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戦う意思は誰が為か  作者: じりゅー
二章 交渉の行方
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十四話 信頼

「2つ…!?」


 皆藤は驚いているが、そんな大事なのだろうか。

 どうやら彼女は理解しているようだが、俺にはよく分からない。ソシャゲのガチャでいきなりぶっ壊れを当てた初心者とそれを見て驚いてる玄人って感じだ。まあ俺それ見てる無関係な人だけど。初心者の該当者は不明です。


「そんなに凄い事なのか?」


「凄いってものじゃないよ…だって一つでこの戦いで勝ち残れるかもしれないんだよ? 2人で協力して戦ってあんなに強いんだよ?

 それが、1人で2つって言ったら…」


「だけど、その人は1人なんだろ?

 俺たちみたいに複数人で協力してるわけじゃない。たった1人なら限界はあるし、2人で掛かれば出来ることも増える。だったら今回みたいに2人で戦えば、いけるんじゃないか?」


「それは、そうかもしれないけど…

 いつでも雹華さんが居るとは限らないし、そんな人を一人で相手なんてしたくないな。引き出しが多いのはバカにできないし。出来ることが多いって言うのはそれだけでも武器だよ? それが能力なら尚更。」


 そういうことか。

 能力は人智を超えた、いわばチートな力。俺はそれが人より一つ多く持つ事の重大性を理解できていなかった。

 今回のように2人で戦うことを前提にしてしまっていた。万全の状態で対峙出来れば良いのだが、皆藤の言う通りもし一人の時に出くわしたら危険だ。能力の内容次第ではあるが確実に負けると言っても過言ではないだろう。


「それに…もしかしたら、能力を2つ持ってるのはその人だけじゃないかもしれない。」


 …確かに、そう言う可能性もある。

 情報屋ですら半信半疑の情報ではあるが、もしそれが本当なら能力を複数所持することは可能ということ。

 能力が2つ、あるいはそれ以上持っている人間が1人だけとは限らない。2人以上いる可能性だってある。


『そもそもの話、ワイも人伝に聞いた情報やしなぁ。

 都市伝説に近いもんを感じるし、あんまり真に受けんといてや。』


「絶対に会いたくないな…」


『けどその能力持ち、美人らしいで? 仮にそうならいっぺん見てみとうない?』


「そうなのか? なら一度くらい…ハッ!?」


 湧き上がる殺気を察知し、口を止める。

 発信源は皆藤だ。他に小っちゃくなった能力持ちとかが居ればソイツなのだろうが足元を見ても全くそんな気配は無い。


「…そ、そういやさっき氷倉先輩が言ってたっけな、早く出てけって。

 質問も全部終わったし、真司も待たせっぱなしだし、急いで戻らねーと!」


「そうね。

 それじゃあ情報屋さん、ありがとう。」


『お、おう…達者でな。』


 半分皆藤から逃げるように建物の裏から出て行く。

 音を聞かれなかったのか、幸い誰も見に来ていなかったようで誰ともすれ違うことは無かった。






「じゃあまたな! 確矢!」


「ああ! 今日はありがとな!」


「またね、確矢!」


「おう、またな!」


 俺は皆藤と真司の2人と別れ、一人帰路に就く。

 2人は幼馴染だけあって家がそれなりに近いらしい。だから帰る時は確実に俺が途中で一人になる。結構寂しい。


「あ、確矢! やっぱりちょっと待って! 真司は先に行ってて。」


「…りょーかい。」


 今しがた向けた背に掛けられた声に振り向く。

 去ってゆく真司の背が消えたのを確認すると、こちらに歩み寄っていた皆藤が口を開いた。


「今日はありがと、来てくれて嬉しかった。」


「…いや、お礼を言われるほどじゃない。

 確かに俺は戦いに対して他人事だった。前に皆藤が言ってたみたいに、俺は戦いに参加できないからってさ。

 正直、危険に陥った時どっちを選べばいいかも分からないままだ。もしかしたら皆藤を裏切るかもしれない。

 だからさ、俺をあんまり信じないでくれ。」


「…ううん、私は確矢を信じるよ。」


 返ってきたのは、全く思いもよらぬ方向の否定だった。


「確矢はきっと裏切らないよ、誰も。」


「そんなの、無理だろ…

 どっちかを選べって言われて、片方だけ選んだなら…選ばれなかった方を裏切ったって事だろ?」


「確矢ならきっと両方を選んでくれるよ。」


「そんなの…」


「きっと、しようとする。」


「……!」


 その時、真司が言っていたことを思い出した。


『皆藤はなんだかんだ言ってもお前を信じるよ。信じたいって思ってるはずだ。短い付き合いではあるけど、短いなりにお前を見てきたはずだからな。』


 …本当だ。

 一度は信じられないって言われたし、俺も否定できなかったけど…

 それでも、皆藤は信じてくれた。


「あの時確矢が私の名前を呼んでくれなかったら危なかったし、雹華さんが居なかったら私は確実に消えてた。

 確矢が居なかったらその雹華さんは絶対私と手を組むなんて言わなかっただろうし…だから、確矢が私を助けてくれたんだよ。そんな人の事、信じるに決まってる。」


「皆藤…」


 じんわりと胸が温かくなった。

 良かった…無駄じゃなかったんだ。

 氷倉先輩に共闘を持ち掛けたことも、勇気を出して皆藤にも声を掛けたことも。

 全てがつながり、皆藤を生き残らせることが出来た。

 こんなの嬉しいに決まってる。


「だからさ、そこも含めて色々とありがとう。

 私、絶対生き残るから。確矢と雹華さんに貰った命、絶対に無駄にしないから!」


「ああ!」


 これで一応の仲直り、だな。

 氷倉先輩との共闘関係を結ぶことも出来たし、先延ばしにしようと思っていた物が一気に片付けられた。

 この戦い、絶対に勝ち上がろう。

 皆藤と先輩と、俺の3人で――!

 …俺能力無かったわ。相変わらず戦えねーじゃん。


明日からは不定期になります。

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