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第3章 私の仕事。 1話

私は、看護師をしている。

私が看護師になろうと思ったのは、よくある話で“人を救いたい”という思いだった。

ありきたりだし。今、思えばなんて恐れ多い思いだったんだろう。


看護師を10年以上していて学んだ事は、救える命もある。

けれど救えない命もあるという現実を知ったからだ。

私たち看護師が患者さんにやれる事は、本当に少ない。

頑張っている患者さんに少しの手助けができるくらいだ。

私は、日々頑張っている患者さんにむしろ力をもらっている。



今日、よく担当していたおじいさんが亡くなった。


おじいさんとは、色々な事を話した。

私が担当の時は、「孫と話しをしているようだ。」とニコニコしていた。

食事の時にポチに話していたくらい。私も毎日が楽しかった。



おじいさんは、呼吸状態がわるくなって。酸素を投与の量も増やしているがゼエゼエしている。

『苦しい』とよく言うようになった。

“苦しい”という訴えがあっても私にできる事は、気休めでしかない痛み止めを使用して、手に触れて、声をかけるくらいだった。

酸素マスクをしていても苦しいはずのおじいさんが私が立ち去る際にマスクを外した。

「マスクしていないと、苦しいのが強くなってしまいますよ」

私は、そう言ってマスクを手にした時。

『あ、り、が、と。………ま、た、き、て』


私は、人前では泣かないようにしている。

仕事中であればなおさらだ。


けれど。気が付いたら涙が出ていた。

おじいさんに、ばれないように。

「はい。分かりました。」

そう言い部屋を出た。


おじいさんの脈は、どんどん下がってきていた。

先生に報告し、家族に連絡をした。

その後、家族に囲まれておじいさんは息を引き取った。


私は、おじいさんに最期の仕事をする。

体を拭いて、浴衣に着替え。顔色を少しよくして。唇の血色もよくなるように化粧して。

そして、おじいさんは黒い車に横になり、普段出る病院の出口とは違う出口から外へ出る。

おじいさんが乗っている黒い車が見えなくなるまで、私は礼をしてお別れをした。


10何年も看護師をしていても人が亡くなることに慣れること事はない。

いつも、悲しいし。いつも悔しい。


私は、ナース服から私服へ着替える。

そして、職員口から出て急いで家へ向かう。

「もう少し。後、少し。」

そう言いながら、家へ入った。


向かうは、自分の部屋。



扉を閉めて。大きな声で泣いた。


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