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戦う意思は誰が為か  作者: じりゅー
三章 三度目の朝、二度目の夜
20/25

十九話 将来への希望

 戸を開けた途端に一様にこちらを注目する生徒、もう何度も見た光景だ。


「リータ・アンサー、デス! 気軽にリータをお呼びくだサイ! よろしくお願いしマス!」


 深夜テンションに身をゆだね、一周目に、二週目に負けず劣らずの挨拶をする。


「リータ君はアメリカから来たばかりだそうだから色々と勝手が違って困ることもあるだろう。先生がずっと見ていられる訳でもないからクラスの皆で助けてあげて欲しい。アンサー君も気兼ねなく頼ってくれ。」


「ハイ!」


「良い返事だな。それではホームルームを終えるが、次の授業もあるからな。リータ君への質問は程々にな。」


 そう言って足早に去って行った先生と入れ替わるように群がってくるクラスメイト達。

 彼らを手で制止すると、ワタシは言った。


「好きな食べ物はハンバーガー、好きな色はスカイブルーで、彼氏はいまセン! 恋人は募集中じゃないデス!

 週末は父とアニメを観て過ごしマス! その後の感想会も楽しいデス! 今は一人でホームステイさせて頂いてマス! 他の質問は端折りマス! ではワタシは用事があるのでこれで!」


 今のは一周目、二週目で聞いた質問の答えだ。

 全てではないけど全部聞き取れたわけじゃないし、分からない言葉もあったのでそちらはスルーすることにした。

 呆気にとられるクラスメイトを無視して、カクヤの元へ向かう。


「カクヤ、今日の放課後とお昼休みと休憩時間と、空いてマスか?」


「ぅえ!? お、俺のこと知ってるのか…?」


「Ah…ハイ! 職員室でクラスの名簿見まシタから。」


「そうなのか…

 …えっと? 放課後と? 昼休みと? 休憩時間? 全部?」


「ハイ!」


 ………

 無理あるよね!?

 深夜テンションに身をゆだねてはいたけど、ここまで無茶苦茶な提案を押し付けるとは自分でも思ってなかった。

 もちろんアミの告げ口を防ぐために休憩時間ごとに話しかけに行くつもりだったけど、流石にこれは…


「……分かった。」


 分かった? 分かった…All right…

 ええええええええええええ!?

 い、良いんだ…何だか知らないけど良いんだ…

 け、結果オーライ、かな?


「い、良いんデスか?」


「良いって、席隣だし。訊きやすいしなにかと便利だろ?」


「は、ハイ! お願いします!」


 席が隣だからか…運が良かった。

 というか、最初から席が隣だから教えてほしいと言っていれば良かったんだ。それなら無駄な心配もしなくて済んだのに。


「最初の授業国語だけど、教科書はどれか分かるか?」


「ハイ、少しなら読めマスから。」


 アニメに出た分だけなら。

 各教科の漢字であれば問題無く分かる。

 …文字と言うよりも記号みたいな感じで覚えてしまってるけど。


「すげーな、もう漢字読めるのか…」


「ちょっとだけデス。

 ケド、勉強していつか全部の漢字を読めるようにしたいデス。」


 謙遜ではなく、本当にちょっとしか読めない。

 家に小学校の漢字ドリルがあるくらいだ。平仮名とカタカナは読めるし書けるけど、それもまだ綺麗とは言えないので練習中。ドリルに手を付けるのはそれからだろう。


「日本人だからって皆が皆完璧に漢字読める訳じゃないから、あんまり気負い過ぎるなよ。

 誰だって読み方を勘違いしてる熟語はあるし、読むときは分かるのに書こうとすると書けないみたいなことも多い。常用漢字じゃない…あんまり使われないみたいな漢字も大概の人は読めないからな。」


「そうなんデスか?」


 考えてみれば当たり前かもしれないけど、意外に思った。

 アルファベットとは勝手が大きく違うから、理解できなくもないけど。


「ああ。全部読めたら漢検なんて無いさ。」


「カンケン?」


「漢字検定。どれくらいの漢字を読み書きできるかっていう検定試験だ。

 高校で二級行ければ良い方じゃないか? 三級でも躓く奴もいるし。」


「へぇ…! ワタシももっと頑張って勉強したら、受けてみたいデス!」


 純粋にそう思った。

 こういう目標が出来て、それに向かって進むと言うのは楽しいものだ。

 難しいほど燃える…なんて、難しすぎてもやる気出ないだろうけど。


「止めはしないけど、大変だぞ。

 教科書の中に漢検のドリルがあっただろ? それで勉強するといい。」


「ハイ! ありがとうございマス!」


 そうは言っても、まずは小学校のドリル、その次に中学校のドリルだろう。

 目標はとても遠い。だけど、頑張ってみたい。

 やる気に満ちたまま次の授業の準備を進め、その間もカクヤと話をしていた。


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