2話
翌日、おねーさんはまたいつものように6時30分に起床をし家を出た。
『いってらっしゃい』
「……いってきます。//」
僕がなぜ。ペットなのかというと。
一人暮らしをするお金もなければ、家がないのは当たり前。
ただ、それだけではない。
家事が本当に出来ないから。
料理は、もちろん。洗濯なんてやったこともない。
ただ、本当に何もできない。
そんな僕を説明するには“ペット”というのがピッタリだった。
そんな、僕が唯一出来るのはおねーさんに
『いってらっしゃい』と『おかえりなさい』
そう伝える事だ。
こんな仕事でも、意外と大変なのが。
おねーさんの仕事は、夜勤があるという事だ。
“準夜勤” “深夜勤”それぞれ、おねーさんが家をでる時間も違うし。
それを覚えるのも結構大変だった。
毎日、勤務を聞いていたら。
いつの間にか、冷蔵庫に勤務表が貼ってあるようになった。
おねーさんは、会話はさっぱりしている。
何も言わない事も多いけど。
でも、聞けば嫌な顔もせずに教えてくれるし。
こうやって、僕が困らないようにしてくれる事も多い。
こういうあまのじゃくな部分がカワイイのだ。
そして、何よりカワイイのが。
『いってらっしゃい』と『おかえりなさい』
と僕が言っただけで、おねーさんは顔を少し赤くして笑う。
凛としてどこか、戦いに行くようなそんな表情から柔らかくなるその顔を見るのが、僕のちょっとした楽しみだった。
最近のおねーさんは、この前話していたおじいさんの話題をよくする。
本当に仲良くなったのだろう。
こんな話をしたとか。笑ってたとか。
それを聞きながら食事をしている。
しかし、そんなにこやかな食事も2日後には前のおねーさんに戻っていた。
眉間にしわを寄せたり。ため息をついている。そんな日々だ。
『おねーさん、今日は何時に帰ってくるかな』
朝から出ていったおねーさんを夕方から窓の外を見て眺めるのが日課。
早く帰って来ることなんてそうそうないのだが。
どうしても、17時を過ぎると外を見てしまう。
『あっ。おねーさん。』
多分、おねーさんが見えた。時計を確認すると17時45分。
こんな、早くに帰ってくる事は、初めてではないだろうか。
玄関まで行き、おねーさんが扉を開けるのを待つ。
ガチャ。鍵を開ける音。
『おねーさん。おかえりなさい。』
そう言って顔をみると。
目は、赤くなっており。体は、震えていた。
何も言わず。おねーさんは、部屋に行き。扉を閉めた。
そして、聞こえてきた。嗚咽。
こんな事は、初めてだった。