表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

3話

更衣室でナース服に着替えをし、髪をまとめて慌てて病棟へ向かう。

看護師の仕事は8時30分。

今の時間は7時30分。なぜ1時間早いのかというと。患者さんの状態を把握するには、情報収集というものが必要になってくるのだ。

患者さんがどの手術や治療をしているのか。昨日の体温や血圧、今朝の症状の出現の有無。採血のデーターの推移などすべてを把握するには時間がかかる。そして、自分の担当をみておけばいいというわけでもない。

なぜならば、若い子達の患者のフォローに回ることがあるからだ。

何かを聞かれたとき、起きたときにすぐに対応するためにば、知っておく必要がある。

そう考えると、自分がすべての情報を収集できるようになるにはこのくらいの時間を有するのだ。



始業時間になり、

1.内服の確認

2.体温、血圧などの測定

3.点滴の準備や点滴開始。

温タオルでの体拭き、髪を洗う、シャワーの介助。医師の診察介助。手術の準備。検査の準備など。やることが多い。

看護師室では医師の声、先輩ナースの声、ナースコール、モニター音など沢山の音が響き渡る。

どの音も、同時に耳に入るのだから不思議なものだ。




あっという間にお昼の時間。

お昼休憩といっても、受け持ち患者さんの手術の時間や検査の時間がくればご飯も10分で食べて出ていく。

夕方になり、定時を過ぎたとしても。

手術や検査が終わらなければ残業だってある。

気がつくと今日も19時。

これが私の普通の日々。

今日も、長い1日が終わった。

職員通行口より外に出る。


「もう本当に真っ暗だな。」

『そうだね。お疲れ様。おねーさん。』



まさかの彼がいた。ニコニコしながら私に手を振っている。

本当に犬のように見えてしまった。

「嘘でしょ?」

『いやいや、本当。』

「何時だと思ってるの?」

『もう、7時でしょ。おねーさんの仕事って長いね。』

そういう話をしているわけではない。

この子は、ずっとここにいたのだろうか?



………。

よく言うもんな。捨てられてる動物に手を差しのべてしまうと懐かれてしまうって話。

こうなると、少し情がわいてしまうのかもしれない。

私は、大きいため息をついた。

「ご飯は?」

『食べてない。ここには、くれる子ども達いなかった』

「そりゃそうでしょ。病院でご飯をもらわないでよ。もー。」

そう言いながら。結局、連れて帰ってきてしまった。

看護師という職業のせいなのか。

この犬のような彼に情がわいてしまったのか。

結局、ほっとけなくなっていた。



「こんなはずじゃなかったのに。」


目の前には、ニコニコしている彼。

『やっぱり、おねーさん優しかった。』

そう言いながら昨日と同じ場所に座り、お茶を飲んでいる。

「仕方ないでしょ。ごはんも食べずに待っているとか。連れてくるしかないって分かっててやっているとしか思えない。」

そう文句を言っているのに。彼は、笑っているだけ。

ぐちぐち言うのが馬鹿馬鹿しくなってきた。

「あははは」

『えへへへ』

「笑いごとじゃないし。」

そう文句を言いながら大きな声で笑っている自分がいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 看護師のお仕事大変だと文章読んでも伝わってきました ペットさんを可愛がってるのを思い浮かべるとほほえましいです [一言] 続きが気になりました!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ