。よろしくね、フリージア」


 何故かまだジーッと見つめてくるフリージア。あれ?


「優、あんたとてもいい目ね。決めた!妖精の村を案内してあげる!着いてきて!」


「え、ちょっと、わわわ!」


 僕の指を脇に抱えて引っ張るフリージア。


「勝手に連れて行ったらダメじゃない?」


「大丈夫よ、優はいい子だもん」


 そうなんだ。フリージアが言うんだから大丈夫かな。


 しばらく歩くと。


「ここよ、ここに入るの!」


 木のトンネルを潜り抜けた先、そこには子供がギリギリ通れるサイズの洞窟の入り口があった。


「え、ここに?這いずったら入れそうだけど、服を汚したら母さんに怒られちゃうよ」


「そんな小さなこと言ってないで、ほらこっち!」


「あ、もう。まってよ~」


 フリージアを追いかけ洞窟に入る。


 洞窟の中なのに何故かトンネルのように光が見える。


「はやくはやく!」


 フリージアが光の中へと消えていく。


 不安がないわけじゃない、突然可愛い妖精に出会って気が動転しているのかもしれない、今ならまだ引き返せる。


 ......でも、この胸の高鳴りはなんなんだろう。


 この光の先には僕が見たことも聞いたこともない世界が広がっている、そんな気がする。


 光を抜けると小高い丘の上に出た。


 そこから見えたのは優しい光あふれる幻想的な国だった、自然と調和しながらも活気のある城下町。


 遠くに見える透き通るような湖、その上に建っている輝くような白亜の城、


 そして手招きしながら満面の笑みを浮かべるフリージア。


「ようこそ、妖精たちの暮らす楽園へ!」



 半年前に書いた、小説を書き始めた頃のお話です。

 当時から、オチは決まっていますのでぼちぼち書いて行こうと思います。


☆最後までお読み頂きありがとうございます☆

 評価、ブックマーク、レビュー、感想等頂ければ、ラピュタを見つけたパズーのように喜びます。

 他にも投稿してるので是非見ていって下さい!

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