2話
仲良くなったおじいさんが亡くなったという事実。
自分の不甲斐なさ。
色々な思いで胸がいっぱいになって私は、思いっきり泣いた。
どのくらいたっただろうか。
涙も引いてきて。嗚咽も収まってきた。
『おねーさん』
ポチの声がした。扉が少し開いた。
「ダメ。待て。」
『え?』
「入ってきたらダメ。だいたい、女子の部屋に入ってくるとかダメでしょ。」
『でも、入ったことあるよ』
「いつの話よ。今のこの状況分かるでしょ。プライバシーは、守ってもらいます。」
『分かったよ。じゃあ、扉の前にいる。』
「いいよ。別にいなくても」
そう言ったのに。ポチは扉の前にいるようだった。
『何かあったんだよね。話してみたら。』
『どんな話でも聞くよ。』
「おじいさん。死んじゃった。」
『……そっか。』
「私。何も出来なかった。“苦しい”って言っているおじいさんに手を握ることと声をかけることしかできなかった。」
「おじいさん。すごいんだよ。何もしてあげられなかった私にさ。“ありがとう”って。“また、きて”って。」
「私だったら、そんな事言えないだろうなって。苦しいのにさ。酸素マスク外してまで話してさ。」
『何もできなかったって言ったけど。そんな事ないんじゃないかな。
苦しくてもさ、伝えてくれたんでしょ。“ありがとう”って。それが証拠じゃない。』
ポチのくせに生意気だ。
でも、そういう捉え方してもいいのかもしれない。
私がやっていた事を肯定してもらったようで。少し、嬉しくなった。
『もしかして。おねーさん。また泣いちゃった?俺、良いこと言った?』
「そういうのいらない。」
気が付いたら、私は笑っていた。
普段は、一人でどうにかしていた。
悲しい事も辛い時も家に帰ってきて。大きな声で泣けばよかった。
泣いた後、笑うなんて一人ではできないし。
思っていた事を人に話してスッキリするというのも悪くないのかもしれないと思ってしまった。